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32.王女の末路~キアヌ第一王子視点~
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妹に今後の事を告げ終わると、私は足早に自分の執務室に戻ってきた。そこには主でいる私がいないのに勝手にお茶まで飲んで優雅に寛いでいるジェームズの姿があった。
「ああキアヌ様、お疲れ様です。アイラ王女はちゃんと予定通り自ら選びましたか?」
「ああ全て予定通りに運んだな。
あれの頭の中は本当にどうなっているのか…。
あんな罪を犯しながら罰として『監視付きの生活』か『他国に嫁ぐ』かの選択肢を与えられたと信じ、迷うことなく後者を選んだ。
チッ、あれと血が繋がっていると思うと虫唾が走るぞ。
だがこれで問題なく王家の膿は出せたし、隣国へも更に恩を売ることになった。
クックック、最後にやっと王族として立派に役目を果たしてくれる時が来たな。
兄として本当に嬉しいよ」
俺は妹の未来を想像し笑みが零れる。
『1%の希望と99%の絶望』が待つ隣国で、あれはどうするか。賢く道を切り開くか、はたまた100%の絶望にするか…。
---クックック、隣国からの報告が楽しみだ。
隣国は地理的に遠くあまり交流はない国だ。だが以前外交のため訪れた時、その国の王妃から秘密裏に変わった依頼をされた。それは『二人の女性の我が国での新しい身分と生活の保証』だった。
詳細は話せないが見返りは『こちらの願いをひとつだけ王妃として全力で叶える』という都合のいいものだった。
胡散臭い話だが興味が湧き、裏を調べると色々と面白いことが分かった。
---これは恩を売っておいて損はないな。
私は王妃の願いを叶えることにした。こんな繋がりもいつか役に立つかもと考えたからだ。
そしてその貸しは意外に早くに役に立つことになった。
王家の害虫であるアイラを王家の威信を傷つけることなく処分する方法を考えていた時、隣国の王太子を思い出した。
最初の妃を療養中の火事で亡くした王太子はその後3回婚姻を結ぶがなぜか妃達はみな不幸にも亡くなっている。
それは最初の王太子妃の呪いだと『悲劇の王太子』と国内では噂されているようだが事実は違う。
妃の連続死の原因は『気狂い王太子』
王太子は新しい妃を最初の妃に見立て愛そうとするが、些細な違いに激怒し『お前はマリーではない』と妃を死に至らしめているらしい。
どこの国の王族も腐った奴はいる。そして王家はそれを隠すのだ。
---ふっ、どこの国の王家も歪で闇が深いな。
こちらは王女を体裁を整えて処分したい、あちらもこれ以上罪のない女を殺すわけにいかないから他国の訳ありの王女は丁度良いはずだ。
私が隣国の王妃に願いを伝えると二つ返事で了承し、アイラを正妃として受け入れる準備を上手く整えてくれた。
そして裏を知らない隣国の国王からは大変感謝され、また新たな恩も売れた。
---初めてだな、アイラの存在が役に立ったのは。
今までの妃は最初の1人を除いて全て死んでいるが…クックク、お前はどうかな。
簡単に死んだら罪の償いにもならんからな。
せいぜい足掻いて長く苦しめっ。
準備は全て整っている、後は王族の務めを立派に果たす妹を華々しく送り出すだけだ。
「それにしてもキアヌ様や第一王女様はちゃんと王族しているのにアイラ王女だけはなんであれなんですかねー」
「分かっているくせにそれを言うか。
側妃の立派な教育と陛下の溺愛の成果に決まっているだろう」
「で、次はどうしますか?キアヌ様」
この男は本当に鋭い奴だ。アイラを処分した後に私がなにをするべきか言わなくてもしっかりと分かっている。
王家の害虫はアイラだったが、それを作ったのは紛れもなく側妃と陛下だ。だから今回アイラを処分すると同時に側妃と陛下の存在も頭を過ったが、不自然な事が続けば政治が混乱しそのしわ寄せが民にいくことになる。
それでは本末転倒だ。
だから今回の処分は王女のみだ。焦る必要などない時間はたっぷりある。
「まだ時期ではないな。それに王族はどんな時もその価値を最大限まで活かさなければ国を支えている民に申し訳がないだろう?ただで切り捨てるなんて勿体無い事はしないぞ」
「ハッハハ、そうですね。キアヌ様そういう人でした。忘れていましたよ」
ジェームズの思考回路は私と同じだから返事も分かっているだろうに、王家の闇を念押ししてくる。
この男は腹心として最高だ、私が道を誤ったら迷うことなく後ろから刺してくるだろう。
彼は私の安全装置だ。権力を持つ者は自分が暴走した時のブレーキも用意しておくべきだ。
---ふっ、期待しているぞジェームズ。
「ああそれと、この前の指示したことはどうなっている。順調か?」
「はい指示通り、今までの犠牲者達には陰ながら支援する手配は済ませています」
「そうかご苦労だった。
これでやっと…ひとつ終わったな」
************************
隣国の事情をより詳しく知りたい方は、お手数ですが作者の他作品『立派な王太子妃』を読んでいただく事をお勧め致します。
「ああキアヌ様、お疲れ様です。アイラ王女はちゃんと予定通り自ら選びましたか?」
「ああ全て予定通りに運んだな。
あれの頭の中は本当にどうなっているのか…。
あんな罪を犯しながら罰として『監視付きの生活』か『他国に嫁ぐ』かの選択肢を与えられたと信じ、迷うことなく後者を選んだ。
チッ、あれと血が繋がっていると思うと虫唾が走るぞ。
だがこれで問題なく王家の膿は出せたし、隣国へも更に恩を売ることになった。
クックック、最後にやっと王族として立派に役目を果たしてくれる時が来たな。
兄として本当に嬉しいよ」
俺は妹の未来を想像し笑みが零れる。
『1%の希望と99%の絶望』が待つ隣国で、あれはどうするか。賢く道を切り開くか、はたまた100%の絶望にするか…。
---クックック、隣国からの報告が楽しみだ。
隣国は地理的に遠くあまり交流はない国だ。だが以前外交のため訪れた時、その国の王妃から秘密裏に変わった依頼をされた。それは『二人の女性の我が国での新しい身分と生活の保証』だった。
詳細は話せないが見返りは『こちらの願いをひとつだけ王妃として全力で叶える』という都合のいいものだった。
胡散臭い話だが興味が湧き、裏を調べると色々と面白いことが分かった。
---これは恩を売っておいて損はないな。
私は王妃の願いを叶えることにした。こんな繋がりもいつか役に立つかもと考えたからだ。
そしてその貸しは意外に早くに役に立つことになった。
王家の害虫であるアイラを王家の威信を傷つけることなく処分する方法を考えていた時、隣国の王太子を思い出した。
最初の妃を療養中の火事で亡くした王太子はその後3回婚姻を結ぶがなぜか妃達はみな不幸にも亡くなっている。
それは最初の王太子妃の呪いだと『悲劇の王太子』と国内では噂されているようだが事実は違う。
妃の連続死の原因は『気狂い王太子』
王太子は新しい妃を最初の妃に見立て愛そうとするが、些細な違いに激怒し『お前はマリーではない』と妃を死に至らしめているらしい。
どこの国の王族も腐った奴はいる。そして王家はそれを隠すのだ。
---ふっ、どこの国の王家も歪で闇が深いな。
こちらは王女を体裁を整えて処分したい、あちらもこれ以上罪のない女を殺すわけにいかないから他国の訳ありの王女は丁度良いはずだ。
私が隣国の王妃に願いを伝えると二つ返事で了承し、アイラを正妃として受け入れる準備を上手く整えてくれた。
そして裏を知らない隣国の国王からは大変感謝され、また新たな恩も売れた。
---初めてだな、アイラの存在が役に立ったのは。
今までの妃は最初の1人を除いて全て死んでいるが…クックク、お前はどうかな。
簡単に死んだら罪の償いにもならんからな。
せいぜい足掻いて長く苦しめっ。
準備は全て整っている、後は王族の務めを立派に果たす妹を華々しく送り出すだけだ。
「それにしてもキアヌ様や第一王女様はちゃんと王族しているのにアイラ王女だけはなんであれなんですかねー」
「分かっているくせにそれを言うか。
側妃の立派な教育と陛下の溺愛の成果に決まっているだろう」
「で、次はどうしますか?キアヌ様」
この男は本当に鋭い奴だ。アイラを処分した後に私がなにをするべきか言わなくてもしっかりと分かっている。
王家の害虫はアイラだったが、それを作ったのは紛れもなく側妃と陛下だ。だから今回アイラを処分すると同時に側妃と陛下の存在も頭を過ったが、不自然な事が続けば政治が混乱しそのしわ寄せが民にいくことになる。
それでは本末転倒だ。
だから今回の処分は王女のみだ。焦る必要などない時間はたっぷりある。
「まだ時期ではないな。それに王族はどんな時もその価値を最大限まで活かさなければ国を支えている民に申し訳がないだろう?ただで切り捨てるなんて勿体無い事はしないぞ」
「ハッハハ、そうですね。キアヌ様そういう人でした。忘れていましたよ」
ジェームズの思考回路は私と同じだから返事も分かっているだろうに、王家の闇を念押ししてくる。
この男は腹心として最高だ、私が道を誤ったら迷うことなく後ろから刺してくるだろう。
彼は私の安全装置だ。権力を持つ者は自分が暴走した時のブレーキも用意しておくべきだ。
---ふっ、期待しているぞジェームズ。
「ああそれと、この前の指示したことはどうなっている。順調か?」
「はい指示通り、今までの犠牲者達には陰ながら支援する手配は済ませています」
「そうかご苦労だった。
これでやっと…ひとつ終わったな」
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隣国の事情をより詳しく知りたい方は、お手数ですが作者の他作品『立派な王太子妃』を読んでいただく事をお勧め致します。
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