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28.悲劇の真相②
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「番様は喉を深く切っており出血は酷かったですが一命はとりとめました。今は容体も落ち着いております。傷跡は残りますが幸い声帯は無事ですので回復なされば以前と同じ様に話すことは出来るでしょう。
あと鼓膜の負傷ですが、こちらも時間が経てば自然治癒いたします。ただし多少聴力は落ちるかもしれませんが…たぶん生活には支障はないでしょう」
『喉の傷』のあとに『鼓膜の負傷』についての説明を当たり前のように話す医師。
予期せぬ説明に不安を掻き立てられる。
記憶の中ではあの時アンはナイフで喉のみを傷つけたはずだ。
なのに…なぜ耳を怪我しているんだ?
私が気を失った後になにがあった…。
あの時腕に抱いていたアンは気を失っていたはずだ。
自分で傷をつけられるはずはない…。
それなのに…なぜ?
愛する番の身に何が起きたのか分からない事実に苛立ちが募る。
「鼓膜の負傷だとっ。あの時になぜ耳まで傷ついたんだ?
気を失っていたのに何があったんだっ!」
私は耳の負傷をアンが気を失った後に負ったという前提で詰問する。
私の中では揺るがない真実だったからこそ迷いなどなかった。
だがあっさりとその前提は医師によって否定された。そこにも迷いはない。
「いいえそうではございません。耳の鼓膜が破れたのは、傷の状態から考えて婚姻の儀の直前くらいではないかと思われます。
頬を打たれた衝撃などで破れる事もありますが、両耳共になにか鋭いもので突いたように破れておりましたので、偶然ではなく意図的に破いたと考えられます。
第三者から害されたのであれば何か訴えているはずですが、何もおっしゃっていなかったと聞いております。
おそらく番様が自らの手で鼓膜を破かれたのかと……」
医師は診断に自信を持っているが最後は言葉を濁した。
診察で怪我の状態は診断できるが、状況を考えればそれしか考えようがない事実でも見ていないことは断定しないのだろう。
だが私を愛してくれているアンが私に会う直前に自ら鼓膜を破る意味が分からない。
医師の言葉を聞いて、控えている離宮の侍女達に鋭い視線を送りながら声を押さえて訊ねる。
「お前達、なにか異常に気がつかなかったのか?
本当にアンから誤って怪我をしたとか聞いていないのか…」
みな一様に沈痛な面持ちをしたまま『申し訳ございません』と言ったあと項垂れている。
どうやら誰一人アンの耳の異変に気づかなかったし、何も言われてないようだ。
だがそれはおかしなことだ。
医師の言う通りアンの耳が婚姻の儀の直前から聞こえていなかったとしたら誰も気がつかないはずはない。
耳が聞こえなければ会話が成立しないから、すぐに分かるはずだ。
アンにはたくさんの侍女達がついている。
私が迎えに来たあの時も周りには侍女達がいた、婚姻当日とあって誰もが笑顔で賑やかだったのを覚えている。
記念すべきの日のことだから鮮明に覚えているのだ。
あと鼓膜の負傷ですが、こちらも時間が経てば自然治癒いたします。ただし多少聴力は落ちるかもしれませんが…たぶん生活には支障はないでしょう」
『喉の傷』のあとに『鼓膜の負傷』についての説明を当たり前のように話す医師。
予期せぬ説明に不安を掻き立てられる。
記憶の中ではあの時アンはナイフで喉のみを傷つけたはずだ。
なのに…なぜ耳を怪我しているんだ?
私が気を失った後になにがあった…。
あの時腕に抱いていたアンは気を失っていたはずだ。
自分で傷をつけられるはずはない…。
それなのに…なぜ?
愛する番の身に何が起きたのか分からない事実に苛立ちが募る。
「鼓膜の負傷だとっ。あの時になぜ耳まで傷ついたんだ?
気を失っていたのに何があったんだっ!」
私は耳の負傷をアンが気を失った後に負ったという前提で詰問する。
私の中では揺るがない真実だったからこそ迷いなどなかった。
だがあっさりとその前提は医師によって否定された。そこにも迷いはない。
「いいえそうではございません。耳の鼓膜が破れたのは、傷の状態から考えて婚姻の儀の直前くらいではないかと思われます。
頬を打たれた衝撃などで破れる事もありますが、両耳共になにか鋭いもので突いたように破れておりましたので、偶然ではなく意図的に破いたと考えられます。
第三者から害されたのであれば何か訴えているはずですが、何もおっしゃっていなかったと聞いております。
おそらく番様が自らの手で鼓膜を破かれたのかと……」
医師は診断に自信を持っているが最後は言葉を濁した。
診察で怪我の状態は診断できるが、状況を考えればそれしか考えようがない事実でも見ていないことは断定しないのだろう。
だが私を愛してくれているアンが私に会う直前に自ら鼓膜を破る意味が分からない。
医師の言葉を聞いて、控えている離宮の侍女達に鋭い視線を送りながら声を押さえて訊ねる。
「お前達、なにか異常に気がつかなかったのか?
本当にアンから誤って怪我をしたとか聞いていないのか…」
みな一様に沈痛な面持ちをしたまま『申し訳ございません』と言ったあと項垂れている。
どうやら誰一人アンの耳の異変に気づかなかったし、何も言われてないようだ。
だがそれはおかしなことだ。
医師の言う通りアンの耳が婚姻の儀の直前から聞こえていなかったとしたら誰も気がつかないはずはない。
耳が聞こえなければ会話が成立しないから、すぐに分かるはずだ。
アンにはたくさんの侍女達がついている。
私が迎えに来たあの時も周りには侍女達がいた、婚姻当日とあって誰もが笑顔で賑やかだったのを覚えている。
記念すべきの日のことだから鮮明に覚えているのだ。
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