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5.欲しいものは手に入れた①〜ロザリー視点〜
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……やっぱりここにいたのね。
青銀の髪が強風に煽られ乱れているのに、構うことなくその男は突っ立っている。
そんな様でも男の美しさは損なわれていない。いや、色気が増している。
見た目だけは、私――ロザリーの隣に相応しい男。
王宮内で一番高い塔は魔術師長が管理していて、魔術師ならば自由に出入りすることが出来る。
普段、この細長い塔に足を踏み入れる者はいない。ただ高いだけでなにがあるでもなく、登っても疲れるだけだからだ。
実際ここまで上がってきた私は、口を開く前に息を整える必要があった。
「ここで何をしているの?」
私に背を向けたままの男に尋ねる。
ここで何をしているか想像はついているし、この男が返事をしないだろうとも思っていた。
「…………」
案の定、返事を返さない。
チラッと視線を寄越しただけで、表情一つ変えずになにかを視ている。
無視しているつもりはないのだろう、この男はそういう男なのだ。
正午の鐘が鳴っている、今まさに南門から馬車が出発しようとしているはず。
ここから南門を目視するのは無理だが、この男は紙魔鳥を通して視ているのだ。
普通の紙魔鳥にそんな能力はない、あれは喋る手紙のようなもの。
でも彼が作ったそれは、その目に映したものを作り主に認識させるらしい。そんな馬鹿げた事が出来るのは、この目の前にいる最上位魔術師だけだ。
この変態野郎、覗きなんてやめなさいっ!
心のなかで盛大に悪態をつく。
私はこの男が苦手だ。
いくら最上位魔術師で美形だと言っても、何を考えているか分からない無表情。そのうえ、言葉でそれを補うこともない。
はっ? 察してくれとでも? 甘えるんじゃないわよ!
面倒くさい人間の相手をするなんて時間の無駄。私は仕事以外で関わらないようにしていた、あの日まで……。
『ロザリー、紹介するね。じゃっじゃーん、私の恋人です』
『……アリスミ、いつから付き合っているの?』
私は目を見開きながら尋ねた、冗談であってくれと願いながら。
『ん? 正確には昨日かな。少しづつ仲良くなって気づいたら、こうなっていて。でも、きちんと言葉にしていなかったから、昨日私のほうから付き合いましょうって言ったの。ねっ、ザイン』
嬉しそうに話す親友の隣で、その男は無表情を崩すことなく頷いていた。
八等級アリスミ・カロックの隣に最上位ザイン・リシーヴァがいる。
……あり得ないわ。
この日を境に、私はこの男と関わるようになった。
驚きは徐々に苛立ちへと変化していく。
二人の関係を『相応しくない』と言う者もいた。
私は心の中でその意見に激しく同意していた――もちろん、そんな素振りを見せることはなかったけど。
ザイン・リシーヴとアリスミ――最初っから釣り合いなんて取れていない。
彼の相手がアリスミでなかったら、私は彼とこんな関係にならなかった。私はこの男をこれっぽっちも愛していないのだから。
青銀の髪が強風に煽られ乱れているのに、構うことなくその男は突っ立っている。
そんな様でも男の美しさは損なわれていない。いや、色気が増している。
見た目だけは、私――ロザリーの隣に相応しい男。
王宮内で一番高い塔は魔術師長が管理していて、魔術師ならば自由に出入りすることが出来る。
普段、この細長い塔に足を踏み入れる者はいない。ただ高いだけでなにがあるでもなく、登っても疲れるだけだからだ。
実際ここまで上がってきた私は、口を開く前に息を整える必要があった。
「ここで何をしているの?」
私に背を向けたままの男に尋ねる。
ここで何をしているか想像はついているし、この男が返事をしないだろうとも思っていた。
「…………」
案の定、返事を返さない。
チラッと視線を寄越しただけで、表情一つ変えずになにかを視ている。
無視しているつもりはないのだろう、この男はそういう男なのだ。
正午の鐘が鳴っている、今まさに南門から馬車が出発しようとしているはず。
ここから南門を目視するのは無理だが、この男は紙魔鳥を通して視ているのだ。
普通の紙魔鳥にそんな能力はない、あれは喋る手紙のようなもの。
でも彼が作ったそれは、その目に映したものを作り主に認識させるらしい。そんな馬鹿げた事が出来るのは、この目の前にいる最上位魔術師だけだ。
この変態野郎、覗きなんてやめなさいっ!
心のなかで盛大に悪態をつく。
私はこの男が苦手だ。
いくら最上位魔術師で美形だと言っても、何を考えているか分からない無表情。そのうえ、言葉でそれを補うこともない。
はっ? 察してくれとでも? 甘えるんじゃないわよ!
面倒くさい人間の相手をするなんて時間の無駄。私は仕事以外で関わらないようにしていた、あの日まで……。
『ロザリー、紹介するね。じゃっじゃーん、私の恋人です』
『……アリスミ、いつから付き合っているの?』
私は目を見開きながら尋ねた、冗談であってくれと願いながら。
『ん? 正確には昨日かな。少しづつ仲良くなって気づいたら、こうなっていて。でも、きちんと言葉にしていなかったから、昨日私のほうから付き合いましょうって言ったの。ねっ、ザイン』
嬉しそうに話す親友の隣で、その男は無表情を崩すことなく頷いていた。
八等級アリスミ・カロックの隣に最上位ザイン・リシーヴァがいる。
……あり得ないわ。
この日を境に、私はこの男と関わるようになった。
驚きは徐々に苛立ちへと変化していく。
二人の関係を『相応しくない』と言う者もいた。
私は心の中でその意見に激しく同意していた――もちろん、そんな素振りを見せることはなかったけど。
ザイン・リシーヴとアリスミ――最初っから釣り合いなんて取れていない。
彼の相手がアリスミでなかったら、私は彼とこんな関係にならなかった。私はこの男をこれっぽっちも愛していないのだから。
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