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25.婚姻の儀~竜王視点~④
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「…‥……」
いくら待っても愛おしい番からの返事はない。
にこにこと嬉しそうに微笑んでいるが決して私が名を呼ぶのは許してくれない。
この表情がなかったら拒絶だと思ってしまうところだが、番の表情は決して私を拒んではいなかった。湧き出るような好意が私には伝わってくる。
その事実に安堵しつつも焦りがそれを上回る。
何か言い方を間違えてしまったのだろうか?
いきなり過ぎたのだろうか…。
くっ、…何がいけなかったのか分からない。
「すまない、10年ぶりに会っていきなり過ぎたな…。そなたと婚姻を結べるのが嬉しくてつい浮かれてしまった。
そなたが良いと思うまでいつまでも待とう。
それまではそうだな…、番と呼ぼう。
…それは…いいかな?」
これが正解なのか分からない、自分で言った言葉に不安が募る。
それだけはどうか許して欲しい…。
アン、お願いだ。
…心の中でだけそっとアンと愛おしい番を名で呼ぶ。
縋るようにアンをじっと見つめていると、彼女は少し間をおいてから口を開く。
「……はい…竜王様」
少し首を傾げながら可愛い声音で答えてくれる。
初めて成立したアンとの会話。
アンの甘い声がいつまでも耳に残り、心の中は喜びで荒れ狂う。
名はまだ呼べないが、唯一無二の存在である『番』と呼ぶことが許され、それだけで有頂天になってしまった。
舞い上がっていたのだ…。
だからアンがその後も話さず微笑んで頷いてくれているだけという事実を違和感とは思わず緊張からだと勝手に思い込んでしまった。
緊張を和らげようと優しく笑い掛け、一方的に話し過ぎないようにした。
彼女のぺースに合わせたつもりだった。
話したいことはたくさんあったが、いきなり距離を縮めようとして彼女を困惑させたくないという思いからだ。
時間はこの後たっぷりある。
まずは婚姻の儀を終わらせよう。
重要なことを見逃しているとは思いもせず、すべてを良い方に解釈していく。幸せの絶頂にいればそれも当然だろう。
どんな時もこれから起こることを完璧に予想など誰も出来ない。
みなから祝福され問題なく式は進んだ。
そう何の問題も無いはずだった……。
目の前でアンが喉を自ら切り裂くその時まで。
純白が一瞬で深紅に変わる。
幸せの絶頂から一瞬で地獄へと転がり落ちる。
騒然とする参列者達や必死の形相な臣下達がその場を更に混乱へと誘う。
自分の絶叫がどこか遠くから聞こえてくるような感覚、現実にちゃんと感情が追いついているのかすら分からない。
困惑、絶望、焦燥…。
ありとあらゆる負の感情が心を埋め尽くしていく。
ああぁ…アン、アン…。
どう…してなんだ…。
アン…ア…ン、アン、アン、ア……。
血に塗れたアンが微かな声で言葉を紡ぐ。
そんなアンを腕に抱き締め絶叫している私は頭部への鈍痛と共に意識を失った。
いくら待っても愛おしい番からの返事はない。
にこにこと嬉しそうに微笑んでいるが決して私が名を呼ぶのは許してくれない。
この表情がなかったら拒絶だと思ってしまうところだが、番の表情は決して私を拒んではいなかった。湧き出るような好意が私には伝わってくる。
その事実に安堵しつつも焦りがそれを上回る。
何か言い方を間違えてしまったのだろうか?
いきなり過ぎたのだろうか…。
くっ、…何がいけなかったのか分からない。
「すまない、10年ぶりに会っていきなり過ぎたな…。そなたと婚姻を結べるのが嬉しくてつい浮かれてしまった。
そなたが良いと思うまでいつまでも待とう。
それまではそうだな…、番と呼ぼう。
…それは…いいかな?」
これが正解なのか分からない、自分で言った言葉に不安が募る。
それだけはどうか許して欲しい…。
アン、お願いだ。
…心の中でだけそっとアンと愛おしい番を名で呼ぶ。
縋るようにアンをじっと見つめていると、彼女は少し間をおいてから口を開く。
「……はい…竜王様」
少し首を傾げながら可愛い声音で答えてくれる。
初めて成立したアンとの会話。
アンの甘い声がいつまでも耳に残り、心の中は喜びで荒れ狂う。
名はまだ呼べないが、唯一無二の存在である『番』と呼ぶことが許され、それだけで有頂天になってしまった。
舞い上がっていたのだ…。
だからアンがその後も話さず微笑んで頷いてくれているだけという事実を違和感とは思わず緊張からだと勝手に思い込んでしまった。
緊張を和らげようと優しく笑い掛け、一方的に話し過ぎないようにした。
彼女のぺースに合わせたつもりだった。
話したいことはたくさんあったが、いきなり距離を縮めようとして彼女を困惑させたくないという思いからだ。
時間はこの後たっぷりある。
まずは婚姻の儀を終わらせよう。
重要なことを見逃しているとは思いもせず、すべてを良い方に解釈していく。幸せの絶頂にいればそれも当然だろう。
どんな時もこれから起こることを完璧に予想など誰も出来ない。
みなから祝福され問題なく式は進んだ。
そう何の問題も無いはずだった……。
目の前でアンが喉を自ら切り裂くその時まで。
純白が一瞬で深紅に変わる。
幸せの絶頂から一瞬で地獄へと転がり落ちる。
騒然とする参列者達や必死の形相な臣下達がその場を更に混乱へと誘う。
自分の絶叫がどこか遠くから聞こえてくるような感覚、現実にちゃんと感情が追いついているのかすら分からない。
困惑、絶望、焦燥…。
ありとあらゆる負の感情が心を埋め尽くしていく。
ああぁ…アン、アン…。
どう…してなんだ…。
アン…ア…ン、アン、アン、ア……。
血に塗れたアンが微かな声で言葉を紡ぐ。
そんなアンを腕に抱き締め絶叫している私は頭部への鈍痛と共に意識を失った。
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