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25.ブタ吉の見た現実②

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どう見てもロナ姫が抱いているのは誰かの赤ちゃんではなく、自分の子だ。
髪の色も瞳の色もそれに輪郭までもロナ姫に瓜二つ。

その驚愕の事実に項垂れるブタ吉…。

 …もう後一年早く来ればっ。
 くっそー。あの運送業者の奴、寄り道ばっかしやがって!
 だからロナに子供までいるじゃんか…。
 これじゃあ、斎藤ブタミはできねぇ。
 どうすればいいんだ、俺は…。
 残る役どころは…くそ、何も浮かばねぇ。
 …もうネタ切れだ……。


よろよろしながらブタ吉は一縷の望みを持ってロナ姫改めロナ妃に近づいていく。
後少しでロナ妃に前足が届くところだったのに、いきなり大柄な男が割り込んで来て邪魔をする。

睨み合う大柄な男とブタ吉。

ブッヒッヒイブーー!
(なんだてめえ退きやがれ!)

「おい、豚。うっせーぞ、何言ってるか分かんねぇがな、なんかてめぇを見る無性に腹が立つ。
ジロジロと変な目で俺の嫁と子供を見るんじゃねぇーぞ。ロナにこれ以上近づくんじゃねぇっ」

大柄な男の正体はロナを追いかけてきた皇帝ハヤンだった。

「あらハヤンそんな言い方は駄目よ。ブタ吉は私が母国でお世話していた豚なの、意地悪はしないで。
弟のように思っているんだから」

「ケッ、弟だ?そんな可愛いもんじゃねぇよコイツは。
見ろ、このいやらしい目つきをエロ豚だぞっ」

ハヤンは本能で分かっていた、『この豚はロナ俺の嫁を狙っている』と。
ブタ吉も気づいた、『こいつが俺の嫁ロナを奪った間男だ』と。

二人の間でバチバチと火花が散り、互いに意味は通じてないけど罵り合う。

ブッヒブッヒーー。
(俺の嫁を返しやがれ!)

「うっせー豚だなっ。何言ってるかわかんねぇけど許せねぇことは確かだ。
丸焼きにしてやっからな」

ブヒッブブブブ。
(てめえこそ、糞塗れにしてやっからな!)

「チッ。なんかますますむかついてきた。
おいゴラァッ!豚、掛かってこいやーー!」

豚と人間の低レベルな争い。

赤ちゃんはそれを見ながら『キャッキャッ、バブゥ』と笑い声を上げ、ロナもそんな我が子に頬ずりしながら、

「困った父上とブタ吉ですね~。それになんか似ているかしら?ふふふ、『類は友を呼ぶ』ですね♪」

と言うと、すかさずアンナが『きっと同族嫌悪ですね』と呟く。

それを聞きハヤンとブタ吉はお互いに指差し、

「ちっげーよっ!コイツと一緒にすんなっ」
「ブヒーーブゥ!ブブブヒブヒヒッ」
(※ハヤンとブタ吉は同じことを言っています)

と仲良くハモって息がぴったりなのを披露してしまう‥‥。


「まあ凄い、会ったばかりなのに仲良しね。
ふふふ、共通点が多いから私の旦那様とブタ吉は気が合うのかしら?」

「おいロナ、俺がこの豚と似てるわけがねぇだろうが!もしあるなら言ってみろ」
「ブッヒッヒッヒブ、ブッヒッヒゥーー」

重なる抗議の声…見事にぴったり。

((チッ、真似すんじゃねぇ))

…心の叫びも一緒だね。

((………))


なにを言っても息が合ってしまうので黙るしかない一人と一頭。

…ぷっ、そんな所も一緒だよ。


そんな彼らにロナ妃は意気揚々と似ている点を教えて始める。

「まず一点目は俺様なところですわね。
そして2点目は話し方です。ワイルドな口調がそっくりですわ。
最後に三点目、ここ重要ですわよ。それは、」

話している途中で何かがロナ妃にぶつかって来た。
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