16 / 36
15.夜会②
しおりを挟む
アイラ王女のドレスの色使いに私だけでなく周りの貴族達も驚きを隠せず、ざわついている。
『おい、あれを見ろ。隣のキャンベル伯爵の色を纏っているぞ』
『噂は聞いていたが…。王女は未婚で伯爵は既婚者だぞ。あそこまで大胆に主張するとはちょっと』
『いくらなんでもあれはない』
周りから挨拶を受けながら歩いているアイラ王女が纏っているドレスの色は私と同じエディの色だった。
---えっ、有り得ないわ。なんで公の場にそんな色を…。
その色が王女の婚約者の色とたまたま同じだったのなら問題はない。だが王女には未だ婚約者はおらず、その隣には噂の恋人を護衛という言い訳を使い侍らせている。そしてその色のドレスを周りに見せつける様に纏うなど…普通ならやらない。
ましてやアイラ王女は『王女という公式な立場』におり貴族のお手本となるべき存在である王族の一員だ。
それなのにキャンベル伯爵の妻も出席している夜会で、その妻を差し置いてエスコートをさせたうえ色まで纏っている行動に常識ある貴族達は眉を顰めている。もしこれが王女でなかったら誰かしらから『まるで淫売のようだ』と陰で言われてしまうほどの非常識な行動だった。
だがそんな周りの視線に気づかないのかアイラ王女は、同じ色を纏って一人で壁際に立つ私に見せつける様にエディの腕を引っ張り自分の傍に引き寄せる。
「さあ、エドワード踊りましょう」
「私は護衛を兼ねてこの場におりますので、他の者とお願いします」
「あら駄目よ。私はまだあの事件から立ち直っていないのよ。他の者の手など怖くて握れないわ。
それに護衛なんだから誰よりも私の近くにいてちょうだいな。夜会の間中は決して離れては駄目よ、私だけを見なさい。
これは大切な仕事なんだから真面目なお前は疎かになどしないでしょう?うふふ」
「……承知いたしました」
王女が顔を寄せてエディに何かを話した後、二人は手を取り優雅に踊り始める。
彼が一瞬こちらを見て目が合ったように感じたが、その後は私の方を見ることはなかった。
妻の存在など気にもならないのか護衛という名のエスコートに完璧に徹している。
英雄の妻が夫をアイラ王女に取られて壁の華になっている様子に満足したのか、周囲からの視線は厳しいものから憐れんだものに変化しているのを感じた。
どうやら平凡な私がそれにふさわしい境遇になったと判断し妬みや僻みが消えたらしい。…本当に勝手な人達だ。
『おい、あれを見ろ。隣のキャンベル伯爵の色を纏っているぞ』
『噂は聞いていたが…。王女は未婚で伯爵は既婚者だぞ。あそこまで大胆に主張するとはちょっと』
『いくらなんでもあれはない』
周りから挨拶を受けながら歩いているアイラ王女が纏っているドレスの色は私と同じエディの色だった。
---えっ、有り得ないわ。なんで公の場にそんな色を…。
その色が王女の婚約者の色とたまたま同じだったのなら問題はない。だが王女には未だ婚約者はおらず、その隣には噂の恋人を護衛という言い訳を使い侍らせている。そしてその色のドレスを周りに見せつける様に纏うなど…普通ならやらない。
ましてやアイラ王女は『王女という公式な立場』におり貴族のお手本となるべき存在である王族の一員だ。
それなのにキャンベル伯爵の妻も出席している夜会で、その妻を差し置いてエスコートをさせたうえ色まで纏っている行動に常識ある貴族達は眉を顰めている。もしこれが王女でなかったら誰かしらから『まるで淫売のようだ』と陰で言われてしまうほどの非常識な行動だった。
だがそんな周りの視線に気づかないのかアイラ王女は、同じ色を纏って一人で壁際に立つ私に見せつける様にエディの腕を引っ張り自分の傍に引き寄せる。
「さあ、エドワード踊りましょう」
「私は護衛を兼ねてこの場におりますので、他の者とお願いします」
「あら駄目よ。私はまだあの事件から立ち直っていないのよ。他の者の手など怖くて握れないわ。
それに護衛なんだから誰よりも私の近くにいてちょうだいな。夜会の間中は決して離れては駄目よ、私だけを見なさい。
これは大切な仕事なんだから真面目なお前は疎かになどしないでしょう?うふふ」
「……承知いたしました」
王女が顔を寄せてエディに何かを話した後、二人は手を取り優雅に踊り始める。
彼が一瞬こちらを見て目が合ったように感じたが、その後は私の方を見ることはなかった。
妻の存在など気にもならないのか護衛という名のエスコートに完璧に徹している。
英雄の妻が夫をアイラ王女に取られて壁の華になっている様子に満足したのか、周囲からの視線は厳しいものから憐れんだものに変化しているのを感じた。
どうやら平凡な私がそれにふさわしい境遇になったと判断し妬みや僻みが消えたらしい。…本当に勝手な人達だ。
84
お気に入りに追加
2,624
あなたにおすすめの小説

騎士の妻ではいられない
Rj
恋愛
騎士の娘として育ったリンダは騎士とは結婚しないと決めていた。しかし幼馴染みで騎士のイーサンと結婚したリンダ。結婚した日に新郎は非常召集され、新婦のリンダは結婚を祝う宴に一人残された。二年目の結婚記念日に戻らない夫を待つリンダはもう騎士の妻ではいられないと心を決める。
全23話。
2024/1/29 全体的な加筆修正をしました。話の内容に変わりはありません。
イーサンが主人公の続編『騎士の妻でいてほしい 』(https://www.alphapolis.co.jp/novel/96163257/36727666)があります。

結婚5年目の仮面夫婦ですが、そろそろ限界のようです!?
宮永レン
恋愛
没落したアルブレヒト伯爵家を援助すると声をかけてきたのは、成り上がり貴族と呼ばれるヴィルジール・シリングス子爵。援助の条件とは一人娘のミネットを妻にすること。
ミネットは形だけの結婚を申し出るが、ヴィルジールからは仕事に支障が出ると困るので外では仲の良い夫婦を演じてほしいと告げられる。
仮面夫婦としての生活を続けるうちに二人の心には変化が生まれるが……

[電子書籍化]好きな人が幸せならそれでいいと、そう思っていました。
はるきりょう
恋愛
『 好きな人が幸せならそれでいいと、そう思っていました。』がシーモアさんで、電子書籍化することになりました!!!!
本編(公開のものを加筆・校正)→後日談(公開のものを加筆・校正)→最新話→シーモア特典SSの時系列です。本編+後日談は約2万字弱加筆してあります!電子書籍読んでいただければ幸いです!!
※分かりずらいので、アダム視点もこちらに移しました!アダム視点のみは非公開にさせてもらいます。
オリビアは自分にできる一番の笑顔をジェイムズに見せる。それは本当の気持ちだった。強がりと言われればそうかもしれないけれど。でもオリビアは心から思うのだ。
好きな人が幸せであることが一番幸せだと。
「……そう。…君はこれからどうするの?」
「お伝えし忘れておりました。私、婚約者候補となりましたの。皇太子殿下の」
大好きな婚約者の幸せを願い、身を引いたオリビアが皇太子殿下の婚約者候補となり、新たな恋をする話。

旦那様は離縁をお望みでしょうか
村上かおり
恋愛
ルーベンス子爵家の三女、バーバラはアルトワイス伯爵家の次男であるリカルドと22歳の時に結婚した。
けれど最初の顔合わせの時から、リカルドは不機嫌丸出しで、王都に来てもバーバラを家に一人残して帰ってくる事もなかった。
バーバラは行き遅れと言われていた自分との政略結婚が気に入らないだろうと思いつつも、いずれはリカルドともいい関係を築けるのではないかと待ち続けていたが。

貴方が側妃を望んだのです
cyaru
恋愛
「君はそれでいいのか」王太子ハロルドは言った。
「えぇ。勿論ですわ」婚約者の公爵令嬢フランセアは答えた。
誠の愛に気がついたと言われたフランセアは微笑んで答えた。
※2022年6月12日。一部書き足しました。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。
史実などに基づいたものではない事をご理解ください。
※話の都合上、残酷な描写がありますがそれがざまぁなのかは受け取り方は人それぞれです。
表現的にどうかと思う回は冒頭に注意喚起を書き込むようにしますが有無は作者の判断です。
※更新していくうえでタグは幾つか増えます。
※作者都合のご都合主義です。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。

もっと傲慢でいてください、殿下。──わたしのために。
ふまさ
恋愛
「クラリス。すまないが、今日も仕事を頼まれてくれないか?」
王立学園に入学して十ヶ月が経った放課後。生徒会室に向かう途中の廊下で、この国の王子であるイライジャが、並んで歩く婚約者のクラリスに言った。クラリスが、ですが、と困ったように呟く。
「やはり、生徒会長であるイライジャ殿下に与えられた仕事ですので、ご自分でなされたほうが、殿下のためにもよろしいのではないでしょうか……?」
「そうしたいのはやまやまだが、側妃候補のご令嬢たちと、お茶をする約束をしてしまったんだ。ぼくが王となったときのためにも、愛想はよくしていた方がいいだろう?」
「……それはそうかもしれませんが」
「クラリス。まだぐだぐだ言うようなら──わかっているよね?」
イライジャは足を止め、クラリスに一歩、近付いた。
「王子であるぼくの命に逆らうのなら、きみとの婚約は、破棄させてもらうよ?」
こう言えば、イライジャを愛しているクラリスが、どんな頼み事も断れないとわかったうえでの脅しだった。現に、クラリスは焦ったように顔をあげた。
「そ、それは嫌です!」
「うん。なら、お願いするね。大丈夫。ぼくが一番に愛しているのは、きみだから。それだけは信じて」
イライジャが抱き締めると、クラリスは、はい、と嬉しそうに笑った。
──ああ。何て扱いやすく、便利な婚約者なのだろう。
イライジャはそっと、口角をあげた。
だが。
そんなイライジャの学園生活は、それから僅か二ヶ月後に、幕を閉じることになる。

笑わない妻を娶りました
mios
恋愛
伯爵家嫡男であるスタン・タイロンは、伯爵家を継ぐ際に妻を娶ることにした。
同じ伯爵位で、友人であるオリバー・クレンズの従姉妹で笑わないことから氷の女神とも呼ばれているミスティア・ドゥーラ嬢。
彼女は美しく、スタンは一目惚れをし、トントン拍子に婚約・結婚することになったのだが。

忙しい男
菅井群青
恋愛
付き合っていた彼氏に別れを告げた。忙しいという彼を信じていたけれど、私から別れを告げる前に……きっと私は半分捨てられていたんだ。
「私のことなんてもうなんとも思ってないくせに」
「お前は一体俺の何を見て言ってる──お前は、俺を知らな過ぎる」
すれ違う想いはどうしてこうも上手くいかないのか。いつだって思うことはただ一つ、愛おしいという気持ちだ。
※ハッピーエンドです
かなりやきもきさせてしまうと思います。
どうか温かい目でみてやってくださいね。
※本編完結しました(2019/07/15)
スピンオフ &番外編
【泣く背中】 菊田夫妻のストーリーを追加しました(2019/08/19)
改稿 (2020/01/01)
本編のみカクヨムさんでも公開しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる