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28.ダイソン伯爵夫人②

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ラミアを中心に女性達が談笑している姿は、一見すると彼女と彼女を慕っている者達の集まりに見える。

夜会では華となる人物とその取巻き達の集まりは此処かしこで見られるもの。

だがよく見るとラミアの状況はそんなものではなかった。ではなくが正しい表現だった。

女性達は逃げられないようにラミアを上手く囲みながら、次々に毒を含んだ言葉を浴びせていた。


「あらダイソン伯爵夫人、最近はよくお会いしますわね。こちらの社交界が気に入ってくれたようで何よりですわ。あちらの国と違うことも多くて大変でございますね。常識とか礼儀作法とかイントネーションとか違いますでしょう。個性豊かなダイソン伯爵夫人とそれはもう評判ですのよ、おっほっほ」

「…ありがとございます」

この国の基準に合ってないことを個性豊かという言葉で貶めている。それにラミアも気づいているだろうが、微笑みながら小さな声でお礼を言うだけで反論はしない。


「全くですわ、凡人の私達では真似など決して出来ませんもの。個性を大切にするその姿勢が羨ましい限りですわ」

「そうですわね、ラミア様の話題が出ない夜会などありませんもの。私なんて夜会の話題にも上がることはないですから。ふふっ、悲しいことですわ。
いつでも素晴らしい話題を提供しているラミア様を見習わなくてはと思っておりますのよ。
流石、由緒ある伯爵家のご出身ですわね。
あら、申し訳ありません!私ったら間違ってしまって、ラミア様はのご出身でしたわね?
本当に申し訳ございません、ラミア様の振る舞いが素晴らしすぎて元から高位貴族かと思ってしまいまして。
それに時系列が複雑で私如きの頭ではついていけなくて…、ほっほほ。
許していただけるかしら?」

これでもかとラミアを煽る言葉を投げつけている。

みな口角を上げながらラミアの言葉を待っている、彼女の失言を期待して。


「…っ……勿論ですわ。だ、誰にでも間違いはございます…から」

少し声が震えているが、笑顔だけは必死に浮かべているラミア。
なんとか話しを終わらせこの場から逃れようとするがそれを相手は許さない。

「あの…お話出来て楽しかったですわ。これで失礼し、」

「まだ宜しいではないですか~。ダイソン伯爵が戻られるまで楽しくお話しを続けましょう。お一人のままでは寂しいでしょうから。
それともラミア様は私達なんかとは話してもつまらないのかしら…?」

相手は巧妙な罠を張り可哀想な獲物を逃さない。

「いいえ、そんなことはございません!」

相手の罠に落ちていくと分かっていても、上手く切り替えせないラミアはこう返事するしかなかった。



談笑という名の終わらない苦行が続いていく。



周りにいる人々もこの状況に気づいてはいるのだろうが、誰も助けようとはしない。

それはラミアがダイソン伯爵夫人になった経緯も多分にあるだろう。
しかしそれ以上に伯爵夫人となったからにはこのような場面は自分の力で切り抜けるべきだと思っているからだ。






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