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34.覚悟の再会の後①

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周りの貴族から話を聞き終えた殿下は私に意見を求めてくる。

「だいぶ酷い事を言われたみたいだね、腹も立っていることだろう。それでクーガー伯爵令嬢はどう思っている、何を望んでいる?『二度と顔を見せるなっ』てところかな」

なんだか面白がっているような口振りにカチンと来てしまう。これでは周りの珍獣達と同じではないか。


 王太子なのに珍獣もどきなの?!
 なによ、がっかりだわ…。


殿下が珍獣もどきなら、私も好きに言わせてもらうだけだ。珍獣の親戚に遠慮はいらない。

「恐れながら言わせて頂きますわ。
私はこれも社交界の醍醐味くらいにしか思っておりません。貴族の夜会で何も起きなければ、みな退屈で欠伸ばかりしているでしょう。そしたら扇が大活躍するようになって男性用扇まで作られるかもしれませんね。殿下も愛用なさるようでしたら、私から贈らせて頂きますわ。

ああそれと私の望みをお尋ねでしたね。私は早くこの場から離れてエスコートしてくださっているヒューイ様と踊りたいと願っておりますわ」


遠慮なく言ってやった。

隣りにいるヒューイが少年のように『よっしっ!』と小さくガッツポーズをしている。どの言葉に対して反応しているのだろうか。願わくば最後の部分への反応であって欲しい。


なんらかのお叱りの言葉を覚悟していたが、それはなかった。

それどころか殿下はお腹を抱えて大笑いしていた。
どうやら殿下は珍獣もどきではなかったようだ。

ヒューイの肩をバンバン叩きながら彼にだけ聞こえるように話している。

「おい、ヒューイ。お前より辛口なんじゃないか。凄くお似合いだな」
「王太子に威厳がなぜ必要なのか、今度ゆっくり教え直して差し上げますよ、…殿下」


冷たい視線で見てくる側近の忠告に従ったのか、王太子の顔を取り戻し再び話し始める。

「そうなった時には是非派手な扇を贈ってくれ。
当事者であるクーガー伯爵令嬢がそう言うなら、ここで起こったことはただの余興だ。皆楽しめて良かったな」

私の意図を察して殿下はこの場を上手く流そうと乗ってくれる。流石はヒューイを側近にした人だと心のなかで喝采を送る。

そして珍獣もどき認定したことを『早とちりして申し訳ありません…』と心のなかでちゃんと謝っておく。



殿下の言葉になんらかの処罰蜜の味を望んでいた者達はざわつく。
『殿下、それでは示しが付きません!』『正義をお示しください!』と声高に叫んでいる。
尤もらしいことを言っているが、みなではなくという名の娯楽を求めているに過ぎない。

自分だけが求めているのではないという状況に人々の声は大胆になっていく。

その言葉を諌めることなく殿下は神妙な顔で頷いている。

「私は臣下の言葉を重んじることにしている、だから大多数が処罰を望むならそうしよう。どちらに否があるか明らかな事案だしな」

みな目を輝かせて言葉の続きを待っている。

すると殿下はにやりと笑みを浮かべ続きを話し始めた。

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