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7.修羅の後宮?②

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プルプルと頭を振って気を取り直し、少ない荷物を手分けして片づけ湯を浴び身なりを整える。
これから後宮に皇帝ハヤンがロナ姫と会うためにやって来る予定だ。その際皇帝だけでなく他の五人の側妃達にも挨拶する対面式が控えている。

流石のロナ姫も少しは緊張しているかと思いアンナが優しく声を掛ける。

「ロナ様、大丈夫ですよ。アンナも付いておりますのでお気を楽にしてくださいね」

「お気を楽に…?ふっ、何を言ってるのアンナ。
これから私が行く道は修羅の道、ドロドロした嫉妬と罠が待ち構えている女の戦場よ!
燃えよ闘魂スタイルで頑張るのみよ!」

ロナ姫は可愛い顔をパチンと両手で叩き『フンガァッー』と気合を入れ、ついでに『元気ですかー!』と天井に向かって叫んでいる。きっと天井裏の鼠の元気は奪っているだろう…。

 姫様…。止めてください。
 闘牛場の牛ではないんですから…。
 貴女は一応人間ですよ…きっと。
 そして今日から側妃ですからね、分かってますか…。


早くもロナ姫についてきたことを後悔し始めた侍女アンナであったが、そういう彼女もなぜかスカートの下に磨きまくった隠し短剣を二本刺し、無意識に腕まくりまでしていた。

…主人と臣下だから似てきたのか、それとも類は友を呼ぶだったのか…?おそらく両方だ。


そんなこんなで後宮の侍女に案内され豪華な部屋へと通される。そこには皇帝の姿はまだなかったが、五人の側妃達はすでに来ていて、優雅な様子で長椅子に座っていた。

負けじと優雅に微笑んでから新参者であるロナ姫から先に挨拶をする。

「今日から後宮でお世話になります、六妃のロナと申します。田舎者ですが何卒よろしくお願い申し上げます」

 うふふ。カモ~ン、嫌味の応酬。
 ウェルカム、修羅場♪


やる気が漲っているロナ姫と違って一妃から五妃まで誰一人バチバチモードにならず『よろしくね』『仲良くしましょう』『可愛い子ね~』とゆったりと言葉を返してくれた。

 ……解せぬ???
 何これ、ここ後宮だよね?
 『後宮』って看板出てなかったけど間違ってないよね??


首をこてりと傾げポカーンと口を開けているロナ姫。

それを見てクスクスと笑いながらこの中で一番側妃歴が長い一妃マイ様がロナ姫に話し掛けた。

「ロナ様、どうして後宮なのに側妃同士いがみ合ってないのか不思議のようですね。
それはですね、そんな必要ないからです。
皇帝ハヤン様は後宮に一度たりとも足を踏み入れたことはありません。
ですから寵愛を巡って争うのは時間の無駄だとみんな分かっているのですよ。
言うなれば全員お飾りの側妃なので、お互いを尊重し毎日仲良く暮らしているのですよ。オッホッホ」

一妃の言葉に他の側妃達も優雅に頷いている。

 なんとここは修羅場ではなく天国パラダイスか?!

意地悪な側妃ライバルではなく、優しい側妃お姉さま方のいる生活。
そのうえ彼女達はみな美人でお色気ムンムン、おっぱいボヨンボヨン。

 なんか国でお世話していた牝牛たちを思い出すな~。
 おっぱい大きいし、優しそうだし。

チラリとロナ姫は自分の胸を見て密かに誓う。

 よし予定変更!
 悔しいけど昼ドラ修羅版の下剋上は諦めよう。
 そしてレッツ豊胸生活を始めよう。
 きっとここの食事を食べたら…うっふっふ。
 私もボヨンボヨンだわ♪

姿を現さない皇帝ハヤンの存在などすぐに忘れ、『よろしくお願いします、お姉さま方~』となぜか仲良く会話を始め、早くも後宮に馴染み始めるロナ姫。



そんな六妃ロナを見て後宮の侍女達は安堵していた。
まず後宮に入った側妃は皇帝に相手にされない現実に戸惑い怒る者がほとんどだった。
そして諦めの境地に入るまで身近な使用人達は理不尽な怒りをぶつけられるのが常だったからだ。

(((六妃様はちょっと抜けている感じで良かったーー)))侍女達の正直な心の声。

こうしてロナ姫は皇帝には完全に無視されたが、他の側妃や侍女達からは大歓迎され後宮生活のスタートを切ったのである。
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