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16.壊れゆく番①
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幼かった私も成長し、色々なことを教わり自分の立場も分かってきた。
私の番である竜王様は偉大な王で人々から尊敬され慕われているようだ。
周りにいる侍女達はことある毎に
『素晴らしいお方ですわ、番様が羨ましいです』
『弱き者も決して見捨てたりしない寛大なお心を持っているのですよ』
『そして番様を何より大切に想われていますわ』
と嬉しそうに話してくれる。
繰り返されるその言葉はいつの間にか心に刻み込まれていた。
番と会えない辛さ、家族と会えない淋しさをその言葉で埋めようとするが、埋まることはない。
もう『なぜ』と質問はしなくなった、無駄だから…。
兎に角良い子にして時が来るのを待っているだけ。番に会える時を、家族に会える時を。
そして家族と定期的に会うようになったが穴は埋まるどころか大きくなってしまった。
でももう夜こっそりと泣く事も無い、泣くということがどういう事だったか思い出せない。
泣いてもなにも変わらなかったわ。
なにも…ただ熱い液体が目から出ているだけ。
だからあれは意味のない行為よね…。
いらないから、もういいわ。
鏡に映る私はいつも微笑んでいる。とても幸せそうな表情で…。
暫くすると自分の間違いに気づく。
あっ…、そうだわ。
これは私じゃなかったわね。
この子は私じゃない、誰か。
幸せな誰か…。
うっふっふ、いいな…。
私もいつか幸せになりたいなぁ。
『あなたはいいわね、幸せそうで』
『ソウネ、シアワセダワ。アンハ、チガウノ?』
『……よく分からないわ。周りからは幸せだと言われているけど、これが幸せなのかしら…。
よく分からないわ、もう…なにも。分かっているのは番様は幸せなんだと言うことだけかな…』
『フーン、ムズカシイワネ。モットタンジュンジニ、カンガエタラ?』
鏡の誰かが言うことを考えてみるが、答えは見つからない。
『ダカラー、アンガ、シアワセダトオモウコトヲ、スルノヨ!』
『思うこと…?』
バタンッ!
お茶を持って侍女が戻ってきた。訝しげな顔をしてこちらを見てくる。
「番様、あの…話し声が聞こえていたのですが。えっと…独り言でしたか?」
侍女はここに私以外いないのが分かっているから、独り言かと聞いてくるのだろう。
知られたら駄目だ。もしあの子の存在を知られたら私の名を呼んでくれる人がいなくなるから。
よく分からないけど…あの子は私にとって必要なのだ。
失えない、奪われない。
あの子だけは…。
私は微笑みながら相手が求めているであろう最善の答えを差し出す。
「独り言ではないわ。外の木にとまっていた可愛い小鳥と話していたのよ。でもあなたが来たから驚いて逃げてしまったわ」
ちゃんと残念そうな表情をすれば、侍女は私の言葉を信じてぱっと表情を明るくする。
「そうですか、申し訳ないことしました。でもまた番様に会いに来てくれますよ」
「うっふふ、そうね。私もそう思うわ、あの子にはまたすぐ会える、きっと」
そう言いながら込み上げてくる笑いを必死に抑えようとするが、堪え切れずに笑い声が出てしまう。
うっふっふ、あっははは…。
いつになく明るく笑う私に侍女達は満足そうな顔を向けてくる。
みな私の行動を疑うことはないと分かり、安堵する。
そしてより一層笑い声を響かせる。
大丈夫、大丈夫、大丈夫、何の問題も無いわ。
この頃すべてが順調で心にあった痛みも気づけば感じられなくなっていた。
私の番である竜王様は偉大な王で人々から尊敬され慕われているようだ。
周りにいる侍女達はことある毎に
『素晴らしいお方ですわ、番様が羨ましいです』
『弱き者も決して見捨てたりしない寛大なお心を持っているのですよ』
『そして番様を何より大切に想われていますわ』
と嬉しそうに話してくれる。
繰り返されるその言葉はいつの間にか心に刻み込まれていた。
番と会えない辛さ、家族と会えない淋しさをその言葉で埋めようとするが、埋まることはない。
もう『なぜ』と質問はしなくなった、無駄だから…。
兎に角良い子にして時が来るのを待っているだけ。番に会える時を、家族に会える時を。
そして家族と定期的に会うようになったが穴は埋まるどころか大きくなってしまった。
でももう夜こっそりと泣く事も無い、泣くということがどういう事だったか思い出せない。
泣いてもなにも変わらなかったわ。
なにも…ただ熱い液体が目から出ているだけ。
だからあれは意味のない行為よね…。
いらないから、もういいわ。
鏡に映る私はいつも微笑んでいる。とても幸せそうな表情で…。
暫くすると自分の間違いに気づく。
あっ…、そうだわ。
これは私じゃなかったわね。
この子は私じゃない、誰か。
幸せな誰か…。
うっふっふ、いいな…。
私もいつか幸せになりたいなぁ。
『あなたはいいわね、幸せそうで』
『ソウネ、シアワセダワ。アンハ、チガウノ?』
『……よく分からないわ。周りからは幸せだと言われているけど、これが幸せなのかしら…。
よく分からないわ、もう…なにも。分かっているのは番様は幸せなんだと言うことだけかな…』
『フーン、ムズカシイワネ。モットタンジュンジニ、カンガエタラ?』
鏡の誰かが言うことを考えてみるが、答えは見つからない。
『ダカラー、アンガ、シアワセダトオモウコトヲ、スルノヨ!』
『思うこと…?』
バタンッ!
お茶を持って侍女が戻ってきた。訝しげな顔をしてこちらを見てくる。
「番様、あの…話し声が聞こえていたのですが。えっと…独り言でしたか?」
侍女はここに私以外いないのが分かっているから、独り言かと聞いてくるのだろう。
知られたら駄目だ。もしあの子の存在を知られたら私の名を呼んでくれる人がいなくなるから。
よく分からないけど…あの子は私にとって必要なのだ。
失えない、奪われない。
あの子だけは…。
私は微笑みながら相手が求めているであろう最善の答えを差し出す。
「独り言ではないわ。外の木にとまっていた可愛い小鳥と話していたのよ。でもあなたが来たから驚いて逃げてしまったわ」
ちゃんと残念そうな表情をすれば、侍女は私の言葉を信じてぱっと表情を明るくする。
「そうですか、申し訳ないことしました。でもまた番様に会いに来てくれますよ」
「うっふふ、そうね。私もそう思うわ、あの子にはまたすぐ会える、きっと」
そう言いながら込み上げてくる笑いを必死に抑えようとするが、堪え切れずに笑い声が出てしまう。
うっふっふ、あっははは…。
いつになく明るく笑う私に侍女達は満足そうな顔を向けてくる。
みな私の行動を疑うことはないと分かり、安堵する。
そしてより一層笑い声を響かせる。
大丈夫、大丈夫、大丈夫、何の問題も無いわ。
この頃すべてが順調で心にあった痛みも気づけば感じられなくなっていた。
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