英雄の平凡な妻

矢野りと

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5.話しあい①

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真夜中であったが数日ぶりにエディが屋敷に帰って来てくれた。

私はそれだけで嬉しくて仕方がなかった。これであの噂のことを聞けて、全てが解決すると信じていたから。

疲れている様子の彼に気を遣いつつも夫婦間の問題を先送りにしないために勇気を出してについて聞いてみることにした。

「あのね、ちょっと聞きたい事があるのだけどいいかしら?」

「なんだいキャッシー」

いつもと何ら変わりない様子の夫に安堵し、さり気なく話を切り出してみる。

「最近お茶会などでアイラ王女と貴方の噂を耳にするの。本当にね、馬鹿げた噂なんだけどエディが王女の新しい恋人だと言うのよ。可笑しいでしょう?
あっ、でも私はそんな噂を信じていないわよ。でも最近の貴方は帰宅も真夜中だし、帰らない事もあるでしょう…。ちょっとだけ気になってしまって…何しているのかなって…」

「ただの仕事だよ」

エディはそれしか言わず、私と目も合わせない。これまでの彼ならどんなつまらない話でも目を見て答えていてくれたのに…。それは結婚して初めて感じた違和感でもあった。
彼の返事に納得が出来なくて更に質問を続けた。

「では騎士団の副団長である貴方がアイラ王女の護衛だけをしているのは本当なの?
その為に王宮に私室まで与えられて、帰宅しない日はそこで寝泊まりしているのも事実なの?」

「…それは事実だ」

彼はこれ以上訊かれたくないようで、話を終わらせようとするかのように私を抱き締めようとする。

「もうつまらない話は止めよう。久しぶりに会えたのだからキャッシーとの時間を大切にしたい」

---誤魔化そうとしないで!
私は彼の逞しい胸を両手で押しやり、あれほど求めていたはずの抱擁を拒絶してしまう。そんな私の態度に彼も驚いたような表情をする。

「でもそれはおかしいわよね…。エディは騎士団の副団長で王女の専属護衛ではないのになぜ?それに当番制ならいざ知らず、24時間付きっきりの護衛なんて有り得ないでしょう!」

「今回はそういう仕事なんだ」

エディは下を向いてそれしか言ってくれない。

「それを信じろと言うの…。
奔放なアイラ王女の噂は私でも以前から知っているわ。お気に入りの騎士や文官を自分付きにして逢瀬を楽しんでいるって。その噂は事実よね?」

「…ああ」

エディは嘘を吐かない、その彼が以前からある王女の噂を認めた。
それならと私は恐る恐る新しい噂についても訊ねてみる。

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