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78.想い①
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なんでこの人はこんな顔ばかりするのだろう。
私はエドにこんな顔をさせる為にここに来た訳じゃないのに…。
彼が何も言わないので私から話し掛ける。
「エドは竜王様だったんだね。ふふふ、てっきり王宮の騎士だとばかり思っていたわ、だって言葉が足りないから出世はちょっと難しいかなって思っていたから。
まさかこの国一番の偉い人だったなんてね」
「…………」
返事はない、また会ったばかりのエドに戻ってしまった。
…でも大丈夫、それならまた最初から始めればいいだけのことだ。
「エド、下っ端侍女の私がここまで辿り着くのは大変だったんだよ。お土産を渡したり、ワンに裏切られたりして…本当に色々あったんだから。こんな思いまでして私がここに来た理由が分かる、エド?」
「…あんな酷いことを言った私を罵りに来たのか……」
やっとエドが話してくれた。
それだけで飛び上がりそうなほど嬉しいけど、エドの答えは的外れにもほどがある。
この人はどうしてこうなんだろう。
賢王と称えられほど立派に国を治めることが出来るのに、どうして私のことに関してはその賢さが発揮されないのだろう。
エド、駄目よ…そんなんじゃ。
女心を全然分かっていない。
私じゃなかったらここまで来れなくて、恋は終わっていたよ。
でもね、私はどんな事があっても終わらせないから…。
「全然ち・が・い・ま・す!なんでそんな風に考えちゃうのかな。
エドって勘違いが過ぎるって言われたことない?
私はエドを罵りに来たんじゃないよ」
「なら自分はもう大丈夫だって言いに来たのか…。もう私のことなんて全然気にも掛けていないと……」
ああ、全然駄目だ。エドは私に関してだけは賢い頭脳を行使することを放棄しているらしい。
それなら、私がすべてをちゃんと言葉にして伝えよう。彼が目を背けて私の気持ちを考えないなら、彼の代わりに私がやってあげればいい。
完璧な人はいない。
誰だって自分に足りない事を補ってくれる存在がいるほうがいい。
私はエドにとってのそういう存在になりたい。
よっし、始めるぞ!
「エドは一か月前に私の想いを拒絶したよね、『気持ち悪い』って。覚えているでしょう?」
私の言葉にエドの表情が歪む。彼の表情を見ると、耐えがたいほどの苦痛を受けた人はきっとこんな顔になるんだろうなと思ってしまう。
私は更に言葉を続ける。
「でもね、私はその言葉を信じられなかった。だってエドの目は私を『愛している』って伝えてくれていたもの。私がエドの想いを読み間違えるはずなんてない、だってこんなにエドのことを愛しているから」
「……っ、それは違う。私はアンのことを愛してなどいない、」
「それは噓。それならどうして今のエドはそんなに苦しそうな顔をして『愛していない』って言っているの?本当に愛していないなら、そんな表情にはならないはずだよ」
私は苦しそうな顔で言いたくない言葉を吐く彼に問い掛ける。
エドはどうしたらいいか分からない顔をして私を見つめてくる。
ほら、その目。
『愛している』って伝えちゃっているよ。
それなのにまだ、嘘を吐き続けてまで私を遠ざけようとするの…。
往生際が悪いエドに私を愛していることを認めさせるにはもっと言葉が必要なんだろう。
それなら、彼が納得できるまでいくらだって言葉を紡いでいく。有給休暇の延長手続きはもう済んでいるから時間はいくらだってある。
私はエドにこんな顔をさせる為にここに来た訳じゃないのに…。
彼が何も言わないので私から話し掛ける。
「エドは竜王様だったんだね。ふふふ、てっきり王宮の騎士だとばかり思っていたわ、だって言葉が足りないから出世はちょっと難しいかなって思っていたから。
まさかこの国一番の偉い人だったなんてね」
「…………」
返事はない、また会ったばかりのエドに戻ってしまった。
…でも大丈夫、それならまた最初から始めればいいだけのことだ。
「エド、下っ端侍女の私がここまで辿り着くのは大変だったんだよ。お土産を渡したり、ワンに裏切られたりして…本当に色々あったんだから。こんな思いまでして私がここに来た理由が分かる、エド?」
「…あんな酷いことを言った私を罵りに来たのか……」
やっとエドが話してくれた。
それだけで飛び上がりそうなほど嬉しいけど、エドの答えは的外れにもほどがある。
この人はどうしてこうなんだろう。
賢王と称えられほど立派に国を治めることが出来るのに、どうして私のことに関してはその賢さが発揮されないのだろう。
エド、駄目よ…そんなんじゃ。
女心を全然分かっていない。
私じゃなかったらここまで来れなくて、恋は終わっていたよ。
でもね、私はどんな事があっても終わらせないから…。
「全然ち・が・い・ま・す!なんでそんな風に考えちゃうのかな。
エドって勘違いが過ぎるって言われたことない?
私はエドを罵りに来たんじゃないよ」
「なら自分はもう大丈夫だって言いに来たのか…。もう私のことなんて全然気にも掛けていないと……」
ああ、全然駄目だ。エドは私に関してだけは賢い頭脳を行使することを放棄しているらしい。
それなら、私がすべてをちゃんと言葉にして伝えよう。彼が目を背けて私の気持ちを考えないなら、彼の代わりに私がやってあげればいい。
完璧な人はいない。
誰だって自分に足りない事を補ってくれる存在がいるほうがいい。
私はエドにとってのそういう存在になりたい。
よっし、始めるぞ!
「エドは一か月前に私の想いを拒絶したよね、『気持ち悪い』って。覚えているでしょう?」
私の言葉にエドの表情が歪む。彼の表情を見ると、耐えがたいほどの苦痛を受けた人はきっとこんな顔になるんだろうなと思ってしまう。
私は更に言葉を続ける。
「でもね、私はその言葉を信じられなかった。だってエドの目は私を『愛している』って伝えてくれていたもの。私がエドの想いを読み間違えるはずなんてない、だってこんなにエドのことを愛しているから」
「……っ、それは違う。私はアンのことを愛してなどいない、」
「それは噓。それならどうして今のエドはそんなに苦しそうな顔をして『愛していない』って言っているの?本当に愛していないなら、そんな表情にはならないはずだよ」
私は苦しそうな顔で言いたくない言葉を吐く彼に問い掛ける。
エドはどうしたらいいか分からない顔をして私を見つめてくる。
ほら、その目。
『愛している』って伝えちゃっているよ。
それなのにまだ、嘘を吐き続けてまで私を遠ざけようとするの…。
往生際が悪いエドに私を愛していることを認めさせるにはもっと言葉が必要なんだろう。
それなら、彼が納得できるまでいくらだって言葉を紡いでいく。有給休暇の延長手続きはもう済んでいるから時間はいくらだってある。
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