幸せな番が微笑みながら願うこと

矢野りと

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83.和解

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あれからほとんどのことは順調に進んだ。

私が元番様だと知っている宰相達は号泣しながら私とエドの仲を祝福してくれ、何も知らない王宮に勤めている人達は『うぉ、つぶあんのお菓子で玉の輿か!!』と驚かれたが自分のことのように喜んでくれた。

そう王宮内は問題はなかった。
拍子抜けするほどただの侍女である私を好意的に受け入れてくれ、会うたびに親指を立てて健闘を称えられた。



‥‥問題は私の家族だった。

私の意思を尊重してくれると言っていたが、エドとの仲を手放しで喜んでくれるとはとてもじゃないが思えない。

 だってみんなエドのこと竜王様って呼ばずに、アイツとかあの馬鹿呼ばわりしていたものね。
 はあ…、どうなるかな‥‥。


二人で一緒に結婚の許可を貰いに実家に帰ると思っていた通りの反応が待っていた。
エドが約束を守らなかったことを謝罪し、改めて結婚をさせて頂きたいと告げると父はおもむろに立ち上がりエドに殴りかかろうとした。
母とトム兄が慌てて止めに入る。

「あなた、やめて」
「そうだぞ、そいつの身体を殴っても父さんが怪我しちまう!」

やはり私の意思を尊重することと過去のエドを許すことはイコールではなかったようだ。両親の気持ちも痛いほど分かるが、私はエドと一緒に人生を歩みたい。

 ‥‥どうしよう。家族にも祝福して欲しい。
 このままじゃ平行線のままだわ。

ひたすら頭を下げ続け謝るエドとそれを睨みつける両親とトム兄。

‥‥膠着状態が続く。

するとそのとき黒い物体を片手にミンが現れた。
なにをするのかと思っていたらエドの後頭部を後ろから力一杯殴りつけた。黒い物体の正体は我が家で長年愛用しているフライパンだった。


ガッゴーーン。


凄い音と共に鉄で出来たフライパンが折れ曲がり、エドは少しだけ痛そうな顔をして頭を擦っている。

 …ミ‥ン‥‥。なんてことをするの!
 でも無事で良かった~。


ミンを叱ろうとするが逃げ足が速くもう姿はない。
だがミンの行動のお陰でさっきまであった緊張感は一瞬で吹き飛び、家族は大爆笑し始めた。

それをきっかけに両親はエドの話に耳を傾け最終的には私達の結婚を認め祝福してくれることになった。


すべては機転を利かせてくれたミンのお陰である。こっそり帰り際にミンにお礼を言う。

「有り難う。ミンの演技のお陰で緊張がほぐれたわ」

「アンお姉ちゃん、違うから演技じゃなくて本気だったから。これなら楽に逝かせてあげられると思ったんだけど、竜人は丈夫だね」

「………」

‥‥とりあえず聞かなかったことにした。

 
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