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4.別れの記憶
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『捨てた過去はわすれろ』と言い募る父母を振り返ることなく、俺はサラのいない邸宅に戻った。
帰宅した俺を見ても執事は何も聞かず丁寧に出迎えてくれた。だが強い酒を用意したところをみると、俺が公爵家で真実を知ったことは察しているんだろう。
自室で一人浴びる様に酒を飲んでいたら、別れた日の記憶の靄が取れてきた…。
*****************************
サラとの別れの準備をし浮かれている馬鹿な俺、魅了に囚われて他の女に夢中になっていた愚か者。
弁護士と公爵夫妻まで呼んで、サラを追い詰める準備を楽しんでいる。
『やめろ、なにをやっているんだ。サラを傷つけるな』この叫びは過去の俺には届かない。
落ち込んだ表情のサラが罠を張った部屋に入ってくる。いつでも俺に笑いかけていた彼女にこんな表情をさせているのは俺なんだ。毎日深夜に帰宅し、他の女への心変わりを隠すことなく見せつけ別れを迫っていた。
『サラ違う。俺は心変わりなんてしていない。愛しているのは君だけなんだ』
だが魅了されたのは他でもない俺の落ち度だ。
あの日あの女にブレスレットを外して見せて欲しいと言われたが俺は決して外さなかった。けれども第一王子にそれぐらい見せてやれと命令され、反抗し揉めるのが馬鹿らしくそれに従って外したのは俺自身だ。
『なんて愚かな事をしてしまったんだ。あの時断っていれば…』
あんなに情熱的な恋をして、まだ学生だったサラに何度もプロポーズをして結婚をしたのに、俺はなぜかそれを忘れていた。魅了に掛かりそんな大切な事も思い出さずにサラを切り捨てようと署名を迫っていた。
俺が怪我をして婚姻届を代筆してもらった事実を偽造という犯罪にでっち上げ、みんなでサラを追い詰めている。
俺の言葉や義父母の態度にサラの表情は絶望に染まっていく。
『ああ、こんな表情をさせるなんて。サラにはそんな顔は似合わない…』
サラは家族をとても大切にしている。その実家を盾に脅しを掛けたらサラは震える手で泣きながら婚姻無効の書類に署名をした。
『駄目だ。それに署名しないでくれ。俺との関係を絶たないでくれ…』
違う、俺がサラとの関係を絶ったのだ。それも離縁ではなく婚姻無効という最低の形で。
俺が酷いセリフを投げつけている。【後悔はこの結婚自体だ、それにお前と婚姻関係が続くのが苦しみなんだ】
『なにを言ってるんだ。この結婚が俺を幸せに導き、婚姻関係の継続はいつか子供が生まれ更なる幸せへの道だというのに』
サラは俺を最後まで愛していると言ってくれていた。そして俺を心配し、最後には俺が選んだ道を尊重すると言っていた。
『聡いサラには分かっていたのだろう。俺が何かに囚われている事に。それを踏まえて【俺の選んだ道を尊重する】と言ったのか?ではサラは全てを諦め受け入れたという事なのか…』
二年前、あんなに尽くしてくれた妻を俺は非情にも身一つで追い出していた。
そして明るい未来を信じ祝杯をあげていた。サラとの結婚生活をあろうことか汚点扱いし、すべて抹消していた。
『あーー。最愛の人とのすべてを無かった事にしたなんて。過去に戻れるものなら、過去の自分を間違いなく殺してやる。サラを傷つける者はたとえ自分でも許さない』
二年前は愚かにも祝杯をあげ、今は後悔に苛まれ酒を浴びるほど飲んでいる。
…サラ必ず君の心を取り戻して見せる。その為なら俺はどんなことでもやれるだろう。
帰宅した俺を見ても執事は何も聞かず丁寧に出迎えてくれた。だが強い酒を用意したところをみると、俺が公爵家で真実を知ったことは察しているんだろう。
自室で一人浴びる様に酒を飲んでいたら、別れた日の記憶の靄が取れてきた…。
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サラとの別れの準備をし浮かれている馬鹿な俺、魅了に囚われて他の女に夢中になっていた愚か者。
弁護士と公爵夫妻まで呼んで、サラを追い詰める準備を楽しんでいる。
『やめろ、なにをやっているんだ。サラを傷つけるな』この叫びは過去の俺には届かない。
落ち込んだ表情のサラが罠を張った部屋に入ってくる。いつでも俺に笑いかけていた彼女にこんな表情をさせているのは俺なんだ。毎日深夜に帰宅し、他の女への心変わりを隠すことなく見せつけ別れを迫っていた。
『サラ違う。俺は心変わりなんてしていない。愛しているのは君だけなんだ』
だが魅了されたのは他でもない俺の落ち度だ。
あの日あの女にブレスレットを外して見せて欲しいと言われたが俺は決して外さなかった。けれども第一王子にそれぐらい見せてやれと命令され、反抗し揉めるのが馬鹿らしくそれに従って外したのは俺自身だ。
『なんて愚かな事をしてしまったんだ。あの時断っていれば…』
あんなに情熱的な恋をして、まだ学生だったサラに何度もプロポーズをして結婚をしたのに、俺はなぜかそれを忘れていた。魅了に掛かりそんな大切な事も思い出さずにサラを切り捨てようと署名を迫っていた。
俺が怪我をして婚姻届を代筆してもらった事実を偽造という犯罪にでっち上げ、みんなでサラを追い詰めている。
俺の言葉や義父母の態度にサラの表情は絶望に染まっていく。
『ああ、こんな表情をさせるなんて。サラにはそんな顔は似合わない…』
サラは家族をとても大切にしている。その実家を盾に脅しを掛けたらサラは震える手で泣きながら婚姻無効の書類に署名をした。
『駄目だ。それに署名しないでくれ。俺との関係を絶たないでくれ…』
違う、俺がサラとの関係を絶ったのだ。それも離縁ではなく婚姻無効という最低の形で。
俺が酷いセリフを投げつけている。【後悔はこの結婚自体だ、それにお前と婚姻関係が続くのが苦しみなんだ】
『なにを言ってるんだ。この結婚が俺を幸せに導き、婚姻関係の継続はいつか子供が生まれ更なる幸せへの道だというのに』
サラは俺を最後まで愛していると言ってくれていた。そして俺を心配し、最後には俺が選んだ道を尊重すると言っていた。
『聡いサラには分かっていたのだろう。俺が何かに囚われている事に。それを踏まえて【俺の選んだ道を尊重する】と言ったのか?ではサラは全てを諦め受け入れたという事なのか…』
二年前、あんなに尽くしてくれた妻を俺は非情にも身一つで追い出していた。
そして明るい未来を信じ祝杯をあげていた。サラとの結婚生活をあろうことか汚点扱いし、すべて抹消していた。
『あーー。最愛の人とのすべてを無かった事にしたなんて。過去に戻れるものなら、過去の自分を間違いなく殺してやる。サラを傷つける者はたとえ自分でも許さない』
二年前は愚かにも祝杯をあげ、今は後悔に苛まれ酒を浴びるほど飲んでいる。
…サラ必ず君の心を取り戻して見せる。その為なら俺はどんなことでもやれるだろう。
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