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35.残酷な真実④
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人の感覚を持つ真面目そうな文官が手を挙げながら口を開く。
「あのちょっと分からないのですが…、番様のご家族は丁寧な態度で接していると書いてありますが具体的にどのような態度だったんでしょうか。なんか家族なのに丁寧って表現に違和感がありまして」
その質問に一人の侍女が泣くのを堪えながら自分が見てきた面会の様子を具体的に説明した。
それは驚くような内容で私が思い描いていた面会とはかけ離れたものだった。
報告書では丁寧に接しているとだけ書いてあったので、こんなにも他人行儀だったとは思いもしなかった。
家族なのに娘の名前さえも一度も呼ばずに『番様』とへりくだる。
なんだ、これは!
これでは家族団欒ではなく、番様と臣下の面会のようではないかっ。
アンの家族はなにを考えているんだっ!
面会を希望しておきながらこんなよそよそしい態度で。
まさかっ、娘の竜王の番としての地位を利用しようとでも考えているのか…。
アンは家族との面会を喜んでいると聞いていた。
だからアンの気持ちが踏みにじられたように感じ、10年前に一度会ったきりのアンの家族に怒りが沸いてくる。
「チッ、こんな家族ではアンもさぞがっかりしたしたであろうな…」
誰に聞かせるでもなく呟いた言葉。
だがこの言葉にすぐさま反応を見せた人物がいた。
「申し訳ありません!番様の家族に『番様の為に馴れ馴れしくしないように』と事前に注意をしたのは私です。平民である彼らの行動によって番様が評判を落とすことがない様にと思い勝手に彼らに言い含めました」
そう言って頭を下げたのは宰相だった。
誰も知らない事実だった、それは彼とアンの家族間でのたった一度のやり取りだったからだ。
宰相と侍女達それぞれから状況を確認してみる。
どうやら宰相は家族に釘を刺したが、そこまで他人行儀だとは把握していなかった。念のために事前に注意はしたが、なにか不都合があれば離宮から報告が上がってくると思っていた。結果としてなにもなかったので問題ないと判断していたのだ。
一方侍女達は宰相が家族に言った内容は知らず、家族達が自主的にそう接しており番様自身も嫌な様子を見せず微笑んでいたので問題はないと捉えて、『他人行儀な物言い』までは報告していなかった。
それが明らかな間違いだとお互いに気づかずに。
「…六年ぶりの再会で偉い人からそんな風に言われ平民のご家族は深く考え過ぎたのかもしれませんね。
長命な獣人と短命な人の六年間は同じではありません。人にとって会わない六年間はとても長く、良い方ではなく悪い方に考えが向いてしまうには十分な時間です。
それに会えない間に新しい妹が生まれていたんですよね?
久しぶりに会われたご家族が番様の知っていた以前のご家族と違っていて、番様ご自身も戸惑いもあったのではないでしょうか…。
きっとお互いにすれ違ったままなのかもしれません。まあ、あくまでも私の推測でしかありませんが…」
しんみりとそう言うと文官の目には涙が浮かんでいた。
口では推測と言いながらも彼が確信を持っているのは明らかだった。
「あのちょっと分からないのですが…、番様のご家族は丁寧な態度で接していると書いてありますが具体的にどのような態度だったんでしょうか。なんか家族なのに丁寧って表現に違和感がありまして」
その質問に一人の侍女が泣くのを堪えながら自分が見てきた面会の様子を具体的に説明した。
それは驚くような内容で私が思い描いていた面会とはかけ離れたものだった。
報告書では丁寧に接しているとだけ書いてあったので、こんなにも他人行儀だったとは思いもしなかった。
家族なのに娘の名前さえも一度も呼ばずに『番様』とへりくだる。
なんだ、これは!
これでは家族団欒ではなく、番様と臣下の面会のようではないかっ。
アンの家族はなにを考えているんだっ!
面会を希望しておきながらこんなよそよそしい態度で。
まさかっ、娘の竜王の番としての地位を利用しようとでも考えているのか…。
アンは家族との面会を喜んでいると聞いていた。
だからアンの気持ちが踏みにじられたように感じ、10年前に一度会ったきりのアンの家族に怒りが沸いてくる。
「チッ、こんな家族ではアンもさぞがっかりしたしたであろうな…」
誰に聞かせるでもなく呟いた言葉。
だがこの言葉にすぐさま反応を見せた人物がいた。
「申し訳ありません!番様の家族に『番様の為に馴れ馴れしくしないように』と事前に注意をしたのは私です。平民である彼らの行動によって番様が評判を落とすことがない様にと思い勝手に彼らに言い含めました」
そう言って頭を下げたのは宰相だった。
誰も知らない事実だった、それは彼とアンの家族間でのたった一度のやり取りだったからだ。
宰相と侍女達それぞれから状況を確認してみる。
どうやら宰相は家族に釘を刺したが、そこまで他人行儀だとは把握していなかった。念のために事前に注意はしたが、なにか不都合があれば離宮から報告が上がってくると思っていた。結果としてなにもなかったので問題ないと判断していたのだ。
一方侍女達は宰相が家族に言った内容は知らず、家族達が自主的にそう接しており番様自身も嫌な様子を見せず微笑んでいたので問題はないと捉えて、『他人行儀な物言い』までは報告していなかった。
それが明らかな間違いだとお互いに気づかずに。
「…六年ぶりの再会で偉い人からそんな風に言われ平民のご家族は深く考え過ぎたのかもしれませんね。
長命な獣人と短命な人の六年間は同じではありません。人にとって会わない六年間はとても長く、良い方ではなく悪い方に考えが向いてしまうには十分な時間です。
それに会えない間に新しい妹が生まれていたんですよね?
久しぶりに会われたご家族が番様の知っていた以前のご家族と違っていて、番様ご自身も戸惑いもあったのではないでしょうか…。
きっとお互いにすれ違ったままなのかもしれません。まあ、あくまでも私の推測でしかありませんが…」
しんみりとそう言うと文官の目には涙が浮かんでいた。
口では推測と言いながらも彼が確信を持っているのは明らかだった。
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