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20.作戦会議
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国王の執務室にあるテーブルを囲んでギルア・宰相・ガロン・トト爺が座っている。なぜトト爺がここにいるのか?、もちろん誰かが事前に呼んだ訳では断じてない。
『散歩のついでに寄り道じゃ~ホッホッホ』と勝手に入室して来たのだが、本来国王執務室に無断で入室など許される事ではない。執務室前で警護している護衛騎士を宰相が問い詰めたが、
「「宰相様なら断れますか!出来るというなら今すぐトト様を部屋から追い出してみてください!」」
彼らに涙目で逆切れされた。自分も絶対に追い出す事は出来ないので、何も言えずトボトボと執務室に戻るしかなかった。
ちゃっかりとトト爺は椅子に座って『久しぶりに会議を聞いてみたいの~』と呟いた。自動的に今回の会議のメンバーが追加された…。
心がげっそり削られるハプニングはあったが、会議は予定通り行うことになった。まず『後宮問題解決策㊙』を各自一通り読んでみる。ゆっくり読んでいたガロンが読み終わったのを見計らって宰相が話し始める。
「これは、昨日シルビア様から渡された『後宮問題解決策㊙』です。穏便に離縁する為、側妃達から離縁を望む状況を作る、つまり側妃に『番』を宛がうとは素晴らしい着眼点です。これを実現する為の案はありませんか?」
「国中の男と片っ端からお見合いをさせればいいんじゃないか、ワッハッハ」
「馬鹿じゃの~。そんな事してたら他の種が後宮に蒔かれ放題じゃ~、ホッホッホ」
「側妃似の子ではなく、他人似の子かー。そりゃ微妙だな、ワッハッハ」
「自分の事ではないなら、ドロドロの昼ドラみたいで面白いかの~」
勝手な事を言うトト爺とガロンに対しギルアが切れる。
「いい加減にしろ!真面目に考えないなら追い出すぞ!」
「ほぅー、ギル坊。追い出すんか…」
「……いえ、真面目に考えて欲しいだけだ…」
「愚策の尻拭い案を考える前に、楽しい冗談で和ませただけじゃ~。場が和んで良かったじゃろう?」
「本当、トト爺最高だな!いい雰囲気になったよ、ワッハッハ」
ガロンは国王の側近なのに『仏のトト』を知らない幸せな獣人なのである、きっと一生知らないで過ごせるタイプだろう。
「ガロンの言った事もあながち間違いではありません。後宮内でお見合いは出来ませんが、『番』との出会いの場は必要です。あまり時間も掛けられませんし、大勢の人と会えるような催しを考えましょう」
「では王宮でパーティーを定期的に開かせよう、どうだ?」
「それでは意味がないじゃろう。側妃達も結婚前に上位のパーティーに参加していたはずじゃ、それでも『番』と出会わなかったんじゃから、同じような事をしても駄目じゃ~」
「身分を問わない誰もが参加出来るパーティーですか、王宮での開催は難しいですね」
「はぁ~、頭が堅いなー。開催なんてしないでこっちから勝手に参加すればいいだろう」
「「「??」」」
「お祭りとか色々あるだろう、それに参加は自由だ。側妃達をそこに行かせればいいだろう、ワッハッハ」
「ガロンにしては名案だ!」
「ガロンの下町でのナンパも無駄ではなかったですね」
「おぬし、見所があるの~」
オーサン国でも年四回大きなお祭り【春祭り】【夏祭り】【秋祭り】【冬祭り】が開催される。この日は国中の者が仕事を休み参加するので大いに盛り上がり、夜遅くまで続くのである。まさに多くの人に会えるチャンスなのだ。そして、次の【夏祭り】は二ヶ月後にある。
「では側妃達が夏祭りに行くように早速手配をしましょう。お忍びでも警護はしっかりやるので、ガロンは警護の指揮をお願いします」
「任せとけ。上手いこと『番』が見つかればいいな、ワッハッハ」
「兎に角、側妃の一人にでも『番』が見つかり離縁したら、後宮は解体される。それまで皆、よろしく頼む!」
少しだが希望が見えてきたギルアは嬉しそうな声で、みんなに協力を頼んだ。
「何を言っているのですか?ギルア様。側妃の一人と離縁しても後宮は解体されません」
「だが、後宮復活には側妃三人が必要だったよな?という事は側妃が二人になった時点で後宮は存続できないだろう?!」
「………はぁー。あれ程後宮復活させる前に説明したのに、ちゃんと私の話を聞いてなかったんですね」
「ホッホッホ。あの時のギル坊は政略結婚前で焦っていたからの~。後宮復活には三人の側妃が必要じゃが、その後は必ずしも三人必要ではないんじゃ。考えてみろ。側妃一人が病死して、残る側妃二人が年配だった時、後宮が解体され長年連れ添った側妃を捨てるような真似は許される訳なかろう。後宮に側妃が一人でもいる限り存続されるんじゃ~」
「ガーザ、本当か…?きっ…聞いてないぞ!」
「ちゃんとご説明しました。なんならご自分でサインした書類を確認しますか」
「俺も一緒に聞いてたぞー、ギルア様、駄々っ子みたいだなー。ワッハッハ」
「死ぬ気で側妃の『番』全員を見つける事じゃの~ホッホッホ」
「……」
『後宮問題解決策㊙』の実行案は決まったが、一人の『番』を見つければ後宮は自然解体になると勘違いしていたギルアは落ち込んでいた。実際、三人の『番』が見つかるのはいつになるのか予想もつかないのだ。
後宮が解体したら、アルビー石の入った腕輪を身に着け、一夫一婦制のシルビアに愛の告白し、本当の夫婦になってもらえるよう努力していこうと決めていた。そしていつの日かシルビアと相思相愛になると。
「シルビア、待っていてくれるかな…」
「いつまでも、あると思うなシルビア様と金じゃの~」
「待ってくれます!大丈夫です!絶対に諦めないでください!」
「何とかなるって、その為に側近がいるんだぞ。ワッハッハ」
ガロンの言葉が一番心に沁みる。やはり持つべきは優しい側近だと思っていると、
「ところで何をシルビア様は待つんだ?何を待たせるのかは知らんが、待たせるのは男として駄目だろう。ありえん!」
ギルアの言っている事は理解していないが、何故かしっかりと的を突いている。---侮れない、野犬ガロンの直観力。
ガロンの言葉に心を抉られたが、もう後がないとやる気が出てきたギルア。
「では、みんな、今すぐに動いてくれ」
「「はい、分かりました」」宰相とガロンが手配の為に仕事に取り掛かる。
「そういえば、ギル坊すぐに側妃達からアルビー石を回収した方がいいの~。あれは『番』を認識させない石じゃからな~」
「大丈夫だ、すぐに回収に行かせる」
「回収は人任せでは難しいじゃろ~。あの側妃達がギル坊からの贈り物を手放すはずがないな~」
「………」
「自分で後宮に行くしかないの~、ホッホッホ」
シルビアへの気持ちに気づいた今となっては、絶対に後宮に行きたくない。側妃達に『番』を見つけるその日まで、体調不良で押し通すつもりであった。
「後宮に行って回収しても、夜のお勤めから逃れる方法があるんじゃが、聞きたいかの~」
「頼む。教えてくれ!」
「簡単じゃ。事前に噂を流しておくんじゃ、そして側妃達に閨に引きずり込まれそうになったら『噂は事実なんだ、すまん』と言えばよい、ホッホッホ」
「分かった、どんな噂を流せばいいんだ?」
「それはこのトト爺が仕込んでおくから安心せい、今日中には噂が広がるの~。『仏のトト』に不可能なしじゃ!」
「有り難う!トト爺、恩に着るぞ!」
『仏のトト』の仕事はいつでも完璧で、失敗した事など一度もなかった。だからギルアは安心して任せることにした。
その日の夜に後宮に出向き、『もっと豪華な腕輪を送りたいから』と言って側妃達から腕輪を回収した。夜伽当番のパトア妃に捕まり掛けたが、『噂は事実なんだ、すまない』と言ったら、慌てて手を離してくれた。今までの夜の苦労はなんだったんだと思うくらい、呆気ないものだった。
無事に後宮から脱出出来たギルアは上機嫌で、今度トト爺に会ったらどんな手を使ったのか教えを乞おうと考え歩いていく。
星空が綺麗だったので真っすぐ王族専用の棟に戻らず、一般王宮の庭園を歩いていると、王宮勤めの文官達が立ち話をしている。
「なぁ、聞いたか?暫く使いもんにならんらしいぞ」
「若いのに、辛いだろうな…」
「性病からの勃起不全か、お可哀想に…国王様」
(トト爺、なんて噂を流してくれたんだーーーー!)
『散歩のついでに寄り道じゃ~ホッホッホ』と勝手に入室して来たのだが、本来国王執務室に無断で入室など許される事ではない。執務室前で警護している護衛騎士を宰相が問い詰めたが、
「「宰相様なら断れますか!出来るというなら今すぐトト様を部屋から追い出してみてください!」」
彼らに涙目で逆切れされた。自分も絶対に追い出す事は出来ないので、何も言えずトボトボと執務室に戻るしかなかった。
ちゃっかりとトト爺は椅子に座って『久しぶりに会議を聞いてみたいの~』と呟いた。自動的に今回の会議のメンバーが追加された…。
心がげっそり削られるハプニングはあったが、会議は予定通り行うことになった。まず『後宮問題解決策㊙』を各自一通り読んでみる。ゆっくり読んでいたガロンが読み終わったのを見計らって宰相が話し始める。
「これは、昨日シルビア様から渡された『後宮問題解決策㊙』です。穏便に離縁する為、側妃達から離縁を望む状況を作る、つまり側妃に『番』を宛がうとは素晴らしい着眼点です。これを実現する為の案はありませんか?」
「国中の男と片っ端からお見合いをさせればいいんじゃないか、ワッハッハ」
「馬鹿じゃの~。そんな事してたら他の種が後宮に蒔かれ放題じゃ~、ホッホッホ」
「側妃似の子ではなく、他人似の子かー。そりゃ微妙だな、ワッハッハ」
「自分の事ではないなら、ドロドロの昼ドラみたいで面白いかの~」
勝手な事を言うトト爺とガロンに対しギルアが切れる。
「いい加減にしろ!真面目に考えないなら追い出すぞ!」
「ほぅー、ギル坊。追い出すんか…」
「……いえ、真面目に考えて欲しいだけだ…」
「愚策の尻拭い案を考える前に、楽しい冗談で和ませただけじゃ~。場が和んで良かったじゃろう?」
「本当、トト爺最高だな!いい雰囲気になったよ、ワッハッハ」
ガロンは国王の側近なのに『仏のトト』を知らない幸せな獣人なのである、きっと一生知らないで過ごせるタイプだろう。
「ガロンの言った事もあながち間違いではありません。後宮内でお見合いは出来ませんが、『番』との出会いの場は必要です。あまり時間も掛けられませんし、大勢の人と会えるような催しを考えましょう」
「では王宮でパーティーを定期的に開かせよう、どうだ?」
「それでは意味がないじゃろう。側妃達も結婚前に上位のパーティーに参加していたはずじゃ、それでも『番』と出会わなかったんじゃから、同じような事をしても駄目じゃ~」
「身分を問わない誰もが参加出来るパーティーですか、王宮での開催は難しいですね」
「はぁ~、頭が堅いなー。開催なんてしないでこっちから勝手に参加すればいいだろう」
「「「??」」」
「お祭りとか色々あるだろう、それに参加は自由だ。側妃達をそこに行かせればいいだろう、ワッハッハ」
「ガロンにしては名案だ!」
「ガロンの下町でのナンパも無駄ではなかったですね」
「おぬし、見所があるの~」
オーサン国でも年四回大きなお祭り【春祭り】【夏祭り】【秋祭り】【冬祭り】が開催される。この日は国中の者が仕事を休み参加するので大いに盛り上がり、夜遅くまで続くのである。まさに多くの人に会えるチャンスなのだ。そして、次の【夏祭り】は二ヶ月後にある。
「では側妃達が夏祭りに行くように早速手配をしましょう。お忍びでも警護はしっかりやるので、ガロンは警護の指揮をお願いします」
「任せとけ。上手いこと『番』が見つかればいいな、ワッハッハ」
「兎に角、側妃の一人にでも『番』が見つかり離縁したら、後宮は解体される。それまで皆、よろしく頼む!」
少しだが希望が見えてきたギルアは嬉しそうな声で、みんなに協力を頼んだ。
「何を言っているのですか?ギルア様。側妃の一人と離縁しても後宮は解体されません」
「だが、後宮復活には側妃三人が必要だったよな?という事は側妃が二人になった時点で後宮は存続できないだろう?!」
「………はぁー。あれ程後宮復活させる前に説明したのに、ちゃんと私の話を聞いてなかったんですね」
「ホッホッホ。あの時のギル坊は政略結婚前で焦っていたからの~。後宮復活には三人の側妃が必要じゃが、その後は必ずしも三人必要ではないんじゃ。考えてみろ。側妃一人が病死して、残る側妃二人が年配だった時、後宮が解体され長年連れ添った側妃を捨てるような真似は許される訳なかろう。後宮に側妃が一人でもいる限り存続されるんじゃ~」
「ガーザ、本当か…?きっ…聞いてないぞ!」
「ちゃんとご説明しました。なんならご自分でサインした書類を確認しますか」
「俺も一緒に聞いてたぞー、ギルア様、駄々っ子みたいだなー。ワッハッハ」
「死ぬ気で側妃の『番』全員を見つける事じゃの~ホッホッホ」
「……」
『後宮問題解決策㊙』の実行案は決まったが、一人の『番』を見つければ後宮は自然解体になると勘違いしていたギルアは落ち込んでいた。実際、三人の『番』が見つかるのはいつになるのか予想もつかないのだ。
後宮が解体したら、アルビー石の入った腕輪を身に着け、一夫一婦制のシルビアに愛の告白し、本当の夫婦になってもらえるよう努力していこうと決めていた。そしていつの日かシルビアと相思相愛になると。
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「いつまでも、あると思うなシルビア様と金じゃの~」
「待ってくれます!大丈夫です!絶対に諦めないでください!」
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ギルアの言っている事は理解していないが、何故かしっかりと的を突いている。---侮れない、野犬ガロンの直観力。
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「では、みんな、今すぐに動いてくれ」
「「はい、分かりました」」宰相とガロンが手配の為に仕事に取り掛かる。
「そういえば、ギル坊すぐに側妃達からアルビー石を回収した方がいいの~。あれは『番』を認識させない石じゃからな~」
「大丈夫だ、すぐに回収に行かせる」
「回収は人任せでは難しいじゃろ~。あの側妃達がギル坊からの贈り物を手放すはずがないな~」
「………」
「自分で後宮に行くしかないの~、ホッホッホ」
シルビアへの気持ちに気づいた今となっては、絶対に後宮に行きたくない。側妃達に『番』を見つけるその日まで、体調不良で押し通すつもりであった。
「後宮に行って回収しても、夜のお勤めから逃れる方法があるんじゃが、聞きたいかの~」
「頼む。教えてくれ!」
「簡単じゃ。事前に噂を流しておくんじゃ、そして側妃達に閨に引きずり込まれそうになったら『噂は事実なんだ、すまん』と言えばよい、ホッホッホ」
「分かった、どんな噂を流せばいいんだ?」
「それはこのトト爺が仕込んでおくから安心せい、今日中には噂が広がるの~。『仏のトト』に不可能なしじゃ!」
「有り難う!トト爺、恩に着るぞ!」
『仏のトト』の仕事はいつでも完璧で、失敗した事など一度もなかった。だからギルアは安心して任せることにした。
その日の夜に後宮に出向き、『もっと豪華な腕輪を送りたいから』と言って側妃達から腕輪を回収した。夜伽当番のパトア妃に捕まり掛けたが、『噂は事実なんだ、すまない』と言ったら、慌てて手を離してくれた。今までの夜の苦労はなんだったんだと思うくらい、呆気ないものだった。
無事に後宮から脱出出来たギルアは上機嫌で、今度トト爺に会ったらどんな手を使ったのか教えを乞おうと考え歩いていく。
星空が綺麗だったので真っすぐ王族専用の棟に戻らず、一般王宮の庭園を歩いていると、王宮勤めの文官達が立ち話をしている。
「なぁ、聞いたか?暫く使いもんにならんらしいぞ」
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