幸せな番が微笑みながら願うこと

矢野りと

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45.アンの叫び②

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突然誰かがで悲鳴に近いような声を上げる。
『こんなことを竜王様にさせてはイケナイわ!』と。

 だ、誰なの…?なにを言っているの?
 それになんで…私のなかにいる…の。
 
まずは不安と恐怖に襲われたが、心がその懐かしい声をすぐに受け入れ次は疑問が浮かび上がる。

 だってあの子は…私自身だったはず。
 あのとき確かに一つになれたはずなのに。
 もう‥消えたはずなのに…。


私の幻想だったあの子の声だと分かり『どうして…今になって…』と更に頭が混乱してしまう。
そんな私に構うことなくあの子は話し始める。
聞きたくないけど、耳で聞いているのではないから拒絶は出来なかった。


 ダッテ、アナタニ、マカセテオイタラ、マチガエルデショウ。
 リュウオウサマノ、ヤサシサヲ、カンチガイシヨウト、シテイルヨネ?


 ……っ、そんなこと…ない。


 フフフ、ウソダワ。
 ワタシハ、アナタダカラ、ワカルノヨ。
 アナタノ、ココロハ、ユレテイルジャナイ。


 そんなこと…ないから。
 …っううう…もうやめて。
 
 
 マチガエナイデ!アレハ、アイデハナイワ。
 タダノ、ドウジョウ。
 ソレニスガリツイテ、イイノ?
 ツガイヲ、フコウニシタイノ?
 アナタッテ、ホントウニ…ジブンカッテネ。


 いや、いやよ!絶対に竜王様を幸せにしたの!
 そうしなくてはいけないの。
 ……それが私の幸せなんだから。
 

 ナンダ、チャント、ワカッテイルジャナイ。
 アンシンシタ。
 ジャア、ワタシハ、イナクテイイヨネ。
 ガンバッテネ、

 
 うん、ダイジョウブ。もうマチがえナイから。
 

揺らぎそうだった覚悟をあの子が支えてくれた。
…私とあの子が一緒ならもう大丈夫。
夢を見たりしない、竜王様の優しさを自分だけのものだと勘違いしない。

現実と向き合える。
ふふふ……さあ、彼に偽りの幸せを捨てさせましょう…番のワタシが。


「竜王様、いいのです。優しいお気持ちはもう十分頂きました。
『番』というだけで、愛されてもいないのに竜王様を縛り付けるつもりはありません。
だから私から、番という呪縛から、解放されてくださいませ。私のことなど心配は無用ですから、本当に心から愛する人と幸せを掴んでください」

声も震えずにちゃんと微笑みながら伝えることが出来た。みっともない姿を晒さなかったことにホッとしている。

完璧だった、あとは竜王様が『有り難う』と言って去ってくれたらもう終わるはずだったのに…まだ終わらなかった。

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