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39.家族の後悔~兄視点~①
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婚姻の儀が行われる前、少しだけ家族だけで会う時間が与えられると前日に王宮から連絡があった。
『正式に竜王様の番になる妹は更に遠い存在になってしまうかも』
『もう会うことさえ出来なくなってしまうのでは…』
俺達家族はそう考えていた。
大切なアンとの絆が完全に切れるのは嫌だった。
たとえ以前と同じような関係に戻っていなくても、アンが家族をどう思っていても関係ない、それでもアンはアンなんだ。
父さんと母さんからしたら『大切な娘』で、俺にとっては『可愛いちびで妹』だ。
それに一番下の妹ミンにとって今は憧れの姉だ。
最初の再会から少しずつ言い聞かせてきた。
『アンは本当は姉であること』
『それを他人に絶対に話していけないこと』
『王宮では今までと同じ様に接すること』
これらが理解できるとようになると次はアンについて聞かせた。
アンがどんな子でどんなことに笑い泣いていたか両親や俺が寝る前に毎晩話してやった。
いつしかミンのなかでアンは一緒に暮らしたことはないが大好きな姉になっていた。
だからアンへの想いは一緒に暮らしたことがないミンも含め家族全員同じだった。
離れてはいるがアンは大切な家族なんだ。
王宮からの連絡があった後、俺は父さんに自分の考えを話してみた。
「ねえ、父さん。明日アンと家族だけで会える時に『番様』じゃなくて『アン』って呼んでみてもいいかな?
そう呼んだら前みたいになれるんじゃないかな…。駄目かな…?試してみたいんだ」
「そうだな、実は父さんも少し考えていたんだ。
家族だけで会える機会なんて明日が最初で最後になるかもしれない。
この機会を逃したらアンとの関係もこのままになってしまうんじゃないかって…。
こっそりと一度だけ呼んでみるか…。もしアンが受け入れてくれたら…答えてくれるはずだしな」
「良い考えだわ。家族だけならきっとあの子も素を出せるんじゃないかしら。誰にも見られていないなら、私達が丁寧に話さなくてもアンが困った状況になるこも無いでしょう。賛成よ、そうしましょう!」
両親は俺の考えに賛成してくれた。どうやら二人で事前にそんなことを話しあっていたらしい。
そう思っていたのが俺だけじゃなくてとても嬉しかった。
「ずるーい、お兄ちゃんだけ!私もアンお姉ちゃんって呼びたいもん、私が呼ぶわ。きっと妹に呼ばれた方が喜んでくれるもん!」
無邪気に姉であるアンを慕っているミン。
「駄目だミン。お前はきっと嬉しくなって飛びついちゃうからな~」
俺の言葉に妹のミンは頬を膨らませ『しないもん!』って言って拗ねると家族は笑いに包まれた。
そして俺達は与えられた機会を有効に利用することを確認し合った。
家族にとって明日は最高の日になる予定だった。
『アン』っていう名前を呼んだあとに起こるだろう幸せを思い描き、その夜は家族でアンとの関係が前のように戻る前祝いをしてはしゃいでいた。
翌朝、王宮に到着し用意された控えの間で緊張しながらその時を待っていた。
アンと会えるのは婚姻の儀の直前だ。
長々と話しが出来る時間はなく、本当に挨拶のみという時間しか与えられていなかった。
それでも『アン』の名前を呼ぶには十分な時間だし、それさえ言えたらこれからはすべてが変わると信じていたので構わなかった。
気を抜くとにやけそうになる顔を必死で取り繕っている家族。
その様子はおかしかったが、どうしようもなく嬉しいのだから仕方がない。
コンコン…、ギッギ…。
ノックの音と共に扉が開き、婚礼衣装を纏ったアンが一人で静かに入ってくる。
その姿は輝くばかりに美しく幸せそうな笑顔に満ちている。花嫁であるアンの揺るぎない幸せを確信し、家族の目に薄っすらと涙が浮かんでくる。
ちび…お前、幸せなんだな。
良かったよ、本当に良かった…グッスン。
アンが竜王様の番となり色々あったが、アンが番と結ばれ幸せになることを心から祝福する気持ちに嘘はない。
誰よりも俺達家族がアンの幸せを一番に考えていると胸を張って言える。
扉が静かに閉まり部屋には俺達家族だけになった。
待ちに待った機会の訪れに、俺だけでなく両親と妹も嬉しさを隠せていなかった。
いや、今だけは家族水入らずなのだから何も隠さなくていいんだ。
『正式に竜王様の番になる妹は更に遠い存在になってしまうかも』
『もう会うことさえ出来なくなってしまうのでは…』
俺達家族はそう考えていた。
大切なアンとの絆が完全に切れるのは嫌だった。
たとえ以前と同じような関係に戻っていなくても、アンが家族をどう思っていても関係ない、それでもアンはアンなんだ。
父さんと母さんからしたら『大切な娘』で、俺にとっては『可愛いちびで妹』だ。
それに一番下の妹ミンにとって今は憧れの姉だ。
最初の再会から少しずつ言い聞かせてきた。
『アンは本当は姉であること』
『それを他人に絶対に話していけないこと』
『王宮では今までと同じ様に接すること』
これらが理解できるとようになると次はアンについて聞かせた。
アンがどんな子でどんなことに笑い泣いていたか両親や俺が寝る前に毎晩話してやった。
いつしかミンのなかでアンは一緒に暮らしたことはないが大好きな姉になっていた。
だからアンへの想いは一緒に暮らしたことがないミンも含め家族全員同じだった。
離れてはいるがアンは大切な家族なんだ。
王宮からの連絡があった後、俺は父さんに自分の考えを話してみた。
「ねえ、父さん。明日アンと家族だけで会える時に『番様』じゃなくて『アン』って呼んでみてもいいかな?
そう呼んだら前みたいになれるんじゃないかな…。駄目かな…?試してみたいんだ」
「そうだな、実は父さんも少し考えていたんだ。
家族だけで会える機会なんて明日が最初で最後になるかもしれない。
この機会を逃したらアンとの関係もこのままになってしまうんじゃないかって…。
こっそりと一度だけ呼んでみるか…。もしアンが受け入れてくれたら…答えてくれるはずだしな」
「良い考えだわ。家族だけならきっとあの子も素を出せるんじゃないかしら。誰にも見られていないなら、私達が丁寧に話さなくてもアンが困った状況になるこも無いでしょう。賛成よ、そうしましょう!」
両親は俺の考えに賛成してくれた。どうやら二人で事前にそんなことを話しあっていたらしい。
そう思っていたのが俺だけじゃなくてとても嬉しかった。
「ずるーい、お兄ちゃんだけ!私もアンお姉ちゃんって呼びたいもん、私が呼ぶわ。きっと妹に呼ばれた方が喜んでくれるもん!」
無邪気に姉であるアンを慕っているミン。
「駄目だミン。お前はきっと嬉しくなって飛びついちゃうからな~」
俺の言葉に妹のミンは頬を膨らませ『しないもん!』って言って拗ねると家族は笑いに包まれた。
そして俺達は与えられた機会を有効に利用することを確認し合った。
家族にとって明日は最高の日になる予定だった。
『アン』っていう名前を呼んだあとに起こるだろう幸せを思い描き、その夜は家族でアンとの関係が前のように戻る前祝いをしてはしゃいでいた。
翌朝、王宮に到着し用意された控えの間で緊張しながらその時を待っていた。
アンと会えるのは婚姻の儀の直前だ。
長々と話しが出来る時間はなく、本当に挨拶のみという時間しか与えられていなかった。
それでも『アン』の名前を呼ぶには十分な時間だし、それさえ言えたらこれからはすべてが変わると信じていたので構わなかった。
気を抜くとにやけそうになる顔を必死で取り繕っている家族。
その様子はおかしかったが、どうしようもなく嬉しいのだから仕方がない。
コンコン…、ギッギ…。
ノックの音と共に扉が開き、婚礼衣装を纏ったアンが一人で静かに入ってくる。
その姿は輝くばかりに美しく幸せそうな笑顔に満ちている。花嫁であるアンの揺るぎない幸せを確信し、家族の目に薄っすらと涙が浮かんでくる。
ちび…お前、幸せなんだな。
良かったよ、本当に良かった…グッスン。
アンが竜王様の番となり色々あったが、アンが番と結ばれ幸せになることを心から祝福する気持ちに嘘はない。
誰よりも俺達家族がアンの幸せを一番に考えていると胸を張って言える。
扉が静かに閉まり部屋には俺達家族だけになった。
待ちに待った機会の訪れに、俺だけでなく両親と妹も嬉しさを隠せていなかった。
いや、今だけは家族水入らずなのだから何も隠さなくていいんだ。
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