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17.幸せはどこに①
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気づくと離縁からあっという間に7年の歳月が過ぎていた。ドエイン商会は貴族達との取引はすべてなくなり、平民相手に細々と商売を続けている状態だった。そんなある日、商会の仲間から驚くほど良い話を貰った。
「今度、近くの貴族のお屋敷でお茶会が開催されるんだが、新商品の紹介の為に特別に商人も入ることが許されているんだ。参加する予定だった商人が急遽行けなくなったから参加枠が一人空いているんだよ。どうだ、トーマスも一緒に参加しないか」
「もちろん、参加させてもらう。商品を気に入ってもらえるチャンスを逃がすわけにいかないからな!」
平民相手に細々と取引をしているドエイン商会には貴族との新たな繋がりは喉から手が出るほど欲しいものだった。また貴族との繋がりが出来れば商会も立ち直ることが出来るかもしれないからだ。
『このチャンスを絶対にものにして、活気あるドエイン商会を取り戻してやる!』と久しぶりに商人としてのやる気が漲るのを感じていた。
そして当日、たくさんの新商品を持参して商人仲間と共に貴族のお茶会に乗り込んでいった。
お茶会には新商品が見られるとあって流行に敏感な貴族が大勢参加していて、昼間なので子供連れの貴族も多かった。
『こんなことなら子供向けの商品をもっと持って来れば良かったな』と自分の準備不足を後悔していると、ふとどこかで見覚えのある顔をした一人の少女が目に入った。
その横顔は若い頃の元妻によく似ていたので、上質なドレスを着ているその少女を自然と目で追いかけてしまっていた。すると少女は小さな子供を抱いている貴族女性に近づき、手に持っている綺麗な髪飾りを見せて楽し気に話し掛けていた。その女性の顔を見てみると、7年前に離縁した元妻イザベラだった。
(あれはイザベラだ!綺麗なドレスで着飾っているけどベラに間違いない!それならあの綺麗な子は俺の娘のアイリスか、あんなに大きくなって。ハッハッハやっと会えたぞ)
俺はこの奇跡的な出会いを神に感謝し、歓喜していた。急遽参加する事になったこの場でイザベラとアイリスに会えるなんて運命を感じずにはいられなかった。
(やはり神は俺を見捨ててなかったんだ。俺達の絆は切れてなかった!二人は俺に会って驚くだろうな)
俺は7年ぶりに会う二人にどうやって話し掛けようか考えていると、10代後半に見える青年貴族から突然声を掛けられた。
「ドエイン商会はなかなか良い商品をお持ちのようですね」
「お褒め頂き有り難うございます。私はドエイン商会のトーマス・ドエインです、宜しくお願い致します」
「ええ、勿論よく知っていますよ。私はユニ伯爵家嫡男のガインです」
ユニ伯爵家といえば財力もあるうえに由緒正しい伯爵家として有名だった。そのユニ伯爵家の子息から偶然にも声を掛けて貰うなど、平民相手の商会としては大変光栄なことだった。俺はその幸運に舞い上がり、今日のお茶会に誘ってくれた仲間に心の底から感謝をしていた。
奇跡や偶然なんてそう起こるものではない、俺は自分の強運を神に感謝し素直に喜んでいた。
(辛い事ばかりの毎日とおさらばしてやる。真面目にやってきた俺には、やはり明るい未来があるんだな)
「今度、近くの貴族のお屋敷でお茶会が開催されるんだが、新商品の紹介の為に特別に商人も入ることが許されているんだ。参加する予定だった商人が急遽行けなくなったから参加枠が一人空いているんだよ。どうだ、トーマスも一緒に参加しないか」
「もちろん、参加させてもらう。商品を気に入ってもらえるチャンスを逃がすわけにいかないからな!」
平民相手に細々と取引をしているドエイン商会には貴族との新たな繋がりは喉から手が出るほど欲しいものだった。また貴族との繋がりが出来れば商会も立ち直ることが出来るかもしれないからだ。
『このチャンスを絶対にものにして、活気あるドエイン商会を取り戻してやる!』と久しぶりに商人としてのやる気が漲るのを感じていた。
そして当日、たくさんの新商品を持参して商人仲間と共に貴族のお茶会に乗り込んでいった。
お茶会には新商品が見られるとあって流行に敏感な貴族が大勢参加していて、昼間なので子供連れの貴族も多かった。
『こんなことなら子供向けの商品をもっと持って来れば良かったな』と自分の準備不足を後悔していると、ふとどこかで見覚えのある顔をした一人の少女が目に入った。
その横顔は若い頃の元妻によく似ていたので、上質なドレスを着ているその少女を自然と目で追いかけてしまっていた。すると少女は小さな子供を抱いている貴族女性に近づき、手に持っている綺麗な髪飾りを見せて楽し気に話し掛けていた。その女性の顔を見てみると、7年前に離縁した元妻イザベラだった。
(あれはイザベラだ!綺麗なドレスで着飾っているけどベラに間違いない!それならあの綺麗な子は俺の娘のアイリスか、あんなに大きくなって。ハッハッハやっと会えたぞ)
俺はこの奇跡的な出会いを神に感謝し、歓喜していた。急遽参加する事になったこの場でイザベラとアイリスに会えるなんて運命を感じずにはいられなかった。
(やはり神は俺を見捨ててなかったんだ。俺達の絆は切れてなかった!二人は俺に会って驚くだろうな)
俺は7年ぶりに会う二人にどうやって話し掛けようか考えていると、10代後半に見える青年貴族から突然声を掛けられた。
「ドエイン商会はなかなか良い商品をお持ちのようですね」
「お褒め頂き有り難うございます。私はドエイン商会のトーマス・ドエインです、宜しくお願い致します」
「ええ、勿論よく知っていますよ。私はユニ伯爵家嫡男のガインです」
ユニ伯爵家といえば財力もあるうえに由緒正しい伯爵家として有名だった。そのユニ伯爵家の子息から偶然にも声を掛けて貰うなど、平民相手の商会としては大変光栄なことだった。俺はその幸運に舞い上がり、今日のお茶会に誘ってくれた仲間に心の底から感謝をしていた。
奇跡や偶然なんてそう起こるものではない、俺は自分の強運を神に感謝し素直に喜んでいた。
(辛い事ばかりの毎日とおさらばしてやる。真面目にやってきた俺には、やはり明るい未来があるんだな)
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