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1.孤独
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ボーンボーンボーンーーー。
時計の針が真夜中を指しており、使用人達もみな寝静まっていてる。今この屋敷の中で起きているのはきっと女主人である私だけだろう…。
夫婦の寝室にある大きなベットの中にいるが眠ることが出来ずに、ベット脇にあるランプに灯をともし大好きな本を手に取っている。だがそのページはほとんど進んではいない、さっきから同じ個所を何度も読んでいる…なぜなら頭の中に入ってこないからだ。
その代わり何度も空いたままの隣を見て『はぁ‥‥』と深いため息を吐いている。
考えてもどうしようもない事なのに。頭の中に浮かんでくるのは隣にいない夫のことばかりだ。
---あの人は今どこで何をしているのかしら‥‥。
つい三か月前まではこの大きなベットには常に私と夫であるエディが一緒にいた。大柄な彼が横にいると大きなベットも小さく思えたがその狭さがなんとも心地よく感じて嬉しかった。二人で寝る前にお互いに一日何があったか語り合い、そして愛を結びお互いの温もりを感じながら朝まで寄り添って寝ていたのだ。
それが当たり前の日常であり、死が二人を別つまで続くものだと思っていた。
だけど最近は隣に彼がいる事の方が少なくなっている。
帰宅時間も真夜中になる事が多くなり朝も早くに出て行ってしまうので会話をする時間さえほとんどない。そのうえ月の半分は王宮に与えられた私室で寝泊まりするようになっていた。
夫の事は愛しているし信じたいけれども、こんな日が続くとあの噂を思い出さずにはいられない。
---なんでこんなことになってしまったのか…。
やるせない気持ちを抱えたまま、彼とお揃いの結婚指輪に口づけを落とし『エディ愛しているわ…』と呟いていた。
エドワードはキャンベル伯爵家嫡男で、私キャサリンはアーク伯爵家息女であり、領地が隣同士であったので仲の良い幼馴染みでもあった。燃え上るような恋愛ではなかったけど、お互いに子供の頃から好きで自然と婚約を結んだ。
その後彼は王国の騎士団に所属しながら若くして伯爵位を継ぐやいなや、婚約者の私に『俺の妻になってくれ』とすぐさま求婚をしてきた。
ムードもないぶっきら棒な言葉だったけれど、その目には間違えようがなく愛情が溢れていたから『はい♪』と笑いながら嬉し涙を流して受け入れた。
---それにね、何回も練習していたのは知っていたのよ。お兄様がこっそりと『俺がお前の役を何度もやらされたんだぞ。正直吐きそうだった』教えてくれていたから。
それを聞いて本当に嬉しかったの。
両家とも同格の伯爵家であり二人とも特別に目立つ存在ではなかったので、『ちょっと待った!』などと横やりが入ることなく婚姻は結ばれ、平凡だけど幸せだと感じる毎日を送っていた。
強いて言えばエディが基本無口で甘い言葉を囁かないことに物足りなさを感じることもあったけど、『エディ愛しているわ』と言えば、『ああ』と短い言葉と共に深い愛情のこもった口付けをしてくれるので彼の気持ちを疑う余地などなかった。
そして一年前には跡継ぎのルイにも恵まれ、本当に絵に描いたように幸せな家庭を築けていたはずだった。
---それなのに…。
突然そんな生活が変わってしまったのだ。それは三ヶ月前のある出来事がきっかけだった‥‥。
時計の針が真夜中を指しており、使用人達もみな寝静まっていてる。今この屋敷の中で起きているのはきっと女主人である私だけだろう…。
夫婦の寝室にある大きなベットの中にいるが眠ることが出来ずに、ベット脇にあるランプに灯をともし大好きな本を手に取っている。だがそのページはほとんど進んではいない、さっきから同じ個所を何度も読んでいる…なぜなら頭の中に入ってこないからだ。
その代わり何度も空いたままの隣を見て『はぁ‥‥』と深いため息を吐いている。
考えてもどうしようもない事なのに。頭の中に浮かんでくるのは隣にいない夫のことばかりだ。
---あの人は今どこで何をしているのかしら‥‥。
つい三か月前まではこの大きなベットには常に私と夫であるエディが一緒にいた。大柄な彼が横にいると大きなベットも小さく思えたがその狭さがなんとも心地よく感じて嬉しかった。二人で寝る前にお互いに一日何があったか語り合い、そして愛を結びお互いの温もりを感じながら朝まで寄り添って寝ていたのだ。
それが当たり前の日常であり、死が二人を別つまで続くものだと思っていた。
だけど最近は隣に彼がいる事の方が少なくなっている。
帰宅時間も真夜中になる事が多くなり朝も早くに出て行ってしまうので会話をする時間さえほとんどない。そのうえ月の半分は王宮に与えられた私室で寝泊まりするようになっていた。
夫の事は愛しているし信じたいけれども、こんな日が続くとあの噂を思い出さずにはいられない。
---なんでこんなことになってしまったのか…。
やるせない気持ちを抱えたまま、彼とお揃いの結婚指輪に口づけを落とし『エディ愛しているわ…』と呟いていた。
エドワードはキャンベル伯爵家嫡男で、私キャサリンはアーク伯爵家息女であり、領地が隣同士であったので仲の良い幼馴染みでもあった。燃え上るような恋愛ではなかったけど、お互いに子供の頃から好きで自然と婚約を結んだ。
その後彼は王国の騎士団に所属しながら若くして伯爵位を継ぐやいなや、婚約者の私に『俺の妻になってくれ』とすぐさま求婚をしてきた。
ムードもないぶっきら棒な言葉だったけれど、その目には間違えようがなく愛情が溢れていたから『はい♪』と笑いながら嬉し涙を流して受け入れた。
---それにね、何回も練習していたのは知っていたのよ。お兄様がこっそりと『俺がお前の役を何度もやらされたんだぞ。正直吐きそうだった』教えてくれていたから。
それを聞いて本当に嬉しかったの。
両家とも同格の伯爵家であり二人とも特別に目立つ存在ではなかったので、『ちょっと待った!』などと横やりが入ることなく婚姻は結ばれ、平凡だけど幸せだと感じる毎日を送っていた。
強いて言えばエディが基本無口で甘い言葉を囁かないことに物足りなさを感じることもあったけど、『エディ愛しているわ』と言えば、『ああ』と短い言葉と共に深い愛情のこもった口付けをしてくれるので彼の気持ちを疑う余地などなかった。
そして一年前には跡継ぎのルイにも恵まれ、本当に絵に描いたように幸せな家庭を築けていたはずだった。
---それなのに…。
突然そんな生活が変わってしまったのだ。それは三ヶ月前のある出来事がきっかけだった‥‥。
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