10 / 36
9.裏の動き~キアヌ第一王子視点~①
しおりを挟む
コンコンコン。
王宮にある第一王子の執務室の扉を一人の男が静かに叩くと、返事を待たずに勝手に部屋のなかへと入っていく。
その男の無礼を咎めるものは1人もいない、なぜなら彼が来るから事前に人払いをしていたからだ。
「大変お待たせしました、キアヌ第一王子様」
男は臣下の礼を取り丁寧な口調で目の前にいる私に挨拶を述べる。この男はわざとこうしているのだ。私は苦虫を嚙み潰したような顔をして、
「よせジェームズ。二人だけの時にお前からそんな口調で話されると、背中がむず痒くなる。いつものようにやれ」
と言いながら本当に痒くなった背中を掻いていると、男は『ふっ、ああそうでしたね。忘れていました』と目を細めて嬉しそうにしている。
---まったくこいつという奴は…。クックック、面白い!
私が嫌がることをやって喜んでいるこの男は『第一王子の懐刀』と呼ばれている文官ジェームズ・アークで次期アーク伯爵でもある。
「はいはい、了解です」
途端に丁寧ではあるが友人に対する気軽な感じでジェームズは話し始める。
「駒はすべて揃っています。アイラ王女も予想通りといいますか見境なく貴方が用意した餌に食いつきましたね。本当にあの王女は雑食というか目についたお気に入りはすべて喰いたいんですかね。あんなに愚かで本当にキアヌ様の妹ですか?ハッハッハ」
半分本気、半分茶化して笑いながら報告をしてくる。すべて順調に進んでいるようだ。
アイラ第二王女は第一王子である私とは腹違いの兄妹だ。
今の陛下には正妃と側妃がおり、正妃は第一王女と第一王子を、側妃は第二王女を産んでいる。
正妃の子である私と他国にすでに嫁いでいる姉は王族として厳しく育てられたが、側妃の子である妹は側妃の手によって随分甘やかされて育っていた。
そんな妹の状況を苦々しく思っていたが、まさか愚かにも犯罪にまで手を染めるとは思ってもいなかった。
---まったく迷惑な奴だ、チッ。
あれの母親は伯爵家出身となっているが、市井育ちの女を側妃にするため形式を整えたに過ぎない。やはりあの側妃では王族を産んでも、王族に育てることは出来なかったようだ。
まあ王族の贅沢には慣れても、王族の義務なんか考えない側妃に育てられたのがあれの不幸だろう。
残念だが第二王女は王族としては欠陥品だ。見かけだけは美しいが中身は醜悪そのもの。そうなれば王位継承権第一位の私がやるべきことはだた一つ。
切り捨てるのみ。
---利になる事はなくても害にならなければ見逃してやろうと思っていたが、あれは駄目だ。周囲に毒を撒き散らし王家の威信に傷を付けている。
早急に処分しなくては…。
王宮にある第一王子の執務室の扉を一人の男が静かに叩くと、返事を待たずに勝手に部屋のなかへと入っていく。
その男の無礼を咎めるものは1人もいない、なぜなら彼が来るから事前に人払いをしていたからだ。
「大変お待たせしました、キアヌ第一王子様」
男は臣下の礼を取り丁寧な口調で目の前にいる私に挨拶を述べる。この男はわざとこうしているのだ。私は苦虫を嚙み潰したような顔をして、
「よせジェームズ。二人だけの時にお前からそんな口調で話されると、背中がむず痒くなる。いつものようにやれ」
と言いながら本当に痒くなった背中を掻いていると、男は『ふっ、ああそうでしたね。忘れていました』と目を細めて嬉しそうにしている。
---まったくこいつという奴は…。クックック、面白い!
私が嫌がることをやって喜んでいるこの男は『第一王子の懐刀』と呼ばれている文官ジェームズ・アークで次期アーク伯爵でもある。
「はいはい、了解です」
途端に丁寧ではあるが友人に対する気軽な感じでジェームズは話し始める。
「駒はすべて揃っています。アイラ王女も予想通りといいますか見境なく貴方が用意した餌に食いつきましたね。本当にあの王女は雑食というか目についたお気に入りはすべて喰いたいんですかね。あんなに愚かで本当にキアヌ様の妹ですか?ハッハッハ」
半分本気、半分茶化して笑いながら報告をしてくる。すべて順調に進んでいるようだ。
アイラ第二王女は第一王子である私とは腹違いの兄妹だ。
今の陛下には正妃と側妃がおり、正妃は第一王女と第一王子を、側妃は第二王女を産んでいる。
正妃の子である私と他国にすでに嫁いでいる姉は王族として厳しく育てられたが、側妃の子である妹は側妃の手によって随分甘やかされて育っていた。
そんな妹の状況を苦々しく思っていたが、まさか愚かにも犯罪にまで手を染めるとは思ってもいなかった。
---まったく迷惑な奴だ、チッ。
あれの母親は伯爵家出身となっているが、市井育ちの女を側妃にするため形式を整えたに過ぎない。やはりあの側妃では王族を産んでも、王族に育てることは出来なかったようだ。
まあ王族の贅沢には慣れても、王族の義務なんか考えない側妃に育てられたのがあれの不幸だろう。
残念だが第二王女は王族としては欠陥品だ。見かけだけは美しいが中身は醜悪そのもの。そうなれば王位継承権第一位の私がやるべきことはだた一つ。
切り捨てるのみ。
---利になる事はなくても害にならなければ見逃してやろうと思っていたが、あれは駄目だ。周囲に毒を撒き散らし王家の威信に傷を付けている。
早急に処分しなくては…。
70
お気に入りに追加
2,624
あなたにおすすめの小説

騎士の妻ではいられない
Rj
恋愛
騎士の娘として育ったリンダは騎士とは結婚しないと決めていた。しかし幼馴染みで騎士のイーサンと結婚したリンダ。結婚した日に新郎は非常召集され、新婦のリンダは結婚を祝う宴に一人残された。二年目の結婚記念日に戻らない夫を待つリンダはもう騎士の妻ではいられないと心を決める。
全23話。
2024/1/29 全体的な加筆修正をしました。話の内容に変わりはありません。
イーサンが主人公の続編『騎士の妻でいてほしい 』(https://www.alphapolis.co.jp/novel/96163257/36727666)があります。

結婚5年目の仮面夫婦ですが、そろそろ限界のようです!?
宮永レン
恋愛
没落したアルブレヒト伯爵家を援助すると声をかけてきたのは、成り上がり貴族と呼ばれるヴィルジール・シリングス子爵。援助の条件とは一人娘のミネットを妻にすること。
ミネットは形だけの結婚を申し出るが、ヴィルジールからは仕事に支障が出ると困るので外では仲の良い夫婦を演じてほしいと告げられる。
仮面夫婦としての生活を続けるうちに二人の心には変化が生まれるが……

[電子書籍化]好きな人が幸せならそれでいいと、そう思っていました。
はるきりょう
恋愛
『 好きな人が幸せならそれでいいと、そう思っていました。』がシーモアさんで、電子書籍化することになりました!!!!
本編(公開のものを加筆・校正)→後日談(公開のものを加筆・校正)→最新話→シーモア特典SSの時系列です。本編+後日談は約2万字弱加筆してあります!電子書籍読んでいただければ幸いです!!
※分かりずらいので、アダム視点もこちらに移しました!アダム視点のみは非公開にさせてもらいます。
オリビアは自分にできる一番の笑顔をジェイムズに見せる。それは本当の気持ちだった。強がりと言われればそうかもしれないけれど。でもオリビアは心から思うのだ。
好きな人が幸せであることが一番幸せだと。
「……そう。…君はこれからどうするの?」
「お伝えし忘れておりました。私、婚約者候補となりましたの。皇太子殿下の」
大好きな婚約者の幸せを願い、身を引いたオリビアが皇太子殿下の婚約者候補となり、新たな恋をする話。

旦那様は離縁をお望みでしょうか
村上かおり
恋愛
ルーベンス子爵家の三女、バーバラはアルトワイス伯爵家の次男であるリカルドと22歳の時に結婚した。
けれど最初の顔合わせの時から、リカルドは不機嫌丸出しで、王都に来てもバーバラを家に一人残して帰ってくる事もなかった。
バーバラは行き遅れと言われていた自分との政略結婚が気に入らないだろうと思いつつも、いずれはリカルドともいい関係を築けるのではないかと待ち続けていたが。

貴方が側妃を望んだのです
cyaru
恋愛
「君はそれでいいのか」王太子ハロルドは言った。
「えぇ。勿論ですわ」婚約者の公爵令嬢フランセアは答えた。
誠の愛に気がついたと言われたフランセアは微笑んで答えた。
※2022年6月12日。一部書き足しました。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。
史実などに基づいたものではない事をご理解ください。
※話の都合上、残酷な描写がありますがそれがざまぁなのかは受け取り方は人それぞれです。
表現的にどうかと思う回は冒頭に注意喚起を書き込むようにしますが有無は作者の判断です。
※更新していくうえでタグは幾つか増えます。
※作者都合のご都合主義です。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。

もっと傲慢でいてください、殿下。──わたしのために。
ふまさ
恋愛
「クラリス。すまないが、今日も仕事を頼まれてくれないか?」
王立学園に入学して十ヶ月が経った放課後。生徒会室に向かう途中の廊下で、この国の王子であるイライジャが、並んで歩く婚約者のクラリスに言った。クラリスが、ですが、と困ったように呟く。
「やはり、生徒会長であるイライジャ殿下に与えられた仕事ですので、ご自分でなされたほうが、殿下のためにもよろしいのではないでしょうか……?」
「そうしたいのはやまやまだが、側妃候補のご令嬢たちと、お茶をする約束をしてしまったんだ。ぼくが王となったときのためにも、愛想はよくしていた方がいいだろう?」
「……それはそうかもしれませんが」
「クラリス。まだぐだぐだ言うようなら──わかっているよね?」
イライジャは足を止め、クラリスに一歩、近付いた。
「王子であるぼくの命に逆らうのなら、きみとの婚約は、破棄させてもらうよ?」
こう言えば、イライジャを愛しているクラリスが、どんな頼み事も断れないとわかったうえでの脅しだった。現に、クラリスは焦ったように顔をあげた。
「そ、それは嫌です!」
「うん。なら、お願いするね。大丈夫。ぼくが一番に愛しているのは、きみだから。それだけは信じて」
イライジャが抱き締めると、クラリスは、はい、と嬉しそうに笑った。
──ああ。何て扱いやすく、便利な婚約者なのだろう。
イライジャはそっと、口角をあげた。
だが。
そんなイライジャの学園生活は、それから僅か二ヶ月後に、幕を閉じることになる。

笑わない妻を娶りました
mios
恋愛
伯爵家嫡男であるスタン・タイロンは、伯爵家を継ぐ際に妻を娶ることにした。
同じ伯爵位で、友人であるオリバー・クレンズの従姉妹で笑わないことから氷の女神とも呼ばれているミスティア・ドゥーラ嬢。
彼女は美しく、スタンは一目惚れをし、トントン拍子に婚約・結婚することになったのだが。

忙しい男
菅井群青
恋愛
付き合っていた彼氏に別れを告げた。忙しいという彼を信じていたけれど、私から別れを告げる前に……きっと私は半分捨てられていたんだ。
「私のことなんてもうなんとも思ってないくせに」
「お前は一体俺の何を見て言ってる──お前は、俺を知らな過ぎる」
すれ違う想いはどうしてこうも上手くいかないのか。いつだって思うことはただ一つ、愛おしいという気持ちだ。
※ハッピーエンドです
かなりやきもきさせてしまうと思います。
どうか温かい目でみてやってくださいね。
※本編完結しました(2019/07/15)
スピンオフ &番外編
【泣く背中】 菊田夫妻のストーリーを追加しました(2019/08/19)
改稿 (2020/01/01)
本編のみカクヨムさんでも公開しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる