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24.リラの追及とイーライの告白②
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最初に彼が『心に決めた人がいる』と言った時はあえてその言葉だけを聞き流した。
彼には私と付き合う前には他に好きな人がいたんだなと思って胸が苦しくなったから。
今は私のことだけを好きだと信じていても、やはり複雑な思いは捨てきれなかった。
でも彼が一途に想い続けていたのは私だった。
ねえ、信じられる?!
彼はずっと私のことが好きだったなんて!
衝撃の告白を受け、私は心のなかで舞い踊る。
実際に踊るのを我慢したのは、鶏を抱いて手が離せなかったからだ。
「でもどうして年上のふりをしたの?ちょっと意地悪だわ」
照れ隠し半分、素朴な疑問半分で、イーライが本当の年齢を明かさなかったことを少しだけ責めてみる。
「訂正をしなかったことは認めるけど、ふりなんてしていない。リラが勝手にそう勘違いしたんだ。でも『お兄様みたいに年上で頼りになる人が好き』ってリラが昔に言っていたから、そう見えるように心掛けていた。そこは計算していたと言えるかな、すまない。好きになってもらおうと必死だったんだ。許してくれるかい?」
「も、もちろんよ。…覚えていてくれてありがとう」
「どういたしまして」
兄を好き?…確かに言った覚えがある。
幼い頃の私はまだ兄が大好きで、……実は今もまあまあ大好きだ。
イーライは謝っているけど嬉しそうな顔をしている。それは私が彼の告白を喜んでいるのが伝わっているからだと思う。
「離宮に来た目的はリラとの再会だった。私の気持ちを伝えて婚約を申し込もうと思っていたんだ。
だがリラが噂を信じて勘違いをして、私はそれを利用しようと思ってしまった。第二王子ではなくて、私自身を好きになって欲しかった。……それにリラの選択肢を奪いたくなかった。王族からの婚約の打診なんて断れないと思ったんだ。だがリラは違ったみたいだけどね」
彼は声を上げて笑いながら『リラの行動力には敵わない』と優しく言う。
そして手を伸ばし私の頬を壊れ物に触るかのようにそっと撫でる。
――イーライは全然変わってなかった。
第二王子なのに王族の権威を振り回すことはない。真っ直ぐで、それでいて自分よりも他人の気持ちを優先しようとする。
十年前のおやつの時間を思い出す。
私達の前には2種類のケーキが用意されて、私はお姉さんぶりたかった。
『小さな子が先に選んでいいわ』
『ありがとう。僕、こっちがいいな』
イザク殿下は私が食べたかったほうを選んだ。
(年下の子には優しくするもん…!)
そう思って頑張るけど目に涙が浮かんでしまう。
『リラ、どうぞ』
彼は選んだほうのケーキを私にくれる。
『えっ、だって苺のケーキはイザク殿下のよ』
『僕はそんなに好きじゃないから』
彼は大好きな苺を好きじゃないと言いながら、そっとハンカチで私の目元を拭った。
『これは涙じゃないのよ…』
『うん知ってる。汗を拭かないと目が風邪引いちゃうよ』
『…ありがとう』
『どういたしまして』
彼はその後、私の鼻水もさり気なく拭いてくれた。
彼は昔からそういう人だった。
子供の頃はそんなイーライを可愛い妹ととしか思っていなかった。
でも今は違う。
大人になった彼と会って、私はその優しさや気遣いに自然と惹かれていった。
そして彼は十年前から私を想ってくれていたと今日知った。
――まさに幸せの真っ只中。
彼の腕に飛び込もうとしたまさにその時、また新たな疑問が浮かんで来る。
十年前の私に好きになる要素はあっただろうか…。
「リラ?」
「イーライ、ちょっと待ってて。大切なことを確認しているから!」
うーんと唸りながらしばらく考えてみる。
けれども蘇るのは森での置き去りなど無邪気な私の悪行のみ。
………ないわ。
悲しいことに好きになるような要素は一つも思い浮かばない。疑問の答えを私の記憶に求めたら、自分の心を自分で抉ることになってしまった。
もう落ち込むしかない…。
「リラ、一人で悩まないで何でも聞いてくれ。まだ尋問の途中だろ?」
イーライは絶妙なタイミングで包み込むように優しい声音で聞いてくる。
だから勇気を出して聞いてみる。
「あの…、私のことずっと前から好きだったのよね…?」
「そうだ、十年前からリラのことが好きだった。そして再会してその想いはより強くなった」
イーライは自分の気持ちを隠すことなく言葉にしてくれる。
真面目だから隠し事も偽りもなしという約束を守っているだけかもしれないけれど、私の心臓はドキドキしっぱなしだ。
でも嬉しいから止めなくて良し…。
「どこが好きだったのか聞いていい?」
「明るく前向きでどんな時でも笑っているけど、たまに我慢できずに泣いて、でも最後には私の隣で笑っているリラが好きだった。そしてその想いは現在進行形だ」
イーライは満点の答えを口にして微笑んでくる。
あっ、同じだわ…。
その姿には十年前の幼い彼の面影がしっかり残っていた。
「リラ、他に聞きたいことはある?わだかまりは残したくなから我慢はしないで。それともこれで尋問は終わり?」
そう尋ねてくる彼はもう私の答えを知っているはずだ。
彼には私と付き合う前には他に好きな人がいたんだなと思って胸が苦しくなったから。
今は私のことだけを好きだと信じていても、やはり複雑な思いは捨てきれなかった。
でも彼が一途に想い続けていたのは私だった。
ねえ、信じられる?!
彼はずっと私のことが好きだったなんて!
衝撃の告白を受け、私は心のなかで舞い踊る。
実際に踊るのを我慢したのは、鶏を抱いて手が離せなかったからだ。
「でもどうして年上のふりをしたの?ちょっと意地悪だわ」
照れ隠し半分、素朴な疑問半分で、イーライが本当の年齢を明かさなかったことを少しだけ責めてみる。
「訂正をしなかったことは認めるけど、ふりなんてしていない。リラが勝手にそう勘違いしたんだ。でも『お兄様みたいに年上で頼りになる人が好き』ってリラが昔に言っていたから、そう見えるように心掛けていた。そこは計算していたと言えるかな、すまない。好きになってもらおうと必死だったんだ。許してくれるかい?」
「も、もちろんよ。…覚えていてくれてありがとう」
「どういたしまして」
兄を好き?…確かに言った覚えがある。
幼い頃の私はまだ兄が大好きで、……実は今もまあまあ大好きだ。
イーライは謝っているけど嬉しそうな顔をしている。それは私が彼の告白を喜んでいるのが伝わっているからだと思う。
「離宮に来た目的はリラとの再会だった。私の気持ちを伝えて婚約を申し込もうと思っていたんだ。
だがリラが噂を信じて勘違いをして、私はそれを利用しようと思ってしまった。第二王子ではなくて、私自身を好きになって欲しかった。……それにリラの選択肢を奪いたくなかった。王族からの婚約の打診なんて断れないと思ったんだ。だがリラは違ったみたいだけどね」
彼は声を上げて笑いながら『リラの行動力には敵わない』と優しく言う。
そして手を伸ばし私の頬を壊れ物に触るかのようにそっと撫でる。
――イーライは全然変わってなかった。
第二王子なのに王族の権威を振り回すことはない。真っ直ぐで、それでいて自分よりも他人の気持ちを優先しようとする。
十年前のおやつの時間を思い出す。
私達の前には2種類のケーキが用意されて、私はお姉さんぶりたかった。
『小さな子が先に選んでいいわ』
『ありがとう。僕、こっちがいいな』
イザク殿下は私が食べたかったほうを選んだ。
(年下の子には優しくするもん…!)
そう思って頑張るけど目に涙が浮かんでしまう。
『リラ、どうぞ』
彼は選んだほうのケーキを私にくれる。
『えっ、だって苺のケーキはイザク殿下のよ』
『僕はそんなに好きじゃないから』
彼は大好きな苺を好きじゃないと言いながら、そっとハンカチで私の目元を拭った。
『これは涙じゃないのよ…』
『うん知ってる。汗を拭かないと目が風邪引いちゃうよ』
『…ありがとう』
『どういたしまして』
彼はその後、私の鼻水もさり気なく拭いてくれた。
彼は昔からそういう人だった。
子供の頃はそんなイーライを可愛い妹ととしか思っていなかった。
でも今は違う。
大人になった彼と会って、私はその優しさや気遣いに自然と惹かれていった。
そして彼は十年前から私を想ってくれていたと今日知った。
――まさに幸せの真っ只中。
彼の腕に飛び込もうとしたまさにその時、また新たな疑問が浮かんで来る。
十年前の私に好きになる要素はあっただろうか…。
「リラ?」
「イーライ、ちょっと待ってて。大切なことを確認しているから!」
うーんと唸りながらしばらく考えてみる。
けれども蘇るのは森での置き去りなど無邪気な私の悪行のみ。
………ないわ。
悲しいことに好きになるような要素は一つも思い浮かばない。疑問の答えを私の記憶に求めたら、自分の心を自分で抉ることになってしまった。
もう落ち込むしかない…。
「リラ、一人で悩まないで何でも聞いてくれ。まだ尋問の途中だろ?」
イーライは絶妙なタイミングで包み込むように優しい声音で聞いてくる。
だから勇気を出して聞いてみる。
「あの…、私のことずっと前から好きだったのよね…?」
「そうだ、十年前からリラのことが好きだった。そして再会してその想いはより強くなった」
イーライは自分の気持ちを隠すことなく言葉にしてくれる。
真面目だから隠し事も偽りもなしという約束を守っているだけかもしれないけれど、私の心臓はドキドキしっぱなしだ。
でも嬉しいから止めなくて良し…。
「どこが好きだったのか聞いていい?」
「明るく前向きでどんな時でも笑っているけど、たまに我慢できずに泣いて、でも最後には私の隣で笑っているリラが好きだった。そしてその想いは現在進行形だ」
イーライは満点の答えを口にして微笑んでくる。
あっ、同じだわ…。
その姿には十年前の幼い彼の面影がしっかり残っていた。
「リラ、他に聞きたいことはある?わだかまりは残したくなから我慢はしないで。それともこれで尋問は終わり?」
そう尋ねてくる彼はもう私の答えを知っているはずだ。
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