36 / 57
33.覚悟の再会②
しおりを挟む
ヒューイの言葉を聞き、ハッとするエドワード。
その表情は彼に悪気はなく、ただこの再会に動揺し言うべきことを失念していただけなのが伝わってくる。
出会った頃の彼を思い出す、優秀なのにたまにうっかりする彼に何度笑ったことだろう。
「…っ……、本当にすまない!マリア嬢との久しぶりの再会に気が動転してしまい順番を間違えてしまった。度重なる無礼を許して欲しい。
マリア嬢、改めて謝罪をさせてくれ。
妻が君に失礼な態度を取って本当に申し訳なかった。私と同じで君との再会に戸惑ってしまったのかもしれない。いや、それは勝手な言い分だな。ただ未熟だっただけだ。
それに配慮せずに昔の感覚のまま話し掛けてしまい申し訳なかった。
心から謝罪をする、私と妻が不快な思いをさせて本当に申し訳ない。ダイソン伯爵家当主として後日改めてクーガー伯爵家へ謝罪に伺わせていただく。
ヒューイ、手を煩わせて悪かった。言ってくれて有り難う」
自分の非は素直に認めて謝るところも昔のまま。上手な言い訳はないけれどちゃんと心は込めている。
エドワードに続いて、ラミアも自ら前に出て謝罪の言葉を口にする。
「マリア様、申し訳ございませんでした。
自分でもどうしてあんなことをしたの…いいえ、そんな気がなかったなんて言い訳はしません。自分のことしか考えていなかったのですから。
…ただマリア様を傷つけようと思っていたわけではないんです。
あんなことをしながら馬鹿な事を言っているとお思いになるでしょうが、マリア様には本当にいろいろなことを感謝しております。
度重なる無礼お許しください。
……本当に申し訳ございませんでした」
言葉を飾ることなく拙い言葉で謝り続けるラミア。
二人の素直すぎる謝罪が心に染みてくる。彼らは良い意味で変わっていない。
そしてエドワードが側にいるラミアは憑き物が落ちたようだ。
彼女はまだ色んな意味で弱いのだろうけれど、エドワードがいれば大丈夫だろう。
これから時間を掛けて二人だけの形を築いていけばいい。
きっと彼らはこの先上手くやっていける。その成長はゆっくりでもお互いの手を離さなければ、彼らなりに道は開けるはず。
そう思うとなぜか私の心が軽くなる。
きっと私は離縁した意味を彼らの幸せに求めてしまっていたのだろう。
「お二人からの謝罪は受け取ります。ですから先程のことは水に流しましょう。社交界は何が起こるか分からないところ、これもまた一興だと思うことにいたしますわ。過去よりも未来をお互いに大切にしましょう」
ダイソン伯爵夫妻は深く頭を下げ続ける、立場としては伯爵令嬢の私より伯爵家当主夫妻の彼らの方が上なのに。
それは侯爵家であるヒューイの存在に媚びているのではなく、私への真摯な謝罪からだと伝わってくる。
隣りにいるヒューイは『マリアは優しすぎる…』と不満げに耳元で呟いてくるが『これが私流だから』とこの場は我を通させて貰った。
この記念すべき夜会はヒューイとの思い出だけを残したい。
なんだかんだと私に甘いヒューイは、彼らにそれ以上何も言わなかった。
しかしこれですべてが解決とはいかない。
周りでは多くの珍獣達が舌なめずりしている。これを放ってこの場から去ったらダイソン伯爵夫妻だけでなく私も醜聞に巻き込まれることは免れないだろう。
ちゃんと後始末をしなければ。
「どう駆除しましょうか、これを……」
独り言のように呟いた言葉。
なぜかすぐ近くから聞き覚えがない声でボソッと返事が返って来る。
「ここは私に任せてくれないだろうか」
それはお忍びで来ている王太子殿下の声だった。
いつの間にかヒューイの隣りに立ってにこやかに微笑んでいる。
まわりにいる貴族達は殿下の突然の登場にみな驚き慌てて頭を下げる。
殿下は先ほどとは違ってよく通る声で皆に声を掛ける。
「今夜はお忍びで来ているから畏まる必要はない、いつものように夜会を楽しんでくれ。どうやら楽しげな催しがあったようだな、教えてくれないか?」
どことなく楽しげな口調で尋ねる殿下に、周りの貴族達はさっきまでここで繰り広げられていた事を面白可笑しく伝えていく。
みな他人の不幸は蜜の味で当事者達の立場などお構いなしだ。
エドワード達はなんらかの咎を受ける覚悟をしている。確かに同格の伯爵家同士の揉め事とはいえ、その内容は一方的にダイソン伯爵家に非がある。
殿下の耳に入ったからには何らかのお咎めを受けても仕方がないことだった。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※
お気に入り登録、感想有り難うございます!執筆の励みにさせて頂いております\(๑╹◡╹๑)ノ
願いを込めた熱い感想もありますが、不器用な作者はいつものように予定通りゴールに向かいます、あらかじめご了承くださいませ(人 •͈ᴗ•͈)
その表情は彼に悪気はなく、ただこの再会に動揺し言うべきことを失念していただけなのが伝わってくる。
出会った頃の彼を思い出す、優秀なのにたまにうっかりする彼に何度笑ったことだろう。
「…っ……、本当にすまない!マリア嬢との久しぶりの再会に気が動転してしまい順番を間違えてしまった。度重なる無礼を許して欲しい。
マリア嬢、改めて謝罪をさせてくれ。
妻が君に失礼な態度を取って本当に申し訳なかった。私と同じで君との再会に戸惑ってしまったのかもしれない。いや、それは勝手な言い分だな。ただ未熟だっただけだ。
それに配慮せずに昔の感覚のまま話し掛けてしまい申し訳なかった。
心から謝罪をする、私と妻が不快な思いをさせて本当に申し訳ない。ダイソン伯爵家当主として後日改めてクーガー伯爵家へ謝罪に伺わせていただく。
ヒューイ、手を煩わせて悪かった。言ってくれて有り難う」
自分の非は素直に認めて謝るところも昔のまま。上手な言い訳はないけれどちゃんと心は込めている。
エドワードに続いて、ラミアも自ら前に出て謝罪の言葉を口にする。
「マリア様、申し訳ございませんでした。
自分でもどうしてあんなことをしたの…いいえ、そんな気がなかったなんて言い訳はしません。自分のことしか考えていなかったのですから。
…ただマリア様を傷つけようと思っていたわけではないんです。
あんなことをしながら馬鹿な事を言っているとお思いになるでしょうが、マリア様には本当にいろいろなことを感謝しております。
度重なる無礼お許しください。
……本当に申し訳ございませんでした」
言葉を飾ることなく拙い言葉で謝り続けるラミア。
二人の素直すぎる謝罪が心に染みてくる。彼らは良い意味で変わっていない。
そしてエドワードが側にいるラミアは憑き物が落ちたようだ。
彼女はまだ色んな意味で弱いのだろうけれど、エドワードがいれば大丈夫だろう。
これから時間を掛けて二人だけの形を築いていけばいい。
きっと彼らはこの先上手くやっていける。その成長はゆっくりでもお互いの手を離さなければ、彼らなりに道は開けるはず。
そう思うとなぜか私の心が軽くなる。
きっと私は離縁した意味を彼らの幸せに求めてしまっていたのだろう。
「お二人からの謝罪は受け取ります。ですから先程のことは水に流しましょう。社交界は何が起こるか分からないところ、これもまた一興だと思うことにいたしますわ。過去よりも未来をお互いに大切にしましょう」
ダイソン伯爵夫妻は深く頭を下げ続ける、立場としては伯爵令嬢の私より伯爵家当主夫妻の彼らの方が上なのに。
それは侯爵家であるヒューイの存在に媚びているのではなく、私への真摯な謝罪からだと伝わってくる。
隣りにいるヒューイは『マリアは優しすぎる…』と不満げに耳元で呟いてくるが『これが私流だから』とこの場は我を通させて貰った。
この記念すべき夜会はヒューイとの思い出だけを残したい。
なんだかんだと私に甘いヒューイは、彼らにそれ以上何も言わなかった。
しかしこれですべてが解決とはいかない。
周りでは多くの珍獣達が舌なめずりしている。これを放ってこの場から去ったらダイソン伯爵夫妻だけでなく私も醜聞に巻き込まれることは免れないだろう。
ちゃんと後始末をしなければ。
「どう駆除しましょうか、これを……」
独り言のように呟いた言葉。
なぜかすぐ近くから聞き覚えがない声でボソッと返事が返って来る。
「ここは私に任せてくれないだろうか」
それはお忍びで来ている王太子殿下の声だった。
いつの間にかヒューイの隣りに立ってにこやかに微笑んでいる。
まわりにいる貴族達は殿下の突然の登場にみな驚き慌てて頭を下げる。
殿下は先ほどとは違ってよく通る声で皆に声を掛ける。
「今夜はお忍びで来ているから畏まる必要はない、いつものように夜会を楽しんでくれ。どうやら楽しげな催しがあったようだな、教えてくれないか?」
どことなく楽しげな口調で尋ねる殿下に、周りの貴族達はさっきまでここで繰り広げられていた事を面白可笑しく伝えていく。
みな他人の不幸は蜜の味で当事者達の立場などお構いなしだ。
エドワード達はなんらかの咎を受ける覚悟をしている。確かに同格の伯爵家同士の揉め事とはいえ、その内容は一方的にダイソン伯爵家に非がある。
殿下の耳に入ったからには何らかのお咎めを受けても仕方がないことだった。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※
お気に入り登録、感想有り難うございます!執筆の励みにさせて頂いております\(๑╹◡╹๑)ノ
願いを込めた熱い感想もありますが、不器用な作者はいつものように予定通りゴールに向かいます、あらかじめご了承くださいませ(人 •͈ᴗ•͈)
106
お気に入りに追加
6,831
あなたにおすすめの小説
報われない恋の行方〜いつかあなたは私だけを見てくれますか〜
矢野りと
恋愛
『少しだけ私に時間をくれないだろうか……』
彼はいつだって誠実な婚約者だった。
嘘はつかず私に自分の気持ちを打ち明け、学園にいる間だけ想い人のこともその目に映したいと告げた。
『想いを告げることはしない。ただ見ていたいんだ。どうか、許して欲しい』
『……分かりました、ロイド様』
私は彼に恋をしていた。だから、嫌われたくなくて……それを許した。
結婚後、彼は約束通りその瞳に私だけを映してくれ嬉しかった。彼は誠実な夫となり、私は幸せな妻になれた。
なのに、ある日――彼の瞳に映るのはまた二人になっていた……。
※この作品の設定は架空のものです。
※お話の内容があわないは時はそっと閉じてくださいませ。
(完結)婚約者の勇者に忘れられた王女様――行方不明になった勇者は妻と子供を伴い戻って来た
青空一夏
恋愛
私はジョージア王国の王女でレイラ・ジョージア。護衛騎士のアルフィーは私の憧れの男性だった。彼はローガンナ男爵家の三男で到底私とは結婚できる身分ではない。
それでも私は彼にお嫁さんにしてほしいと告白し勇者になってくれるようにお願いした。勇者は望めば王女とも婚姻できるからだ。
彼は私の為に勇者になり私と婚約。その後、魔物討伐に向かった。
ところが彼は行方不明となりおよそ2年後やっと戻って来た。しかし、彼の横には子供を抱いた見知らぬ女性が立っており・・・・・・
ハッピーエンドではない悲恋になるかもしれません。もやもやエンドの追記あり。ちょっとしたざまぁになっています。
形だけの妻ですので
hana
恋愛
結婚半年で夫のワルツは堂々と不倫をした。
相手は伯爵令嬢のアリアナ。
栗色の長い髪が印象的な、しかし狡猾そうな女性だった。
形だけの妻である私は黙認を強制されるが……
立派な王太子妃~妃の幸せは誰が考えるのか~
矢野りと
恋愛
ある日王太子妃は夫である王太子の不貞の現場を目撃してしまう。愛している夫の裏切りに傷つきながらも、やり直したいと周りに助言を求めるが‥‥。
隠れて不貞を続ける夫を見続けていくうちに壊れていく妻。
周りが気づいた時は何もかも手遅れだった…。
※設定はゆるいです。
忙しい男
菅井群青
恋愛
付き合っていた彼氏に別れを告げた。忙しいという彼を信じていたけれど、私から別れを告げる前に……きっと私は半分捨てられていたんだ。
「私のことなんてもうなんとも思ってないくせに」
「お前は一体俺の何を見て言ってる──お前は、俺を知らな過ぎる」
すれ違う想いはどうしてこうも上手くいかないのか。いつだって思うことはただ一つ、愛おしいという気持ちだ。
※ハッピーエンドです
かなりやきもきさせてしまうと思います。
どうか温かい目でみてやってくださいね。
※本編完結しました(2019/07/15)
スピンオフ &番外編
【泣く背中】 菊田夫妻のストーリーを追加しました(2019/08/19)
改稿 (2020/01/01)
本編のみカクヨムさんでも公開しました。
【完結】気付けばいつも傍に貴方がいる
kana
恋愛
ベルティアーナ・ウォール公爵令嬢はレフタルド王国のラシード第一王子の婚約者候補だった。
いつも令嬢を隣に侍らす王子から『声も聞きたくない、顔も見たくない』と拒絶されるが、これ幸いと大喜びで婚約者候補を辞退した。
実はこれは二回目人生だ。
回帰前のベルティアーナは第一王子の婚約者で、大人しく控えめ。常に貼り付けた笑みを浮かべて人の言いなりだった。
彼女は王太子になった第一王子の妃になってからも、弟のウィルダー以外の誰からも気にかけてもらえることなく公務と執務をするだけの都合のいいお飾りの妃だった。
そして白い結婚のまま約一年後に自ら命を絶った。
その理由と原因を知った人物が自分の命と引き換えにやり直しを望んだ結果、ベルティアーナの置かれていた環境が変わりることで彼女の性格までいい意味で変わることに⋯⋯
そんな彼女は家族全員で海を隔てた他国に移住する。
※ 投稿する前に確認していますが誤字脱字の多い作者ですがよろしくお願いいたします。
※ 設定ゆるゆるです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる