すべてはあなたの為だった~狂愛~

矢野りと

文字の大きさ
上 下
14 / 26

14.悪夢~エリザベス視点~

しおりを挟む
私の眠りは深くこれまで夢を見ることはほとんどなかった。ましてや悪夢なんて一度だって見たことはなかったのに、ここ一ヶ月ほどは頻繁に見るようになっていた。

考えられる原因はアレクの裏切りか…。

思い返せばあの事実を知る少し前から見ていたような気もする。
もしかしたら何も知らなかったけど、無意識にアレクの不自然さを感じ取っていたのかもしれない。

 そういえばあの時、朧気に覚えていた嫌な夢が現実になったと感じたのよね…。


人は気になっている事柄が夢にまで現れてしまうと言われていたので、気にしないようにしていた。

 …偶々あの時は夢と現実が重なっただけだわ。

悪夢とはいえただの夢、現実とは違うから大丈夫だと思っていた。

最初は…。

でも意味のないと思われた悪夢の断片を繋ぎ合わせると、意味が生まれた…。

それは予知夢であった。

 えっ…。私は起こるかもしれない未来の断片を夢で見ているの…?

夢で見たことがいつ起こるかも分からないし、起きたのか分からないものも多々あるが、偶然で片づけられないほど一致していることがあった。

そしてそれはほとんど嫌なことだった…。

最初は『気のせいだ』『神経質になっているだけだ』と思い込もうとしたが…より鮮明になっていく夢を予知夢だと認めるのに時間は掛からなかった。

次に浮かんだ疑問はなぜ私が?ということだった。

力のある魔術師の中には予知夢を見る能力を有していた者が過去にいたようだが、私には魔力はない。
魔力は生まれ持ってのものだから、大人になって急に魔力が芽生えることはないはずだ。

 一体なにが起こっているの…。

違和感はそれだけではなかった。
最近、疲れている事が多く食欲も落ちている。
以前より眠気を感じ、味覚も変化している。てっきりストレスや疲れから来る不調だと思っていたが…。

 ‥‥でもそれが違っていたとしたら?
 他の要因によって起きていたとしたら‥‥。

 まさか、そんな…ことって‥‥。

私はお腹に手を当て茫然としていた。
 
 赤ちゃんが出来たの…。
 三年間を出来なかったのに、今…?

まだ確信はないけれどもそう考えるのが自然に思えた。アレクの血を引く我が子が膨大な魔力を備えていて、その子が見ている予知夢?を母体である私も偶々見れているような状況なのだろうか。

愛おしい人との愛の結晶がこの身に宿っていると思うとじんわりと温かい気持ちになってくる。
お腹に向かって『来てくれてありがとう』と優しく語り掛けると涙が流れてきた。

素直な喜びと共に抑えることが出来ない不安。
 

 これまで見た夢はすべて起こるの?
 予知夢が本当になったら…どうすればいいの…。
 
 あれだけは駄目だわ。何としても止めなくては。
 でもどうすればいいの…予知夢は変えられるのか…。

分からない事が多すぎる。

私が、いいえ、この子が見る夢は不安定で断片的だ。後から繋ぎ合わせて、ああこの事だったんだとは知る事が出来るが、それを事前に繋ぎ合わせいつどんな状況で起きるのかを理解するのは難しい‥‥。

 そうよね。この子はまだ胎児ですもの。
 それでも一生懸命頑張って私に伝えようとしてくれているのよね。
 ありがとう、私の赤ちゃん。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

元妻からの手紙

きんのたまご
恋愛
家族との幸せな日常を過ごす私にある日別れた元妻から一通の手紙が届く。

皇太子夫妻の歪んだ結婚 

夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。 その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。 本編完結してます。 番外編を更新中です。

お飾りな妻は何を思う

湖月もか
恋愛
リーリアには二歳歳上の婚約者がいる。 彼は突然父が連れてきた少年で、幼い頃から美しい人だったが歳を重ねるにつれてより美しさが際立つ顔つきに。 次第に婚約者へ惹かれていくリーリア。しかし彼にとっては世間体のための結婚だった。 そんなお飾り妻リーリアとその夫の話。

【完結】婚約破棄はお受けいたしましょう~踏みにじられた恋を抱えて

ゆうぎり
恋愛
「この子がクラーラの婚約者になるんだよ」 お父様に連れられたお茶会で私は一つ年上のナディオ様に恋をした。 綺麗なお顔のナディオ様。優しく笑うナディオ様。 今はもう、私に微笑みかける事はありません。 貴方の笑顔は別の方のもの。 私には忌々しげな顔で、視線を向けても貰えません。 私は厭われ者の婚約者。社交界では評判ですよね。 ねぇナディオ様、恋は花と同じだと思いませんか? ―――水をやらなければ枯れてしまうのですよ。 ※ゆるゆる設定です。 ※名前変更しました。元「踏みにじられた恋ならば、婚約破棄はお受けいたしましょう」 ※多分誰かの視点から見たらハッピーエンド

(完)イケメン侯爵嫡男様は、妹と間違えて私に告白したらしいー婚約解消ですか?嬉しいです!

青空一夏
恋愛
私は学園でも女生徒に憧れられているアール・シュトン候爵嫡男様に告白されました。 図書館でいきなり『愛している』と言われた私ですが、妹と勘違いされたようです? 全5話。ゆるふわ。

【完結】さよなら私の初恋

山葵
恋愛
私の婚約者が妹に見せる笑顔は私に向けられる事はない。 初恋の貴方が妹を望むなら、私は貴方の幸せを願って身を引きましょう。 さようなら私の初恋。

どうやら貴方の隣は私の場所でなくなってしまったようなので、夜逃げします

皇 翼
恋愛
侯爵令嬢という何でも買ってもらえてどんな教育でも施してもらえる恵まれた立場、王太子という立場に恥じない、童話の王子様のように顔の整った婚約者。そして自分自身は最高の教育を施され、侯爵令嬢としてどこに出されても恥ずかしくない教養を身につけていて、顔が綺麗な両親に似たのだろう容姿は綺麗な方だと思う。 完璧……そう、完璧だと思っていた。自身の婚約者が、中庭で公爵令嬢とキスをしているのを見てしまうまでは――。

さよなら私の愛しい人

ペン子
恋愛
由緒正しき大店の一人娘ミラは、結婚して3年となる夫エドモンに毛嫌いされている。二人は親によって決められた政略結婚だったが、ミラは彼を愛してしまったのだ。邪険に扱われる事に慣れてしまったある日、エドモンの口にした一言によって、崩壊寸前の心はいとも簡単に砕け散った。「お前のような役立たずは、死んでしまえ」そしてミラは、自らの最期に向けて動き出していく。 ※5月30日無事完結しました。応援ありがとうございます! ※小説家になろう様にも別名義で掲載してます。

処理中です...