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26.悲劇のあと
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枕もとでボソボソと話す耳障りな声で眠りから目覚めてしまった。
普段から寝起きはいいはずなのに、なぜか靄が掛かったように頭がはっきりとしない…。微かに動くだけでなぜか頭に激痛が走る。
いったいどうしたんだ…。
なぜ頭がこんなに…痛むんだっ。
なんで、うっうう……。
『おお、竜王様が目を覚まされたぞ!』
近くからそんな声が聞こえて、周りが慌ただしい気配に包まれるのが分かる。
目を開けて起きようとするが周りから『お止めください、まだなりません』と諫められる。
痛む頭に顔を歪ませながら無理矢理上半身を起こし周りを見ると、医者や臣下達がみな部屋にいる。
なぜ彼らがここに居るのか分からない、それにみな同じ表情を浮かべ悲壮感を漂わせている。
「竜王様、頭部の痛みはいかがですか?何があったか覚えてらっしゃいますか?
それにお心の状態は…今どうでしょうか…」
医師のくせに不安げな様子を隠しもせずに訊ねてくる。
「痛みはあるが大丈夫だ。いったい何があった、なぜ私は怪我を負ったのだ?
心とはどういう意味で訊いているんだ…」
私の質問に医師ではなく宰相が前に出てきて代わりに答える。
「竜王様、落ち着いて聞いてください。
番様が婚姻の儀の途中でお倒れになりました。
竜王様が覇気を出して周りを無意識に威圧したため、番様の手当てを優先させるべく武力行使をさせていただきました。
頭部の怪我はその時のものです、申し訳ありません。
そして…、今のお気持ちはいかが、」
「うあぁ、あああーーーー。
アン、アンが血を…流して…、そして…ぐぅっ、」
宰相の説明を聞きながら、あの時の記憶がすべて甦ってくる。痛む頭を掻きむしるように抱え込む。
婚礼衣装を身に纏い微笑んでいるアン。
手を取り合って歩いて行く二人。
そしてアンは手にしたナイフでこちらを見て幸せそうに…微笑みながら…。
……自らの喉を迷うことなく切り裂いた。
全てを思い出し、止める声を無視してベットから飛び起きる。
「竜王様、まだ安静になさってください。
頭部の傷が思いのほか深かったので、まだ何が起こるか分かりません。
どうか落ち着いてください!」
「そうです、まだ動かれてはいけません!」
みなが私をベットに戻そうとするが、寝てなどいられない。
アンの気配を感じるから生きていることは分かる、だがあんな怪我をしたアンの身が心配だ。アンは私のように強靭な肉体を持っているわけではない、大丈夫なはずはない。
くそっ、どれほど寝ていたんだっ。
アンはいったいどこにいるっ!
…どうなったんだ……。
愛おしいアンのことしか考えられない。
「ええい、どけっ、どくんだ。
アンはどうした?私の番はどこにいる!」
「なりません、竜王様」
「どけっ、邪魔をするな!」
部屋を出て行こうとする私と必死に止めようとする臣下達が普通に揉み合う。
その様子を見た宰相は目を見開き驚いたような表情をする。
「‥……狂気には陥っては…いないのですね。
あの時の番様の行動を拒絶とは受け取らずに…なぜ今回は正気を保っていられるのか…」
他の者達も宰相と同じ事を考えているようだ。
あの時のことを傍から見ていればそう思うのも当然だった。
婚姻の儀で死を選ぶなど相手を拒絶すると同じこと。つまり私はアンに拒絶され狂気に負けて自害するのではと想像していたに違いない。
そう、彼らにはアンの言葉が聞こえてはいなかった。
私にだけ聞こえたアンの言葉。
血に塗れ苦し気で途切れ途切れだったけど…それは愛を告げるものだった。
『…よかった…、わた、しもあいして…いる』
微笑ながら私を見つめる瞳に偽りなどなかった。
一切なかったのだ。
番であるアンから確かに受け入れられたと確信できた私はもう狂気に陥ることなど絶対に有り得ない。
互いに『番』として愛し合えている。
だが現実にはアンは目の前で死を選ぼうとした。
分からないことが多すぎる…。
だが色々なことを考えるよりまずはアンの傍に行くことが大事だった。
普段から寝起きはいいはずなのに、なぜか靄が掛かったように頭がはっきりとしない…。微かに動くだけでなぜか頭に激痛が走る。
いったいどうしたんだ…。
なぜ頭がこんなに…痛むんだっ。
なんで、うっうう……。
『おお、竜王様が目を覚まされたぞ!』
近くからそんな声が聞こえて、周りが慌ただしい気配に包まれるのが分かる。
目を開けて起きようとするが周りから『お止めください、まだなりません』と諫められる。
痛む頭に顔を歪ませながら無理矢理上半身を起こし周りを見ると、医者や臣下達がみな部屋にいる。
なぜ彼らがここに居るのか分からない、それにみな同じ表情を浮かべ悲壮感を漂わせている。
「竜王様、頭部の痛みはいかがですか?何があったか覚えてらっしゃいますか?
それにお心の状態は…今どうでしょうか…」
医師のくせに不安げな様子を隠しもせずに訊ねてくる。
「痛みはあるが大丈夫だ。いったい何があった、なぜ私は怪我を負ったのだ?
心とはどういう意味で訊いているんだ…」
私の質問に医師ではなく宰相が前に出てきて代わりに答える。
「竜王様、落ち着いて聞いてください。
番様が婚姻の儀の途中でお倒れになりました。
竜王様が覇気を出して周りを無意識に威圧したため、番様の手当てを優先させるべく武力行使をさせていただきました。
頭部の怪我はその時のものです、申し訳ありません。
そして…、今のお気持ちはいかが、」
「うあぁ、あああーーーー。
アン、アンが血を…流して…、そして…ぐぅっ、」
宰相の説明を聞きながら、あの時の記憶がすべて甦ってくる。痛む頭を掻きむしるように抱え込む。
婚礼衣装を身に纏い微笑んでいるアン。
手を取り合って歩いて行く二人。
そしてアンは手にしたナイフでこちらを見て幸せそうに…微笑みながら…。
……自らの喉を迷うことなく切り裂いた。
全てを思い出し、止める声を無視してベットから飛び起きる。
「竜王様、まだ安静になさってください。
頭部の傷が思いのほか深かったので、まだ何が起こるか分かりません。
どうか落ち着いてください!」
「そうです、まだ動かれてはいけません!」
みなが私をベットに戻そうとするが、寝てなどいられない。
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くそっ、どれほど寝ていたんだっ。
アンはいったいどこにいるっ!
…どうなったんだ……。
愛おしいアンのことしか考えられない。
「ええい、どけっ、どくんだ。
アンはどうした?私の番はどこにいる!」
「なりません、竜王様」
「どけっ、邪魔をするな!」
部屋を出て行こうとする私と必死に止めようとする臣下達が普通に揉み合う。
その様子を見た宰相は目を見開き驚いたような表情をする。
「‥……狂気には陥っては…いないのですね。
あの時の番様の行動を拒絶とは受け取らずに…なぜ今回は正気を保っていられるのか…」
他の者達も宰相と同じ事を考えているようだ。
あの時のことを傍から見ていればそう思うのも当然だった。
婚姻の儀で死を選ぶなど相手を拒絶すると同じこと。つまり私はアンに拒絶され狂気に負けて自害するのではと想像していたに違いない。
そう、彼らにはアンの言葉が聞こえてはいなかった。
私にだけ聞こえたアンの言葉。
血に塗れ苦し気で途切れ途切れだったけど…それは愛を告げるものだった。
『…よかった…、わた、しもあいして…いる』
微笑ながら私を見つめる瞳に偽りなどなかった。
一切なかったのだ。
番であるアンから確かに受け入れられたと確信できた私はもう狂気に陥ることなど絶対に有り得ない。
互いに『番』として愛し合えている。
だが現実にはアンは目の前で死を選ぼうとした。
分からないことが多すぎる…。
だが色々なことを考えるよりまずはアンの傍に行くことが大事だった。
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