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24.復讐~騎士団長視点~①
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『た、大変です。旦那様、奥様が物取りに襲われ酷い怪我を…!』
その知らせは突然だった。四年前の冬、使用人と共に買い物に出かけた妻が白昼堂々襲われたのだ。
俺は子爵家の三男なので継ぐべき家もなく、剣の腕を活かして騎士団の中で副団長をしていた。王都に小さな屋敷を構えてはいたが、慎ましやかな生活で子爵家出身の妻も使用人とともに家事もするそんな生活だった。
だから身なりも派手ではなく、買い物かごを手に出掛けた妻が、金品目的で襲われるなんて考えてもいなかった。
急ぎ、妻が運ばれた診療所に駆け付けるとそこには右手に包帯を巻いた妻が痛みに顔を歪ませ横たわっていた。
『エマ、エマ、大丈夫か!』
俺は妻の傍に寄り、髪を優しく撫でながら声を掛ける。
『あ、あなた…。うっ…』
妻は痛みに耐えながら、襲われた経緯を途切れ途切れに話してくれた。
その内容はただの物取りではない事を物語っていた。
買い物帰りの妻と使用人は人気のない道に入ると同時に襲われたらしい。まず使用人を殴り気を失わせた後、妻に襲い掛かった。だが金銭や食料には一切手を付けず、妻を道に押さえつけるとその右手だけを石で何度も執拗に殴りつけ足早に去って行ったのだ。
犯人は身なりも悪くなく、ごろつき風でもなかったらしい。
---これは物取りの犯行ではない。だとしたら目的は俺への嫌がらせか…。
自分のせいで妻が襲われたのかと思うと悔しくて仕方がなかった。
妻と俺は貴族では珍しく純粋な恋愛結婚だった。
---生涯守ると誓ったのに。クソッ、この様かっ!
刺繍が得意で誰からも絶賛される腕前の持ち主だった妻はもう二度と針を持てない右手になってしまった。それに完全に骨を砕かれた右手は日常生活を送るうえでも不自由で、妻は家事が今までと同じ様に出来ない事に悩み、酷く落ち込むようになっていった。
『ごめんなさい、あなた。
私はもう何一つ満足に出来ないわ。あなたのお荷物にしかならないから離縁してください』
『何を言ってるんだ!エマ、君は俺の大切な人なんだ。愛している、出来ない事は俺や使用人がやるから気にするな』
『でも…でも我が家は貴族とはいえ平民に近い暮らしなのよ。その妻が何もせずにいるなんて…、駄目だわ。
あなたを苦しめたくない。仕事も大変なのに、そのうえ家に帰ると何も出来ない妻がいたら…。
愛しているから苦しめたくないの!
それに、こんな私がいつかあなたに嫌われてしまうのが怖くてたまらないのよ!
だから今、お互い愛し合っている幸せな時に別れたい‥…。
お願いよ…あなたがまだ私を愛してくれるうちに…別れて。
うっううっ…』
『絶対に別れない!エマ、君のことを心から愛している。そしてそれは絶対に変わらない!
手が不自由だからなんだ、そんなことで気持ちが変わるかっ!
君の存在が俺を苦しめる?
それは違う。俺が苦しくなるのは君がいない人生だけだ。
そして俺の愛を信じて貰えないのが辛いし、君にそんな思いをさせている自分が情けない。
もう一度言う!
エマ、愛している。どんな時も俺の隣で笑っていてくれ、君だけが俺を幸せにしてくれるんだ』
『い、いいの…?本当に役に立たない私で…』
『エマだからいいんだ、エマじゃなくては意味がない。それに美女と野獣でお似合いだろう?』
『えっ、野獣…? っふ、ふふふ。あっはは』
俺は久しぶり聞いた妻の笑い声が嬉しくて、彼女を力一杯抱き締め過ぎ『あなた、ちょっと痛いわ』と叱られたが、それさえも彼女が隣にいてくれる証のようで嬉しくて仕方がなかった。
それからのエマは不自由な右手を補うために左手でなんでもやるように頑張った。上手くいかない事も多いけど、それすら二人で笑い飛ばせる様になっていた。
だがそんな幸せな生活の一方で俺は妻を襲った犯人を捜しだすのを諦めてはいなかった。
物取りの犯行として決着してしまったが、そうではないのは明らかで、最初は俺の仕事筋から丹念に調べたが何も出てこない。
---ならエマの関係なのか?一体何があった…。
しかしエマは明るい性格で恨みを買うような女性ではない。やはり調べても何も出てこなかった。
だが事件が起こる数週間前に一つだけ普段と違う事があったのが分かった。
その知らせは突然だった。四年前の冬、使用人と共に買い物に出かけた妻が白昼堂々襲われたのだ。
俺は子爵家の三男なので継ぐべき家もなく、剣の腕を活かして騎士団の中で副団長をしていた。王都に小さな屋敷を構えてはいたが、慎ましやかな生活で子爵家出身の妻も使用人とともに家事もするそんな生活だった。
だから身なりも派手ではなく、買い物かごを手に出掛けた妻が、金品目的で襲われるなんて考えてもいなかった。
急ぎ、妻が運ばれた診療所に駆け付けるとそこには右手に包帯を巻いた妻が痛みに顔を歪ませ横たわっていた。
『エマ、エマ、大丈夫か!』
俺は妻の傍に寄り、髪を優しく撫でながら声を掛ける。
『あ、あなた…。うっ…』
妻は痛みに耐えながら、襲われた経緯を途切れ途切れに話してくれた。
その内容はただの物取りではない事を物語っていた。
買い物帰りの妻と使用人は人気のない道に入ると同時に襲われたらしい。まず使用人を殴り気を失わせた後、妻に襲い掛かった。だが金銭や食料には一切手を付けず、妻を道に押さえつけるとその右手だけを石で何度も執拗に殴りつけ足早に去って行ったのだ。
犯人は身なりも悪くなく、ごろつき風でもなかったらしい。
---これは物取りの犯行ではない。だとしたら目的は俺への嫌がらせか…。
自分のせいで妻が襲われたのかと思うと悔しくて仕方がなかった。
妻と俺は貴族では珍しく純粋な恋愛結婚だった。
---生涯守ると誓ったのに。クソッ、この様かっ!
刺繍が得意で誰からも絶賛される腕前の持ち主だった妻はもう二度と針を持てない右手になってしまった。それに完全に骨を砕かれた右手は日常生活を送るうえでも不自由で、妻は家事が今までと同じ様に出来ない事に悩み、酷く落ち込むようになっていった。
『ごめんなさい、あなた。
私はもう何一つ満足に出来ないわ。あなたのお荷物にしかならないから離縁してください』
『何を言ってるんだ!エマ、君は俺の大切な人なんだ。愛している、出来ない事は俺や使用人がやるから気にするな』
『でも…でも我が家は貴族とはいえ平民に近い暮らしなのよ。その妻が何もせずにいるなんて…、駄目だわ。
あなたを苦しめたくない。仕事も大変なのに、そのうえ家に帰ると何も出来ない妻がいたら…。
愛しているから苦しめたくないの!
それに、こんな私がいつかあなたに嫌われてしまうのが怖くてたまらないのよ!
だから今、お互い愛し合っている幸せな時に別れたい‥…。
お願いよ…あなたがまだ私を愛してくれるうちに…別れて。
うっううっ…』
『絶対に別れない!エマ、君のことを心から愛している。そしてそれは絶対に変わらない!
手が不自由だからなんだ、そんなことで気持ちが変わるかっ!
君の存在が俺を苦しめる?
それは違う。俺が苦しくなるのは君がいない人生だけだ。
そして俺の愛を信じて貰えないのが辛いし、君にそんな思いをさせている自分が情けない。
もう一度言う!
エマ、愛している。どんな時も俺の隣で笑っていてくれ、君だけが俺を幸せにしてくれるんだ』
『い、いいの…?本当に役に立たない私で…』
『エマだからいいんだ、エマじゃなくては意味がない。それに美女と野獣でお似合いだろう?』
『えっ、野獣…? っふ、ふふふ。あっはは』
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それからのエマは不自由な右手を補うために左手でなんでもやるように頑張った。上手くいかない事も多いけど、それすら二人で笑い飛ばせる様になっていた。
だがそんな幸せな生活の一方で俺は妻を襲った犯人を捜しだすのを諦めてはいなかった。
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---ならエマの関係なのか?一体何があった…。
しかしエマは明るい性格で恨みを買うような女性ではない。やはり調べても何も出てこなかった。
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