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7.夫の浮気
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ある日、年齢が近くて仲良くしている従業員の一人からトーマスの素行が怪しいと忠告を受けた。最近商会で働きだした綺麗な女性従業員と浮気をしているようだと言われたのだ。だけど私はその時、夫が浮気をするはずないと思って真剣に聞くことはなかった。
だって彼を愛していたし信じていたから。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
私とトーマスは子爵家の長女と出入りの商人として出会った。トーマスはドエイン商会の跡継ぎであったが平民ということもあり、私と彼との間には超えられない壁があり、深い会話などしたことはなかった。
ある日、私が町の孤児院を訪問した時、彼もたまたまそこに来ていた。どうやら彼は子供達にとって時間が空いている時に来て遊んでくれる優しいお兄さん的存在のようだった。
その日から私達の距離はとても近いものになり、すぐにお互い恋に落ち結婚を意識するようになった。貴族と平民の結婚は身分が違うため難しいものがあるが、私は貴族のある習慣に嫌悪感を持っていたので、愛するトーマスと結ばれるのなら平民になっても構わないと思っていた。きらびやかな貴族の生活に未練はなかった。
私の亡き父は貴族らしくたくさんの愛人を囲って、平気で母を傷つける人だった。周りが注意をしても『愛人は貴族の権利だ、何が悪い』と開き直る最低の人だった。私はそんな父を見て育ったので、愛人を持つことが容認されている貴族との結婚には前向きではなかった。相思相愛で結ばれお互いに相手だけを愛し続けたいと願っていたのだ。
そんな私が出会った運命の人がトーマスだった。ある日彼は私にプロポーズをしてくれた、私はすぐに『はい♪』と返事をしたかったが、喜びで溢れる気持ちを抑えて、気になっている事を思い切って聞いてみた。
「あのね、私は浮気とか愛人とか絶対に嫌なの。貴族なのにおかしいと思うかもしれないけど、トーマスはどう思う?」
「貴族だろうと平民だろうと結婚してるのに浮気なんて最低だよな。俺は絶対にそんな事をしてベラを悲しませないと誓う。だから結婚してください!」
彼は顔を真っ赤にしながら再度プロポーズをしてくれた。私はこの人とならどんな苦労をしても幸せになれると思い『お願いします♪』と申し込みを受け入れた。
貴族と平民の結婚なので両家の説得は大変だったが、私の気持ちを知っている母と兄は最後には折れて快く送り出してくれた。念のためと言って兄が婚前契約などを作成して私と彼に署名をさせたが、『もうお兄様は本当に心配性なんだから』と笑い飛ばしていた。
(だって私は自分が望んだ相手と幸せな結婚をするんだから、こんなものは必要ないわ)
商人であるトーマスに嫁いで平民となった私にとって、すべてが初めての連続で結婚生活は大変なものだった。ドエイン商会は大きな商会だが贅沢はせず使用人も最低限だったので、家族の食事の用意・掃除・商会の手伝い・若奥様としての付き合いなどやらなくてはいけない事が山ほどあった。
だが愛するトーマスは私を必死に支えてくれたし、義母も私の失敗を笑い飛ばして根気よく何度も教えてくれた。義父は寡黙だったが、不出来な嫁に文句を言わないでに見守ってくれた。
私を受け入れてくれた家族には感謝しかなかった。
そして一男一女に恵まれ充実した毎日を送り、私は本当に幸せだと信じていた。
…あの時まで。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
トーマスの浮気なんて有り得ないと思いながらも、ある日外出する彼の後をつけて行ってしまった。『なんか探偵みたいでスリルがあるわ』と私は楽しんでさえいたが、彼が大通りから脇道に入ると事態は一変した。
彼はそこで待っていた女と口付けを交わすと腕を絡ませ、大人が利用する休憩所へ入っていったのだ。その女は最近商会で働きだした従業員だった。
私は足元から幸せが崩れていくのを感じた。
だって彼を愛していたし信じていたから。
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私とトーマスは子爵家の長女と出入りの商人として出会った。トーマスはドエイン商会の跡継ぎであったが平民ということもあり、私と彼との間には超えられない壁があり、深い会話などしたことはなかった。
ある日、私が町の孤児院を訪問した時、彼もたまたまそこに来ていた。どうやら彼は子供達にとって時間が空いている時に来て遊んでくれる優しいお兄さん的存在のようだった。
その日から私達の距離はとても近いものになり、すぐにお互い恋に落ち結婚を意識するようになった。貴族と平民の結婚は身分が違うため難しいものがあるが、私は貴族のある習慣に嫌悪感を持っていたので、愛するトーマスと結ばれるのなら平民になっても構わないと思っていた。きらびやかな貴族の生活に未練はなかった。
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「あのね、私は浮気とか愛人とか絶対に嫌なの。貴族なのにおかしいと思うかもしれないけど、トーマスはどう思う?」
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彼は顔を真っ赤にしながら再度プロポーズをしてくれた。私はこの人とならどんな苦労をしても幸せになれると思い『お願いします♪』と申し込みを受け入れた。
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(だって私は自分が望んだ相手と幸せな結婚をするんだから、こんなものは必要ないわ)
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…あの時まで。
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トーマスの浮気なんて有り得ないと思いながらも、ある日外出する彼の後をつけて行ってしまった。『なんか探偵みたいでスリルがあるわ』と私は楽しんでさえいたが、彼が大通りから脇道に入ると事態は一変した。
彼はそこで待っていた女と口付けを交わすと腕を絡ませ、大人が利用する休憩所へ入っていったのだ。その女は最近商会で働きだした従業員だった。
私は足元から幸せが崩れていくのを感じた。
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