26 / 36
25.復讐~騎士団長視点~②
しおりを挟む
それは妻が親戚筋のお茶会に参加した日。
普段下位貴族のお茶会になど参加しない第二王女がなぜか飛び入りで参加していたらしい。その時の王女は王都一の職人が刺した刺繍がある豪華なドレスを身に纏い、皆から『素晴らしいですわ』と話題の中心にいた。
だがある令嬢がふと妻のドレスの刺繍を見て大層褒めてくれた。その刺繍が妻本人が施したものだと知り、周りから『なんて繊細で素晴らしい刺繍なのかしら』と大絶賛された。
そして王女からも『貴女の右手は魔法の手のようね。怪我などしないように大切になさってね』とお言葉を頂いたそうだ。
ただそれだけなのだが、何かが引っ掛かった。
---右手が褒められた後に、その右手だけが執拗に潰された。
これは本当に偶然なのか…?
俺は独自でアイラ王女の周辺を調べ始めた。すると王女が関係するとははっきり言えないが、不可解な出来事がいくつか浮かび上がってきた。
決定的な証拠は何一つないが、空いたそこに王女の存在を当てはめると出来上がるパズルのような不可解な出来事…。
---王女が介入していると考えればすべて辻褄が会うな…。
あの王女は限りなく黒に近いぞ、クソッたれがっ。
俺の勘も『黒』と告げてくるがそれだけではただの推測でしかない。
だがある日、夜会で警備をしている時に取り巻き達と王女の何気ない雑談を聞いてしまった。
『以前王都一の刺繍職人よりも素晴らしい刺繍を刺す女性がいたのよ。でもその者は二人の男に襲われて大切な右手が潰れてしまったみたい。もう二度と刺繍は出来ないでしょうね、可哀想だわ』
妻が右手が潰された事件は知っていてもおかしくはない。だが犯人は男とだけ公表されていて、二人の男に襲われたことは公になっていない情報だ。王女が下位の貴族を気に掛けて調べるとも思えない、そんなお優しい王女では決してない。
だとしたら知っている理由はただ一つ。
---王女がやはり黒幕だったのか。
ギリッ、なんでだ!
妻がお前に何をしたというんだ!
エマにしたことを絶対に許しはしない!
同じ目に合わせてやるっ!
それからは俺は家庭では妻を大切にし平穏に過ごしていたが、王女に復讐する機会を探っていた。
---ただ責めても白を切られ、不敬罪で捕まるのがオチだ。何か決定的な証拠が必要だ。
クソッ、俺にもっと力があれば。
そんな時、キアヌ第一王子に声を掛けられた。
『お前、第二王女を密かに探っているな』
『………』
『そう警戒するな。私もお前と同じであれの動きを監視している。だが籠絡した男達を上手く利用しているのかなかなか尻尾が掴めない。どうだ俺の手足となって王女を追い詰めないか?それが望みだろう』
キアヌ第一王子は俺の事は調査済みのようで全て把握していた。そのうえで俺が決して裏切らないと思い声を掛けてきたのだ。
そうだ、俺は妻を苦しめた王女を断罪する為ならなんでもする。でも肝心なのは王族を信用できるかだ。
普段下位貴族のお茶会になど参加しない第二王女がなぜか飛び入りで参加していたらしい。その時の王女は王都一の職人が刺した刺繍がある豪華なドレスを身に纏い、皆から『素晴らしいですわ』と話題の中心にいた。
だがある令嬢がふと妻のドレスの刺繍を見て大層褒めてくれた。その刺繍が妻本人が施したものだと知り、周りから『なんて繊細で素晴らしい刺繍なのかしら』と大絶賛された。
そして王女からも『貴女の右手は魔法の手のようね。怪我などしないように大切になさってね』とお言葉を頂いたそうだ。
ただそれだけなのだが、何かが引っ掛かった。
---右手が褒められた後に、その右手だけが執拗に潰された。
これは本当に偶然なのか…?
俺は独自でアイラ王女の周辺を調べ始めた。すると王女が関係するとははっきり言えないが、不可解な出来事がいくつか浮かび上がってきた。
決定的な証拠は何一つないが、空いたそこに王女の存在を当てはめると出来上がるパズルのような不可解な出来事…。
---王女が介入していると考えればすべて辻褄が会うな…。
あの王女は限りなく黒に近いぞ、クソッたれがっ。
俺の勘も『黒』と告げてくるがそれだけではただの推測でしかない。
だがある日、夜会で警備をしている時に取り巻き達と王女の何気ない雑談を聞いてしまった。
『以前王都一の刺繍職人よりも素晴らしい刺繍を刺す女性がいたのよ。でもその者は二人の男に襲われて大切な右手が潰れてしまったみたい。もう二度と刺繍は出来ないでしょうね、可哀想だわ』
妻が右手が潰された事件は知っていてもおかしくはない。だが犯人は男とだけ公表されていて、二人の男に襲われたことは公になっていない情報だ。王女が下位の貴族を気に掛けて調べるとも思えない、そんなお優しい王女では決してない。
だとしたら知っている理由はただ一つ。
---王女がやはり黒幕だったのか。
ギリッ、なんでだ!
妻がお前に何をしたというんだ!
エマにしたことを絶対に許しはしない!
同じ目に合わせてやるっ!
それからは俺は家庭では妻を大切にし平穏に過ごしていたが、王女に復讐する機会を探っていた。
---ただ責めても白を切られ、不敬罪で捕まるのがオチだ。何か決定的な証拠が必要だ。
クソッ、俺にもっと力があれば。
そんな時、キアヌ第一王子に声を掛けられた。
『お前、第二王女を密かに探っているな』
『………』
『そう警戒するな。私もお前と同じであれの動きを監視している。だが籠絡した男達を上手く利用しているのかなかなか尻尾が掴めない。どうだ俺の手足となって王女を追い詰めないか?それが望みだろう』
キアヌ第一王子は俺の事は調査済みのようで全て把握していた。そのうえで俺が決して裏切らないと思い声を掛けてきたのだ。
そうだ、俺は妻を苦しめた王女を断罪する為ならなんでもする。でも肝心なのは王族を信用できるかだ。
96
お気に入りに追加
2,624
あなたにおすすめの小説

騎士の妻ではいられない
Rj
恋愛
騎士の娘として育ったリンダは騎士とは結婚しないと決めていた。しかし幼馴染みで騎士のイーサンと結婚したリンダ。結婚した日に新郎は非常召集され、新婦のリンダは結婚を祝う宴に一人残された。二年目の結婚記念日に戻らない夫を待つリンダはもう騎士の妻ではいられないと心を決める。
全23話。
2024/1/29 全体的な加筆修正をしました。話の内容に変わりはありません。
イーサンが主人公の続編『騎士の妻でいてほしい 』(https://www.alphapolis.co.jp/novel/96163257/36727666)があります。

結婚式をボイコットした王女
椿森
恋愛
請われて隣国の王太子の元に嫁ぐこととなった、王女のナルシア。
しかし、婚姻の儀の直前に王太子が不貞とも言える行動をしたためにボイコットすることにした。もちろん、婚約は解消させていただきます。
※初投稿のため生暖か目で見てくださると幸いです※
1/9:一応、本編完結です。今後、このお話に至るまでを書いていこうと思います。
1/17:王太子の名前を修正しました!申し訳ございませんでした···( ´ཫ`)

結婚5年目の仮面夫婦ですが、そろそろ限界のようです!?
宮永レン
恋愛
没落したアルブレヒト伯爵家を援助すると声をかけてきたのは、成り上がり貴族と呼ばれるヴィルジール・シリングス子爵。援助の条件とは一人娘のミネットを妻にすること。
ミネットは形だけの結婚を申し出るが、ヴィルジールからは仕事に支障が出ると困るので外では仲の良い夫婦を演じてほしいと告げられる。
仮面夫婦としての生活を続けるうちに二人の心には変化が生まれるが……

[電子書籍化]好きな人が幸せならそれでいいと、そう思っていました。
はるきりょう
恋愛
『 好きな人が幸せならそれでいいと、そう思っていました。』がシーモアさんで、電子書籍化することになりました!!!!
本編(公開のものを加筆・校正)→後日談(公開のものを加筆・校正)→最新話→シーモア特典SSの時系列です。本編+後日談は約2万字弱加筆してあります!電子書籍読んでいただければ幸いです!!
※分かりずらいので、アダム視点もこちらに移しました!アダム視点のみは非公開にさせてもらいます。
オリビアは自分にできる一番の笑顔をジェイムズに見せる。それは本当の気持ちだった。強がりと言われればそうかもしれないけれど。でもオリビアは心から思うのだ。
好きな人が幸せであることが一番幸せだと。
「……そう。…君はこれからどうするの?」
「お伝えし忘れておりました。私、婚約者候補となりましたの。皇太子殿下の」
大好きな婚約者の幸せを願い、身を引いたオリビアが皇太子殿下の婚約者候補となり、新たな恋をする話。

旦那様は離縁をお望みでしょうか
村上かおり
恋愛
ルーベンス子爵家の三女、バーバラはアルトワイス伯爵家の次男であるリカルドと22歳の時に結婚した。
けれど最初の顔合わせの時から、リカルドは不機嫌丸出しで、王都に来てもバーバラを家に一人残して帰ってくる事もなかった。
バーバラは行き遅れと言われていた自分との政略結婚が気に入らないだろうと思いつつも、いずれはリカルドともいい関係を築けるのではないかと待ち続けていたが。

貴方が側妃を望んだのです
cyaru
恋愛
「君はそれでいいのか」王太子ハロルドは言った。
「えぇ。勿論ですわ」婚約者の公爵令嬢フランセアは答えた。
誠の愛に気がついたと言われたフランセアは微笑んで答えた。
※2022年6月12日。一部書き足しました。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。
史実などに基づいたものではない事をご理解ください。
※話の都合上、残酷な描写がありますがそれがざまぁなのかは受け取り方は人それぞれです。
表現的にどうかと思う回は冒頭に注意喚起を書き込むようにしますが有無は作者の判断です。
※更新していくうえでタグは幾つか増えます。
※作者都合のご都合主義です。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。

もっと傲慢でいてください、殿下。──わたしのために。
ふまさ
恋愛
「クラリス。すまないが、今日も仕事を頼まれてくれないか?」
王立学園に入学して十ヶ月が経った放課後。生徒会室に向かう途中の廊下で、この国の王子であるイライジャが、並んで歩く婚約者のクラリスに言った。クラリスが、ですが、と困ったように呟く。
「やはり、生徒会長であるイライジャ殿下に与えられた仕事ですので、ご自分でなされたほうが、殿下のためにもよろしいのではないでしょうか……?」
「そうしたいのはやまやまだが、側妃候補のご令嬢たちと、お茶をする約束をしてしまったんだ。ぼくが王となったときのためにも、愛想はよくしていた方がいいだろう?」
「……それはそうかもしれませんが」
「クラリス。まだぐだぐだ言うようなら──わかっているよね?」
イライジャは足を止め、クラリスに一歩、近付いた。
「王子であるぼくの命に逆らうのなら、きみとの婚約は、破棄させてもらうよ?」
こう言えば、イライジャを愛しているクラリスが、どんな頼み事も断れないとわかったうえでの脅しだった。現に、クラリスは焦ったように顔をあげた。
「そ、それは嫌です!」
「うん。なら、お願いするね。大丈夫。ぼくが一番に愛しているのは、きみだから。それだけは信じて」
イライジャが抱き締めると、クラリスは、はい、と嬉しそうに笑った。
──ああ。何て扱いやすく、便利な婚約者なのだろう。
イライジャはそっと、口角をあげた。
だが。
そんなイライジャの学園生活は、それから僅か二ヶ月後に、幕を閉じることになる。

笑わない妻を娶りました
mios
恋愛
伯爵家嫡男であるスタン・タイロンは、伯爵家を継ぐ際に妻を娶ることにした。
同じ伯爵位で、友人であるオリバー・クレンズの従姉妹で笑わないことから氷の女神とも呼ばれているミスティア・ドゥーラ嬢。
彼女は美しく、スタンは一目惚れをし、トントン拍子に婚約・結婚することになったのだが。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる