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29.悲劇の真相③
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2日前のアンの様子を思い返す。
侍女が声を掛け私が迎えに来たことを伝えるとちゃんと頷いて微笑んでいた。侍女から少し離れたところでそのやり取りを見ていたから間違いない。
あの時点で……会話は成立していた。
それに溢れる想いを押さえつけ控えめに想いを告げた時にもアンはちゃんと返事を返してくれた。
……少し考えてから。
そう、少し考えていたけど確かに『はい…竜王様』と答えてくれていた。
少し間があり、少しだけ首を傾げながら…可愛い声でちゃんと返事をしたのだ。
その後も緊張から口数は少なかったが会話はあった…はず…だ。
いや、あれは…。
本当に会話だったのか……。
次々と湧き上がる違和感に必死になって否定する要素を探してみる。
だが否定どころかすべては違和感を確信へと変えていった。
……そもそも最初は返事はなかった。
私を見て心から微笑んでくれていたがそれだけ…だった。
それが事実。
私が一方的に話し、やっとアンの口から出た言葉を嬉しさのあまり自分に都合よく解釈しただけだ。
……承諾の返事だと。
『……はい…竜王様』この言葉はあいまいでかつ受け取る側にとってどういう意味にもなる微妙な言葉だった。
アンが本当は何も答えていなかっただろう事実に愕然とする。
その後も私が話してアンが微笑みながら頷いているのを会話だと思い込んでいた。
浮かれていた私は愚かにも何も見ていなかったのだ。
すべては思い込み、会話などなかった。
だから耳のことも……気づかずにいた。
いや待て……。耳だけなのか…。
私が気づいていなかったことは、本当にそれだけか…。
それだけではないだろう。
すべて…だ…。
なにも知らない、分かっていない。
だから今こうなって…いるだろうがっ!
このクソッたれがっ…。
耳が聞こえていないことに誰も気づかない事実。
なぜ鼓膜を自ら破いたのかも誰も分からない事実。
そしてなぜ喉を切り裂き死を選択しようとしたのか……。
ゾクリッ……。
大切なことをなにも分かっていない己の無知に恐怖を覚える。
暗闇のなか足掻いても底なし沼に吸い込まれていくのを止められない感覚。
番の傍にいるというのに、それを相殺するほどの恐怖に怯える。
朧気だがそれに自分も関わっているに違いないという心の声。
耳を塞ぎたいがそれをしては絶対にいけないと心が叫んでくる。
ああ、そうだな…。
すべてを知らなければ。
なにを知らずに過ごしてきたのか今こそ知らなくては…。
アンの頬をそっと手で撫でながら、唸るような低い声で周囲の者に命令する。
「アンがなぜ今の状況になったの早急に調べろ。どんな些細なことも見逃すな。
隠し立てや偽りは決して許さん。
分かっているな……、これは王命だ」
竜王の覇気を使いわずかに威圧する。
絶対に間違いがあってはならない、もう二度とこのようなことがないようにしなければ…。
アンが目覚めた時に笑って過ごせるように、彼女を追い詰めたすべてのことを排除しようと動き始めた。
侍女が声を掛け私が迎えに来たことを伝えるとちゃんと頷いて微笑んでいた。侍女から少し離れたところでそのやり取りを見ていたから間違いない。
あの時点で……会話は成立していた。
それに溢れる想いを押さえつけ控えめに想いを告げた時にもアンはちゃんと返事を返してくれた。
……少し考えてから。
そう、少し考えていたけど確かに『はい…竜王様』と答えてくれていた。
少し間があり、少しだけ首を傾げながら…可愛い声でちゃんと返事をしたのだ。
その後も緊張から口数は少なかったが会話はあった…はず…だ。
いや、あれは…。
本当に会話だったのか……。
次々と湧き上がる違和感に必死になって否定する要素を探してみる。
だが否定どころかすべては違和感を確信へと変えていった。
……そもそも最初は返事はなかった。
私を見て心から微笑んでくれていたがそれだけ…だった。
それが事実。
私が一方的に話し、やっとアンの口から出た言葉を嬉しさのあまり自分に都合よく解釈しただけだ。
……承諾の返事だと。
『……はい…竜王様』この言葉はあいまいでかつ受け取る側にとってどういう意味にもなる微妙な言葉だった。
アンが本当は何も答えていなかっただろう事実に愕然とする。
その後も私が話してアンが微笑みながら頷いているのを会話だと思い込んでいた。
浮かれていた私は愚かにも何も見ていなかったのだ。
すべては思い込み、会話などなかった。
だから耳のことも……気づかずにいた。
いや待て……。耳だけなのか…。
私が気づいていなかったことは、本当にそれだけか…。
それだけではないだろう。
すべて…だ…。
なにも知らない、分かっていない。
だから今こうなって…いるだろうがっ!
このクソッたれがっ…。
耳が聞こえていないことに誰も気づかない事実。
なぜ鼓膜を自ら破いたのかも誰も分からない事実。
そしてなぜ喉を切り裂き死を選択しようとしたのか……。
ゾクリッ……。
大切なことをなにも分かっていない己の無知に恐怖を覚える。
暗闇のなか足掻いても底なし沼に吸い込まれていくのを止められない感覚。
番の傍にいるというのに、それを相殺するほどの恐怖に怯える。
朧気だがそれに自分も関わっているに違いないという心の声。
耳を塞ぎたいがそれをしては絶対にいけないと心が叫んでくる。
ああ、そうだな…。
すべてを知らなければ。
なにを知らずに過ごしてきたのか今こそ知らなくては…。
アンの頬をそっと手で撫でながら、唸るような低い声で周囲の者に命令する。
「アンがなぜ今の状況になったの早急に調べろ。どんな些細なことも見逃すな。
隠し立てや偽りは決して許さん。
分かっているな……、これは王命だ」
竜王の覇気を使いわずかに威圧する。
絶対に間違いがあってはならない、もう二度とこのようなことがないようにしなければ…。
アンが目覚めた時に笑って過ごせるように、彼女を追い詰めたすべてのことを排除しようと動き始めた。
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