31 / 57
28.ダイソン伯爵夫人②
しおりを挟む
ラミアを中心に女性達が談笑している姿は、一見すると彼女と彼女を慕っている者達の集まりに見える。
夜会では華となる人物とその取巻き達の集まりは此処かしこで見られるもの。
だがよく見るとラミアの状況はそんなものではなかった。取巻きではなく取り囲まれているが正しい表現だった。
女性達は逃げられないようにラミアを上手く囲みながら、次々に毒を含んだ言葉を浴びせていた。
「あらダイソン伯爵夫人、最近はよくお会いしますわね。こちらの社交界が気に入ってくれたようで何よりですわ。あちらの国と違うことも多くて大変でございますね。常識とか礼儀作法とかイントネーションとか違いますでしょう。個性豊かなダイソン伯爵夫人とそれはもう評判ですのよ、おっほっほ」
「…ありがとございます」
この国の基準に合ってないことを個性豊かという言葉で貶めている。それにラミアも気づいているだろうが、微笑みながら小さな声でお礼を言うだけで反論はしない。
「全くですわ、凡人の私達では真似など決して出来ませんもの。個性を大切にするその姿勢が羨ましい限りですわ」
「そうですわね、ラミア様の話題が出ない夜会などありませんもの。私なんて夜会の話題にも上がることはないですから。ふふっ、悲しいことですわ。
いつでも素晴らしい話題を提供しているラミア様を見習わなくてはと思っておりますのよ。
流石、由緒ある伯爵家のご出身ですわね。
あら、申し訳ありません!私ったら間違ってしまって、ラミア様は由緒正しき男爵家のご出身でしたわね?
本当に申し訳ございません、ラミア様の振る舞いが素晴らしすぎて元から高位貴族かと思ってしまいまして。
それに時系列が複雑で私如きの頭ではついていけなくて…、ほっほほ。
許していただけるかしら?」
これでもかとラミアを煽る言葉を投げつけている。
みな口角を上げながらラミアの言葉を待っている、彼女の失言を期待して。
「…っ……勿論ですわ。だ、誰にでも間違いはございます…から」
少し声が震えているが、笑顔だけは必死に浮かべているラミア。
なんとか話しを終わらせこの場から逃れようとするがそれを相手は許さない。
「あの…お話出来て楽しかったですわ。これで失礼し、」
「まだ宜しいではないですか~。ダイソン伯爵が戻られるまで楽しくお話しを続けましょう。お一人のままでは寂しいでしょうから。
それともラミア様は私達なんかとは話してもつまらないのかしら…?」
相手は巧妙な罠を張り可哀想な獲物を逃さない。
「いいえ、そんなことはございません!」
相手の罠に落ちていくと分かっていても、上手く切り替えせないラミアはこう返事するしかなかった。
談笑という名の終わらない苦行が続いていく。
周りにいる人々もこの状況に気づいてはいるのだろうが、誰も助けようとはしない。
それはラミアがダイソン伯爵夫人になった経緯も多分にあるだろう。
しかしそれ以上に伯爵夫人となったからにはこのような場面は自分の力で切り抜けるべきだと思っているからだ。
夜会では華となる人物とその取巻き達の集まりは此処かしこで見られるもの。
だがよく見るとラミアの状況はそんなものではなかった。取巻きではなく取り囲まれているが正しい表現だった。
女性達は逃げられないようにラミアを上手く囲みながら、次々に毒を含んだ言葉を浴びせていた。
「あらダイソン伯爵夫人、最近はよくお会いしますわね。こちらの社交界が気に入ってくれたようで何よりですわ。あちらの国と違うことも多くて大変でございますね。常識とか礼儀作法とかイントネーションとか違いますでしょう。個性豊かなダイソン伯爵夫人とそれはもう評判ですのよ、おっほっほ」
「…ありがとございます」
この国の基準に合ってないことを個性豊かという言葉で貶めている。それにラミアも気づいているだろうが、微笑みながら小さな声でお礼を言うだけで反論はしない。
「全くですわ、凡人の私達では真似など決して出来ませんもの。個性を大切にするその姿勢が羨ましい限りですわ」
「そうですわね、ラミア様の話題が出ない夜会などありませんもの。私なんて夜会の話題にも上がることはないですから。ふふっ、悲しいことですわ。
いつでも素晴らしい話題を提供しているラミア様を見習わなくてはと思っておりますのよ。
流石、由緒ある伯爵家のご出身ですわね。
あら、申し訳ありません!私ったら間違ってしまって、ラミア様は由緒正しき男爵家のご出身でしたわね?
本当に申し訳ございません、ラミア様の振る舞いが素晴らしすぎて元から高位貴族かと思ってしまいまして。
それに時系列が複雑で私如きの頭ではついていけなくて…、ほっほほ。
許していただけるかしら?」
これでもかとラミアを煽る言葉を投げつけている。
みな口角を上げながらラミアの言葉を待っている、彼女の失言を期待して。
「…っ……勿論ですわ。だ、誰にでも間違いはございます…から」
少し声が震えているが、笑顔だけは必死に浮かべているラミア。
なんとか話しを終わらせこの場から逃れようとするがそれを相手は許さない。
「あの…お話出来て楽しかったですわ。これで失礼し、」
「まだ宜しいではないですか~。ダイソン伯爵が戻られるまで楽しくお話しを続けましょう。お一人のままでは寂しいでしょうから。
それともラミア様は私達なんかとは話してもつまらないのかしら…?」
相手は巧妙な罠を張り可哀想な獲物を逃さない。
「いいえ、そんなことはございません!」
相手の罠に落ちていくと分かっていても、上手く切り替えせないラミアはこう返事するしかなかった。
談笑という名の終わらない苦行が続いていく。
周りにいる人々もこの状況に気づいてはいるのだろうが、誰も助けようとはしない。
それはラミアがダイソン伯爵夫人になった経緯も多分にあるだろう。
しかしそれ以上に伯爵夫人となったからにはこのような場面は自分の力で切り抜けるべきだと思っているからだ。
98
お気に入りに追加
6,807
あなたにおすすめの小説
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
『別れても好きな人』
設樂理沙
ライト文芸
大好きな夫から好きな女性ができたから別れて欲しいと言われ、離婚した。
夫の想い人はとても美しく、自分など到底敵わないと思ったから。
ほんとうは別れたくなどなかった。
この先もずっと夫と一緒にいたかった……だけど世の中には
どうしようもないことがあるのだ。
自分で選択できないことがある。
悲しいけれど……。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
登場人物紹介
戸田貴理子 40才
戸田正義 44才
青木誠二 28才
嘉島優子 33才
小田聖也 35才
2024.4.11 ―― プロット作成日
💛イラストはAI生成自作画像
【完結】さようなら、王子様。どうか私のことは忘れて下さい
ハナミズキ
恋愛
悪女と呼ばれ、愛する人の手によって投獄された私。
理由は、嫉妬のあまり彼の大切な女性を殺そうとしたから。
彼は私の婚約者だけど、私のことを嫌っている。そして別の人を愛している。
彼女が許せなかった。
でも今は自分のことが一番許せない。
自分の愚かな行いのせいで、彼の人生を狂わせてしまった。両親や兄の人生も狂わせてしまった。
皆が私のせいで不幸になった。
そして私は失意の中、地下牢で命を落とした。
──はずだったのに。
気づいたら投獄の二ヶ月前に時が戻っていた。どうして──? わからないことだらけだけど、自分のやるべきことだけはわかる。
不幸の元凶である私が、皆の前から消えること。
貴方への愛がある限り、
私はまた同じ過ちを繰り返す。
だから私は、貴方との別れを選んだ。
もう邪魔しないから。
今世は幸せになって。
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
元サヤのお話です。ゆるふわ設定です。
合わない方は静かにご退場願います。
R18版(本編はほぼ同じでR18シーン追加版)はムーンライトに時間差で掲載予定ですので、大人の方はそちらもどうぞ。
24話か25話くらいの予定です。
旦那様、離婚しましょう
榎夜
恋愛
私と旦那は、いわゆる『白い結婚』というやつだ。
手を繋いだどころか、夜を共にしたこともありません。
ですが、とある時に浮気相手が懐妊した、との報告がありました。
なので邪魔者は消えさせてもらいますね
*『旦那様、離婚しましょう~私は冒険者になるのでお構いなく!~』と登場人物は同じ
本当はこんな感じにしたかったのに主が詰め込みすぎて......
愛することはないと言われて始まったのですから、どうか最後まで愛さないままでいてください。
田太 優
恋愛
「最初に言っておく。俺はお前を愛するつもりはない。だが婚約を解消する意思もない。せいぜい問題を起こすなよ」
それが婚約者から伝えられたことだった。
最初から冷めた関係で始まり、結婚してもそれは同じだった。
子供ができても無関心。
だから私は子供のために生きると決意した。
今になって心を入れ替えられても困るので、愛さないままでいてほしい。
王子妃だった記憶はもう消えました。
cyaru
恋愛
記憶を失った第二王子妃シルヴェーヌ。シルヴェーヌに寄り添う騎士クロヴィス。
元々は王太子であるセレスタンの婚約者だったにも関わらず、嫁いだのは第二王子ディオンの元だった。
実家の公爵家にも疎まれ、夫となった第二王子ディオンには愛する人がいる。
記憶が戻っても自分に居場所はあるのだろうかと悩むシルヴェーヌだった。
記憶を取り戻そうと動き始めたシルヴェーヌを支えるものと、邪魔するものが居る。
記憶が戻った時、それは、それまでの日常が崩れる時だった。
★1話目の文末に時間的流れの追記をしました(7月26日)
●ゆっくりめの更新です(ちょっと本業とダブルヘッダーなので)
●ルビ多め。鬱陶しく感じる方もいるかも知れませんがご了承ください。
敢えて常用漢字などの読み方を変えている部分もあります。
●作中の通貨単位はケラ。1ケラ=1円くらいの感じです。
♡注意事項~この話を読む前に~♡
※異世界の創作話です。時代設定、史実に基づいた話ではありません。リアルな世界の常識と混同されないようお願いします。
※心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。
※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義です。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。登場人物、場所全て架空です。
※価値観や言葉使いなど現実世界とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
旦那様に離縁をつきつけたら
cyaru
恋愛
駆け落ち同然で結婚したシャロンとシリウス。
仲の良い夫婦でずっと一緒だと思っていた。
突然現れた子連れの女性、そして腕を組んで歩く2人。
我慢の限界を迎えたシャロンは神殿に離縁の申し込みをした。
※色々と異世界の他に現実に近いモノや妄想の世界をぶっこんでいます。
※設定はかなり他の方の作品とは異なる部分があります。
あの日、さようならと言って微笑んだ彼女を僕は一生忘れることはないだろう
まるまる⭐️
恋愛
僕に向かって微笑みながら「さようなら」と告げた彼女は、そのままゆっくりと自身の体重を後ろへと移動し、バルコニーから落ちていった‥
*****
僕と彼女は幼い頃からの婚約者だった。
僕は彼女がずっと、僕を支えるために努力してくれていたのを知っていたのに‥
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる