24 / 36
23.救出②
しおりを挟む
※残酷な描写があります。
苦手な方はご注意ください。
*****************************
ブッシューーー!ボトリ……。
「ギャーーー!!わ、私のてが…手が…。
あ、あああ…っぐ…、い、いやーー!
な、なんで…、うっぐ……。
ヒッ…、ヒッ、い、痛いー!!」
アイラ王女は先のない右手を凝視しながら痛みにのたうち回りながら泣き叫んでいる。
そして床に転がる短剣を握ったままの王女の右手首。それはもちろん腕とはもう繋がっていない…。
迷うことなく王女の手を切り落とした騎士団長は『たかが右手首一つだけです』と淡々と言って手首のない右手に止血処理の為の布を巻いている。
「見なくていい。目を閉じていろ、すぐに終わらせる」
残虐な光景と血の臭いに酔いふらつく私にエディは労わるように声を掛けてくる。その言葉に甘えてルイにもこの惨劇を見せない様に背を向け固く目を閉じる。
エディの言葉通り決着は直ぐについた。ほとんどの男達は息絶え、生き残った数人も深手を負い痛みに悶えている。
そしてアイラ王女は叫び過ぎたのか声も枯れているが、それでもまだ喚き散らしている。
「ヒッヒーー!手が、手が…。
私の右手が……ヒック、グッ…。
なんて事を…こんなこと…ゆ、許されないわ…よ。
我が国の王女である私にこんな事して無事でいられると思うの!
絶対に同じ目、いえ、お前達全員の四肢を切り刻んで、家畜の餌にしてやるー!
うっっぐ…、ヒッ、痛…い」
「クックク、まだそんな事を言っているのかい。
本当にお前は呆れるほど愚かだな。
私の目の前で罪が露見したんだよ。
もうお前は終わりだ、アイラ」
王女を呼び捨てにし呆れたよう口調で話すのはフードを目深に被った騎士だった。罪を犯した王女とはいえ呼び捨てにする臣下などいないはず、それならばこの人は……。
---キアヌ第一王子様…?
私の予感は当たっていた。
「キ、キアヌお兄様?」
「ああ残念だけどお前の兄なのは事実だな」
「あ…あ、こ、これは、ち、違う。私じゃなくて…勝手に、」
「黙れ!見苦しいぞ、口を閉じていろ!」
フードを外したその顔は我が国のキアヌ第一王子その人だった。
私が慌てて臣下の礼を取ろうとすると『いらないから』とぶっきらぼうにエディは言い、私をルイごと横抱きにし部屋から出て行こうとする。
「ちょっと待って、エディ。そんな勝手なことをしては、」
「構わない。エド、先にキャサリンとルイを連れて屋敷へ戻れ、そして久しぶりに家族水入らずで過ごしていろ。
後の事は俺達がちゃんと処理するから問題はない。
今まで大切な家族を犠牲にして頑張っていたのだから、勿論いいですよね?
まさか駄目と言ったりしませんよね?
キ・ア・ヌ・様!」
兄は大胆にもキアヌ第一王子に対して臣下らしからぬ高圧的とも取れる態度で接している。『これは不味いのでは…』という私の心配を余所に兄は笑いながら『キアヌ第一王子様と言いましょうか~』と惚けたことを言っている。もう意味が分からない…。
だがキアヌ第一王子様は不敬だと怒ることなく、
「ったく。私が言うべきセリフを勝手に言うな、ジェームズ。
だがその通りだ。エドワード・キャンベル、まずは大変な目にあったキャンベル伯爵夫人ともどもゆっくり休んでくれ。
詳細は後日王宮で説明するので、その呼び出しがあるまで夫婦でしっかりと今までの時間を取り戻すように」
直接キアヌ第一王子様からお言葉を掛けられるのは初めてのうえ、エディに抱かれているので丁寧な礼も出来ず『有り難う…ございます』と言うだけで精一杯だった。
だがそんな私と無言なまま頭を下げるだけのエディを誰も咎めることはなかった。
---いったいこれは……どういうことなの?
私はエディに教えて欲しいという表情を向けるが、エディは怒っっているようで何も答えてはくれない。
『まずは帰ろう』とだけ言うとすぐに私とルイを抱いたままその場を去ってしまった。
苦手な方はご注意ください。
*****************************
ブッシューーー!ボトリ……。
「ギャーーー!!わ、私のてが…手が…。
あ、あああ…っぐ…、い、いやーー!
な、なんで…、うっぐ……。
ヒッ…、ヒッ、い、痛いー!!」
アイラ王女は先のない右手を凝視しながら痛みにのたうち回りながら泣き叫んでいる。
そして床に転がる短剣を握ったままの王女の右手首。それはもちろん腕とはもう繋がっていない…。
迷うことなく王女の手を切り落とした騎士団長は『たかが右手首一つだけです』と淡々と言って手首のない右手に止血処理の為の布を巻いている。
「見なくていい。目を閉じていろ、すぐに終わらせる」
残虐な光景と血の臭いに酔いふらつく私にエディは労わるように声を掛けてくる。その言葉に甘えてルイにもこの惨劇を見せない様に背を向け固く目を閉じる。
エディの言葉通り決着は直ぐについた。ほとんどの男達は息絶え、生き残った数人も深手を負い痛みに悶えている。
そしてアイラ王女は叫び過ぎたのか声も枯れているが、それでもまだ喚き散らしている。
「ヒッヒーー!手が、手が…。
私の右手が……ヒック、グッ…。
なんて事を…こんなこと…ゆ、許されないわ…よ。
我が国の王女である私にこんな事して無事でいられると思うの!
絶対に同じ目、いえ、お前達全員の四肢を切り刻んで、家畜の餌にしてやるー!
うっっぐ…、ヒッ、痛…い」
「クックク、まだそんな事を言っているのかい。
本当にお前は呆れるほど愚かだな。
私の目の前で罪が露見したんだよ。
もうお前は終わりだ、アイラ」
王女を呼び捨てにし呆れたよう口調で話すのはフードを目深に被った騎士だった。罪を犯した王女とはいえ呼び捨てにする臣下などいないはず、それならばこの人は……。
---キアヌ第一王子様…?
私の予感は当たっていた。
「キ、キアヌお兄様?」
「ああ残念だけどお前の兄なのは事実だな」
「あ…あ、こ、これは、ち、違う。私じゃなくて…勝手に、」
「黙れ!見苦しいぞ、口を閉じていろ!」
フードを外したその顔は我が国のキアヌ第一王子その人だった。
私が慌てて臣下の礼を取ろうとすると『いらないから』とぶっきらぼうにエディは言い、私をルイごと横抱きにし部屋から出て行こうとする。
「ちょっと待って、エディ。そんな勝手なことをしては、」
「構わない。エド、先にキャサリンとルイを連れて屋敷へ戻れ、そして久しぶりに家族水入らずで過ごしていろ。
後の事は俺達がちゃんと処理するから問題はない。
今まで大切な家族を犠牲にして頑張っていたのだから、勿論いいですよね?
まさか駄目と言ったりしませんよね?
キ・ア・ヌ・様!」
兄は大胆にもキアヌ第一王子に対して臣下らしからぬ高圧的とも取れる態度で接している。『これは不味いのでは…』という私の心配を余所に兄は笑いながら『キアヌ第一王子様と言いましょうか~』と惚けたことを言っている。もう意味が分からない…。
だがキアヌ第一王子様は不敬だと怒ることなく、
「ったく。私が言うべきセリフを勝手に言うな、ジェームズ。
だがその通りだ。エドワード・キャンベル、まずは大変な目にあったキャンベル伯爵夫人ともどもゆっくり休んでくれ。
詳細は後日王宮で説明するので、その呼び出しがあるまで夫婦でしっかりと今までの時間を取り戻すように」
直接キアヌ第一王子様からお言葉を掛けられるのは初めてのうえ、エディに抱かれているので丁寧な礼も出来ず『有り難う…ございます』と言うだけで精一杯だった。
だがそんな私と無言なまま頭を下げるだけのエディを誰も咎めることはなかった。
---いったいこれは……どういうことなの?
私はエディに教えて欲しいという表情を向けるが、エディは怒っっているようで何も答えてはくれない。
『まずは帰ろう』とだけ言うとすぐに私とルイを抱いたままその場を去ってしまった。
108
お気に入りに追加
2,624
あなたにおすすめの小説

騎士の妻ではいられない
Rj
恋愛
騎士の娘として育ったリンダは騎士とは結婚しないと決めていた。しかし幼馴染みで騎士のイーサンと結婚したリンダ。結婚した日に新郎は非常召集され、新婦のリンダは結婚を祝う宴に一人残された。二年目の結婚記念日に戻らない夫を待つリンダはもう騎士の妻ではいられないと心を決める。
全23話。
2024/1/29 全体的な加筆修正をしました。話の内容に変わりはありません。
イーサンが主人公の続編『騎士の妻でいてほしい 』(https://www.alphapolis.co.jp/novel/96163257/36727666)があります。

結婚5年目の仮面夫婦ですが、そろそろ限界のようです!?
宮永レン
恋愛
没落したアルブレヒト伯爵家を援助すると声をかけてきたのは、成り上がり貴族と呼ばれるヴィルジール・シリングス子爵。援助の条件とは一人娘のミネットを妻にすること。
ミネットは形だけの結婚を申し出るが、ヴィルジールからは仕事に支障が出ると困るので外では仲の良い夫婦を演じてほしいと告げられる。
仮面夫婦としての生活を続けるうちに二人の心には変化が生まれるが……

[電子書籍化]好きな人が幸せならそれでいいと、そう思っていました。
はるきりょう
恋愛
『 好きな人が幸せならそれでいいと、そう思っていました。』がシーモアさんで、電子書籍化することになりました!!!!
本編(公開のものを加筆・校正)→後日談(公開のものを加筆・校正)→最新話→シーモア特典SSの時系列です。本編+後日談は約2万字弱加筆してあります!電子書籍読んでいただければ幸いです!!
※分かりずらいので、アダム視点もこちらに移しました!アダム視点のみは非公開にさせてもらいます。
オリビアは自分にできる一番の笑顔をジェイムズに見せる。それは本当の気持ちだった。強がりと言われればそうかもしれないけれど。でもオリビアは心から思うのだ。
好きな人が幸せであることが一番幸せだと。
「……そう。…君はこれからどうするの?」
「お伝えし忘れておりました。私、婚約者候補となりましたの。皇太子殿下の」
大好きな婚約者の幸せを願い、身を引いたオリビアが皇太子殿下の婚約者候補となり、新たな恋をする話。

旦那様は離縁をお望みでしょうか
村上かおり
恋愛
ルーベンス子爵家の三女、バーバラはアルトワイス伯爵家の次男であるリカルドと22歳の時に結婚した。
けれど最初の顔合わせの時から、リカルドは不機嫌丸出しで、王都に来てもバーバラを家に一人残して帰ってくる事もなかった。
バーバラは行き遅れと言われていた自分との政略結婚が気に入らないだろうと思いつつも、いずれはリカルドともいい関係を築けるのではないかと待ち続けていたが。

貴方が側妃を望んだのです
cyaru
恋愛
「君はそれでいいのか」王太子ハロルドは言った。
「えぇ。勿論ですわ」婚約者の公爵令嬢フランセアは答えた。
誠の愛に気がついたと言われたフランセアは微笑んで答えた。
※2022年6月12日。一部書き足しました。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。
史実などに基づいたものではない事をご理解ください。
※話の都合上、残酷な描写がありますがそれがざまぁなのかは受け取り方は人それぞれです。
表現的にどうかと思う回は冒頭に注意喚起を書き込むようにしますが有無は作者の判断です。
※更新していくうえでタグは幾つか増えます。
※作者都合のご都合主義です。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。

もっと傲慢でいてください、殿下。──わたしのために。
ふまさ
恋愛
「クラリス。すまないが、今日も仕事を頼まれてくれないか?」
王立学園に入学して十ヶ月が経った放課後。生徒会室に向かう途中の廊下で、この国の王子であるイライジャが、並んで歩く婚約者のクラリスに言った。クラリスが、ですが、と困ったように呟く。
「やはり、生徒会長であるイライジャ殿下に与えられた仕事ですので、ご自分でなされたほうが、殿下のためにもよろしいのではないでしょうか……?」
「そうしたいのはやまやまだが、側妃候補のご令嬢たちと、お茶をする約束をしてしまったんだ。ぼくが王となったときのためにも、愛想はよくしていた方がいいだろう?」
「……それはそうかもしれませんが」
「クラリス。まだぐだぐだ言うようなら──わかっているよね?」
イライジャは足を止め、クラリスに一歩、近付いた。
「王子であるぼくの命に逆らうのなら、きみとの婚約は、破棄させてもらうよ?」
こう言えば、イライジャを愛しているクラリスが、どんな頼み事も断れないとわかったうえでの脅しだった。現に、クラリスは焦ったように顔をあげた。
「そ、それは嫌です!」
「うん。なら、お願いするね。大丈夫。ぼくが一番に愛しているのは、きみだから。それだけは信じて」
イライジャが抱き締めると、クラリスは、はい、と嬉しそうに笑った。
──ああ。何て扱いやすく、便利な婚約者なのだろう。
イライジャはそっと、口角をあげた。
だが。
そんなイライジャの学園生活は、それから僅か二ヶ月後に、幕を閉じることになる。

笑わない妻を娶りました
mios
恋愛
伯爵家嫡男であるスタン・タイロンは、伯爵家を継ぐ際に妻を娶ることにした。
同じ伯爵位で、友人であるオリバー・クレンズの従姉妹で笑わないことから氷の女神とも呼ばれているミスティア・ドゥーラ嬢。
彼女は美しく、スタンは一目惚れをし、トントン拍子に婚約・結婚することになったのだが。

忙しい男
菅井群青
恋愛
付き合っていた彼氏に別れを告げた。忙しいという彼を信じていたけれど、私から別れを告げる前に……きっと私は半分捨てられていたんだ。
「私のことなんてもうなんとも思ってないくせに」
「お前は一体俺の何を見て言ってる──お前は、俺を知らな過ぎる」
すれ違う想いはどうしてこうも上手くいかないのか。いつだって思うことはただ一つ、愛おしいという気持ちだ。
※ハッピーエンドです
かなりやきもきさせてしまうと思います。
どうか温かい目でみてやってくださいね。
※本編完結しました(2019/07/15)
スピンオフ &番外編
【泣く背中】 菊田夫妻のストーリーを追加しました(2019/08/19)
改稿 (2020/01/01)
本編のみカクヨムさんでも公開しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる