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18.壊れゆく番③
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竜王の為の後宮がまだ残されている事は知っていた。
侍女達から男女間のことをそれとなく教えられるうちに言われたのだ。
『竜王様は寛大な心をお持ちですから、番様が見つかった後も後宮を残しているのですよ。
後宮がいきなり解体されたら女性達が路頭に迷ってしまいますからね。全員の嫁ぎ先が見つかるまで残してあげているのです。なんてお優しい方でしょうか』
その時は『そうなね、お優しい方なのね』としか思わなかった。
何も知らなかったから。本当に後宮の女性達の嫁ぎ先が見つかるまでのこと信じていたから。
ああ、私はなんて愚かだったのか。
信じるなんて…。
一度も会いに来ない番を信じてるなんて…。
聞きたくもない声が耳に入ってくる。それは後宮で過ごしている竜王と女性達の声。
『竜王様、どうですかこの髪型?この前いらっしゃた時に髪型を気に入ってくださっていたので今日も張り切りましたわ、うふふ』
『…ああ、そうか』
『あら、あなたの髪型なんて竜王様は覚えてもいないわよ。それよりもこのお酒はいかがですか?竜王様の為に故郷から取り寄せましたのよ、召し上がってくださいませ』
『…ああ、飲んでみよう』
『うふふ、竜王様』
『もう竜王様ったら』
『もっとこちらにいらして竜王様♪』
女性達の媚びるような甘い声とそれに応える竜王の硬い声。
竜王を囲い後宮の女性達がその寵を奪い合うかのように楽し気な話を披露し合う声がこの離宮まで聞こえてくる。
聞きたくなくて耳を塞いでも、聴力が発達した耳は残酷なほど現実を教えてくれる。
離宮に来ない竜王は後宮にいると。
その現実に心が蝕まれていく。
もうやめて、おね…が…。
辛いの、心が引き裂かれるわ。
どうして番の私のところに来ないのにそこにいるの…。
貴方にとって私はなに?
唯一ではないの…。
どうして私を求めてはくれないの。
いや…、いや…。
他の人を…見ないで、話し掛けないで!
その目も声も、私のためにあるのでは…ないの?
一度たりとも会いに来てくれない竜王が後宮で女性に囲まれて楽しく過ごしている現実を知てしまった。きっと私が知らなかっただけで、ずっと通い続けているのだろう。
癒されるために…。
獣人としての特徴をこれほど憎んだことはない。
こんなことなら、この耳を落としてしまおうか…。
聞きたくない事を聞かせる耳は要らないわ。
ああ、やだやだ…。
私に聞かせないで、そんな声を。
楽しげな声は夜遅くまで続いた。
頭から離れない声が永遠と流れ続けて、頭がぼうっとしてちゃんと考えることが出来ない。
翌日、ふらふらとしながら普段なら決して言わない本音をポツリと呟いた。
侍女達から男女間のことをそれとなく教えられるうちに言われたのだ。
『竜王様は寛大な心をお持ちですから、番様が見つかった後も後宮を残しているのですよ。
後宮がいきなり解体されたら女性達が路頭に迷ってしまいますからね。全員の嫁ぎ先が見つかるまで残してあげているのです。なんてお優しい方でしょうか』
その時は『そうなね、お優しい方なのね』としか思わなかった。
何も知らなかったから。本当に後宮の女性達の嫁ぎ先が見つかるまでのこと信じていたから。
ああ、私はなんて愚かだったのか。
信じるなんて…。
一度も会いに来ない番を信じてるなんて…。
聞きたくもない声が耳に入ってくる。それは後宮で過ごしている竜王と女性達の声。
『竜王様、どうですかこの髪型?この前いらっしゃた時に髪型を気に入ってくださっていたので今日も張り切りましたわ、うふふ』
『…ああ、そうか』
『あら、あなたの髪型なんて竜王様は覚えてもいないわよ。それよりもこのお酒はいかがですか?竜王様の為に故郷から取り寄せましたのよ、召し上がってくださいませ』
『…ああ、飲んでみよう』
『うふふ、竜王様』
『もう竜王様ったら』
『もっとこちらにいらして竜王様♪』
女性達の媚びるような甘い声とそれに応える竜王の硬い声。
竜王を囲い後宮の女性達がその寵を奪い合うかのように楽し気な話を披露し合う声がこの離宮まで聞こえてくる。
聞きたくなくて耳を塞いでも、聴力が発達した耳は残酷なほど現実を教えてくれる。
離宮に来ない竜王は後宮にいると。
その現実に心が蝕まれていく。
もうやめて、おね…が…。
辛いの、心が引き裂かれるわ。
どうして番の私のところに来ないのにそこにいるの…。
貴方にとって私はなに?
唯一ではないの…。
どうして私を求めてはくれないの。
いや…、いや…。
他の人を…見ないで、話し掛けないで!
その目も声も、私のためにあるのでは…ないの?
一度たりとも会いに来てくれない竜王が後宮で女性に囲まれて楽しく過ごしている現実を知てしまった。きっと私が知らなかっただけで、ずっと通い続けているのだろう。
癒されるために…。
獣人としての特徴をこれほど憎んだことはない。
こんなことなら、この耳を落としてしまおうか…。
聞きたくない事を聞かせる耳は要らないわ。
ああ、やだやだ…。
私に聞かせないで、そんな声を。
楽しげな声は夜遅くまで続いた。
頭から離れない声が永遠と流れ続けて、頭がぼうっとしてちゃんと考えることが出来ない。
翌日、ふらふらとしながら普段なら決して言わない本音をポツリと呟いた。
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