53 / 57
50.祝福される結婚①
しおりを挟む
待ちに待った私とヒューイの結婚式当日。
前日の雨が嘘のように空は晴れ渡り、まるで私達の結婚を祝福しているようだ。
招待客もみな着飾って席に着き、式の始まりを今か今かと待っている。
その顔にはみな喜びが溢れていてる。
花嫁である私の支度はすでに終わっている。
今は両親や兄に囲まれ嫁ぐ前の別れの挨拶をしている。
「お父様お母様、そしてお兄様。本当にお世話になりました。心配ばかり掛けている私をどんな時も支えてくださり感謝しております、本当に…有り難うございました。
私はヒューイに嫁ぎ幸せになります。
いいえ、違いますね。温かい家族に囲まれ幸せでしたから『もっと幸せになります』ですね」
涙ぐむ私を両親と兄が優しく抱きしめてくれる。
言葉はいらなかった。
彼らがどんなに私を愛してくれていたか何も言わずとも伝わってくる。
どんな時も優しくて見守ってくれていた家族。
彼らがいなければ今の私はいなかった。
しんみりとした雰囲気のなか兄ノーマンが目に浮かぶ涙を誤魔化すかのように明るい口調で話し出す。
「おい、マリア。もしヒューイが嫌な奴だったら兄である俺を頼れ!俺がアイツをボコボコにしてやるからなっ」
お兄様…それは無理。
きっとではなく絶対に無理ですから…。
兄とヒューイは同じく文官だが、全くの別物だ。
ノーマンは中身だけでなく見た目も文官だが、ヒューイは武官も敵わないほど鍛え上げられている。
絶対にこの兄に勝ち目はない。
「あらノーマン、やめておきなさい。ヒューイに挑んだら良くて半身不随、悪ければあの世行きよ」
息子のことをしっかり理解している母は笑いながらも厳しい現実を教えている。
「ノーマンなら瞬殺されるな。だがヒューイならその事実さえなかったものにするだろうから、いいとこ行方不明だな」
そう言って楽しげに笑う父に家族の笑い声が続く。
兄の発言のお陰で一気にいつもの明るい家族の雰囲気に戻る。
お兄様、ありがとうございます。
きっと兄は私を笑わす為にこんな事を言ってくれたのだろう。
「父上、母上安心してください。正々堂々となんて勝負しませんから。事前に毒を盛ってから闇討ちします!」
更に馬鹿なことを宣言する兄。
心のなかで一瞬でも兄のお陰と思ったことを悔やみつつもまた笑ってしまう。父と母も昔から変わらない笑顔で仲睦まじく笑っている。
家族で過ごす最後の時間が温かい笑いで満たされていく。
涙の別れよりもこの方が我が家らしかった。
真剣な表情で父は言葉を紡ぐ。
「ノーマンの言葉は冗談ではないからな。何かあったらすぐに頼れ、私でも母でもノーマンでも誰でもいい。決して一人で我慢はするな。お前は私達の大切な娘だ、それはこれからも変わることはない」
嫁いでいく娘にいつまでも味方だと言ってくれる父。母と兄が父の言葉に優しく頷いている。
彼らは離縁後の私を近くで見守り続けてくれていた。
だからこその言葉だった。
家族の想いが心に響く。
この家族の元に生まれたことが誇らしかった。
私は温かい家族ともう一度熱い抱擁を交わす、『もう幸せにしかなりませんから』と囁きながら。
『そんなの決まっている!』と言って兄は私に背を向ける。それと同時にお酒を飲んでいない兄の優しい泣き声が聞こえてきた。
前日の雨が嘘のように空は晴れ渡り、まるで私達の結婚を祝福しているようだ。
招待客もみな着飾って席に着き、式の始まりを今か今かと待っている。
その顔にはみな喜びが溢れていてる。
花嫁である私の支度はすでに終わっている。
今は両親や兄に囲まれ嫁ぐ前の別れの挨拶をしている。
「お父様お母様、そしてお兄様。本当にお世話になりました。心配ばかり掛けている私をどんな時も支えてくださり感謝しております、本当に…有り難うございました。
私はヒューイに嫁ぎ幸せになります。
いいえ、違いますね。温かい家族に囲まれ幸せでしたから『もっと幸せになります』ですね」
涙ぐむ私を両親と兄が優しく抱きしめてくれる。
言葉はいらなかった。
彼らがどんなに私を愛してくれていたか何も言わずとも伝わってくる。
どんな時も優しくて見守ってくれていた家族。
彼らがいなければ今の私はいなかった。
しんみりとした雰囲気のなか兄ノーマンが目に浮かぶ涙を誤魔化すかのように明るい口調で話し出す。
「おい、マリア。もしヒューイが嫌な奴だったら兄である俺を頼れ!俺がアイツをボコボコにしてやるからなっ」
お兄様…それは無理。
きっとではなく絶対に無理ですから…。
兄とヒューイは同じく文官だが、全くの別物だ。
ノーマンは中身だけでなく見た目も文官だが、ヒューイは武官も敵わないほど鍛え上げられている。
絶対にこの兄に勝ち目はない。
「あらノーマン、やめておきなさい。ヒューイに挑んだら良くて半身不随、悪ければあの世行きよ」
息子のことをしっかり理解している母は笑いながらも厳しい現実を教えている。
「ノーマンなら瞬殺されるな。だがヒューイならその事実さえなかったものにするだろうから、いいとこ行方不明だな」
そう言って楽しげに笑う父に家族の笑い声が続く。
兄の発言のお陰で一気にいつもの明るい家族の雰囲気に戻る。
お兄様、ありがとうございます。
きっと兄は私を笑わす為にこんな事を言ってくれたのだろう。
「父上、母上安心してください。正々堂々となんて勝負しませんから。事前に毒を盛ってから闇討ちします!」
更に馬鹿なことを宣言する兄。
心のなかで一瞬でも兄のお陰と思ったことを悔やみつつもまた笑ってしまう。父と母も昔から変わらない笑顔で仲睦まじく笑っている。
家族で過ごす最後の時間が温かい笑いで満たされていく。
涙の別れよりもこの方が我が家らしかった。
真剣な表情で父は言葉を紡ぐ。
「ノーマンの言葉は冗談ではないからな。何かあったらすぐに頼れ、私でも母でもノーマンでも誰でもいい。決して一人で我慢はするな。お前は私達の大切な娘だ、それはこれからも変わることはない」
嫁いでいく娘にいつまでも味方だと言ってくれる父。母と兄が父の言葉に優しく頷いている。
彼らは離縁後の私を近くで見守り続けてくれていた。
だからこその言葉だった。
家族の想いが心に響く。
この家族の元に生まれたことが誇らしかった。
私は温かい家族ともう一度熱い抱擁を交わす、『もう幸せにしかなりませんから』と囁きながら。
『そんなの決まっている!』と言って兄は私に背を向ける。それと同時にお酒を飲んでいない兄の優しい泣き声が聞こえてきた。
127
お気に入りに追加
6,831
あなたにおすすめの小説
報われない恋の行方〜いつかあなたは私だけを見てくれますか〜
矢野りと
恋愛
『少しだけ私に時間をくれないだろうか……』
彼はいつだって誠実な婚約者だった。
嘘はつかず私に自分の気持ちを打ち明け、学園にいる間だけ想い人のこともその目に映したいと告げた。
『想いを告げることはしない。ただ見ていたいんだ。どうか、許して欲しい』
『……分かりました、ロイド様』
私は彼に恋をしていた。だから、嫌われたくなくて……それを許した。
結婚後、彼は約束通りその瞳に私だけを映してくれ嬉しかった。彼は誠実な夫となり、私は幸せな妻になれた。
なのに、ある日――彼の瞳に映るのはまた二人になっていた……。
※この作品の設定は架空のものです。
※お話の内容があわないは時はそっと閉じてくださいませ。
(完結)婚約者の勇者に忘れられた王女様――行方不明になった勇者は妻と子供を伴い戻って来た
青空一夏
恋愛
私はジョージア王国の王女でレイラ・ジョージア。護衛騎士のアルフィーは私の憧れの男性だった。彼はローガンナ男爵家の三男で到底私とは結婚できる身分ではない。
それでも私は彼にお嫁さんにしてほしいと告白し勇者になってくれるようにお願いした。勇者は望めば王女とも婚姻できるからだ。
彼は私の為に勇者になり私と婚約。その後、魔物討伐に向かった。
ところが彼は行方不明となりおよそ2年後やっと戻って来た。しかし、彼の横には子供を抱いた見知らぬ女性が立っており・・・・・・
ハッピーエンドではない悲恋になるかもしれません。もやもやエンドの追記あり。ちょっとしたざまぁになっています。
形だけの妻ですので
hana
恋愛
結婚半年で夫のワルツは堂々と不倫をした。
相手は伯爵令嬢のアリアナ。
栗色の長い髪が印象的な、しかし狡猾そうな女性だった。
形だけの妻である私は黙認を強制されるが……
立派な王太子妃~妃の幸せは誰が考えるのか~
矢野りと
恋愛
ある日王太子妃は夫である王太子の不貞の現場を目撃してしまう。愛している夫の裏切りに傷つきながらも、やり直したいと周りに助言を求めるが‥‥。
隠れて不貞を続ける夫を見続けていくうちに壊れていく妻。
周りが気づいた時は何もかも手遅れだった…。
※設定はゆるいです。
忙しい男
菅井群青
恋愛
付き合っていた彼氏に別れを告げた。忙しいという彼を信じていたけれど、私から別れを告げる前に……きっと私は半分捨てられていたんだ。
「私のことなんてもうなんとも思ってないくせに」
「お前は一体俺の何を見て言ってる──お前は、俺を知らな過ぎる」
すれ違う想いはどうしてこうも上手くいかないのか。いつだって思うことはただ一つ、愛おしいという気持ちだ。
※ハッピーエンドです
かなりやきもきさせてしまうと思います。
どうか温かい目でみてやってくださいね。
※本編完結しました(2019/07/15)
スピンオフ &番外編
【泣く背中】 菊田夫妻のストーリーを追加しました(2019/08/19)
改稿 (2020/01/01)
本編のみカクヨムさんでも公開しました。
【完結】気付けばいつも傍に貴方がいる
kana
恋愛
ベルティアーナ・ウォール公爵令嬢はレフタルド王国のラシード第一王子の婚約者候補だった。
いつも令嬢を隣に侍らす王子から『声も聞きたくない、顔も見たくない』と拒絶されるが、これ幸いと大喜びで婚約者候補を辞退した。
実はこれは二回目人生だ。
回帰前のベルティアーナは第一王子の婚約者で、大人しく控えめ。常に貼り付けた笑みを浮かべて人の言いなりだった。
彼女は王太子になった第一王子の妃になってからも、弟のウィルダー以外の誰からも気にかけてもらえることなく公務と執務をするだけの都合のいいお飾りの妃だった。
そして白い結婚のまま約一年後に自ら命を絶った。
その理由と原因を知った人物が自分の命と引き換えにやり直しを望んだ結果、ベルティアーナの置かれていた環境が変わりることで彼女の性格までいい意味で変わることに⋯⋯
そんな彼女は家族全員で海を隔てた他国に移住する。
※ 投稿する前に確認していますが誤字脱字の多い作者ですがよろしくお願いいたします。
※ 設定ゆるゆるです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる