英雄の平凡な妻

矢野りと

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4.お茶会①

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夫であるエディが英雄扱いされるようになってから、私を取り巻く状況は変わってしまった。それまでは伯爵夫人として社交に出ても特に目立つ存在ではない平凡な私はというものとは無縁でいられた。

でも今はとても微妙な立場にいる…。
この口さがない貴族社会で噂の標的にされているのだ。

だが辛いからと言って社交を断るわけにもいかず今日も招待されたお茶会に出席している。あちこちから好奇に満ちた視線を感じるが気づかないふりをしてお茶を飲んでいると、そんな私の態度に痺れを切らした夫人達からにこやかに声を掛けられた。

「あら、美しい方がいらっしゃると思えばキャンベル伯爵夫人ではないですか。英雄の奥様になられると耀きが増しますわね。
ぜひこれからは英雄の対となるような社交界一の華としてご活躍くださいな」

社交界の薔薇と例えられるその人は痛烈な言葉をぶつけてくる。

「いいえとんでもない、私では力不足もいいとこでございますわ。主人の働きが認められ妻として大変に嬉しく思っておりますが、私は何も変わっておりませんから」

特に目立つほど美人でもなく実家の爵位も伯爵でしかない私が英雄の妻の座にいる事をよく思っていない人は少なくない。そういう人達はまず私の平凡な容姿を貶めてくる。…攻撃しやすいからだ。
呆れるほど幼稚な作戦だが実際に何度も言われると逃げ出したくなる。

『キャサリン・キャンベルはただの伯爵夫人なら問題にされないが、『英雄の妻』としては平凡過ぎて相応しくない』それが最近の私の評価だ…。

---エディと結婚したのであって、英雄だから結婚した訳ではないのに周りの評価は勝手だわ。


でもなんとか笑顔を保ったまま平気なふりをする。それも伯爵夫人としての務めだし、彼らに落ち込んでいる姿を見せて喜ばせたくなんてない。

「そういえば最近キャンベル伯爵様は大層お忙しいようですわね。なんでも王宮に私室まで与えられアイラ王女様の護衛にあたっているとか」

「ええ夫は仕事の手を抜かない真面目な人ですから。妻としてそんな夫を誇りに思っていますわ」

「ふふふ真面目ね~。でも24時間べったりと護衛されているのでしょう。屋敷にもほとんど帰らないなんてどんなにハードなお仕事なんでしょう。私だったら色んな意味で心配になってしまいますわ。妻として詳細な内容を聞いた方が良いのではなくて?」

私の容姿を貶めた後に必ず始まるあの噂に関する当て擦り…。心配?何を言っているの、そんなに嬉しそうな顔をして。

「ただの護衛の仕事だと聞いております。確かに健康面では心配していますが、夫は鍛えていますから大丈夫かと思っていますわ」

私が動揺せずに淡々と答えると、それが気に入らないようで相手は更に過激な事を口にしてくる。
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