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17.第二王子の容赦ない追及
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「イザク殿下!こんな状況になった原因をひよこ殿下と結びつけるのは、いくらなんでも無理があります。確かに鳥としては賢いほうですが、実際には人の言葉を理解していません。ましてや悪意を持って企んで行動するなんて絶対に有りえません。無害で可愛いひよこです」
長い付き合いだからエレンは私が考えついたこと察したのだろう。
至極真っ当な反論を彼は口にする。
以前の私だったら迷うことなくその意見に賛同していただろう。
だが今はそれは違うと断言出来る。
「エレン、まずは振り返って足元を見ろ」
「……は、はい」
そう言いながら私はひよこを指さした。
エレンは訳が分からないという表情をしながらも、私の言葉に従う。
ひよこ殿下は右足でつま先立ちして左足は宙に舞い、両羽は後ろ斜め45度の状態で固まっている。
『1ミリでも動いたら今夜の夕食はお前だ』と私が警告してから、本当に動いていない。
いや、それはちょっと違うか。
プルプルと小刻みに震えているから、正確には少しだけ動き続けている。
ふっ、必死だな…。
エレンはひよこ殿下を凝視したまま固まっている。
自分の先ほどの発言が正しくなかったとこれで認識出来たことだろう。
「分かっただろう、このひよこは人の言葉を完璧に理解している。それを前提で考えれば、全て辻褄が合う。コイツの正体は有害で腹黒なひよこだ」
「……はっは…は」
現実を受け止められないのか、エレンが少し壊れる。
私だって警告の言葉を口にした時はまだ半信半疑だった。ひよこが絡んでいると考えたら全ての辻褄が合うと頭では分かっていても、まさか…という常識的な考えを捨てきれなかった。
今だって私はリラを失いたくないと必死だからこそ、理解を超えた現実を受け入れているだけだ。
エレン、お前の反応は正しいからな。
これで全てが解決したわけではない。リラに何があったのか、それを確認しなくてはならないのだ。
だからエレンには正気に戻って貰わないと困る。
「エレン、現実逃避している時間はない!リラの誤解を解いて暴走を止めるには、何があったか正しく把握する必要がある。早速、尋問を始めるぞ」
「承知しました、イザク殿下」
流石はエレンだった。
私の言葉にすぐに我を取り戻して、ひよこの身柄を取り押さえる。
「ピルピルピル…(誤解なんです…)」
ひよこは目をウルウルさせながらエレンに縋りつくが、その手はもう通用しない。
「無駄だ、もう騙されないからな。イザク殿下、このひよこは人の言葉を理解していますが、私達はひよこ語が分かりません。どうやって尋問をしますか?」
ひよこへの尋問など経験はない。そもそも必要に迫られたことはなかったからだ。
ひよこ語が分かる人間は存在しない。リラの通訳だって『こう思っているのだろうな』というレベルの思い込みなのだから。
もちろんそれを承知でエレンもリラに通訳をお願いしたのだ、私のために…。
「とりあえず簡単な文字盤を用意してくれ。それを使って意思の疎通を試してみる」
「ひよこが文字盤を使えますかね…」
普通なら使えない、けれどもコイツに常識は当てはまらない。
私達は中庭から離宮内にある私の執務室に移動する。
そしてエレンは『文字盤を探してきます』と部屋を出ていき、数分後に文字盤を持って戻ってきた。
エレンはテーブルの上にいるひよこの隣に持ってきた文字盤をそっと置く。
もうひよこは震えてはいない。どうやらかなり図太い神経の持ち主のようだ。
文字盤は子供が遊びながら文字を覚えるもので、大きな字で文字と数字と【はい】と【いいえ】が書いてある。
私はテーブルに近づいて、ひよこを見下ろす。
「さあ、始めよう。私が質問するからお前は文字盤を使って答えるんだ。分かったか?」
ひよこは小首を傾げて動かない。
「ぴるぃぴよよーん(分かんないふりして乗り切るもーん」
じっと待っていたが、ツンツンと文字盤を突いて遊び始めてしまう。
エレンが『遊ぶのはやめろ』と言うと遊ぶのは止めたが、今度は羽づくろいを始める。
「殿下、どうやら文字は読めないようですね」
いや、コイツは嘘をついている。
一瞬だがひよこのお尻が左右に振れたのを私は見逃さなかった。その仕草は機嫌が良いときやるのだとリラが以前教えてくれた。
つまりこコイツは文字が分からないふりをして、腹の中ではほくそ笑んでいる。
――上機嫌の腹黒ひよこ。
それなら手加減も温情も一切無用だろう。
「エレン、ひよこを今晩のメインディッシュにするのはやめだ」
「ぴぅ、ぴよよぴ(ふっ、やっと諦めたか…)
「昼食に変更する。料理長のところに連れていけ」
「ピッーーーーーーーーーーーー」
次の瞬間、文字盤の【はい】の上でひよこはガタガタと震えていた。
どうやら文字盤を使って答える気になったらしい。
「ピピヨ…(食べないで…)」
長い付き合いだからエレンは私が考えついたこと察したのだろう。
至極真っ当な反論を彼は口にする。
以前の私だったら迷うことなくその意見に賛同していただろう。
だが今はそれは違うと断言出来る。
「エレン、まずは振り返って足元を見ろ」
「……は、はい」
そう言いながら私はひよこを指さした。
エレンは訳が分からないという表情をしながらも、私の言葉に従う。
ひよこ殿下は右足でつま先立ちして左足は宙に舞い、両羽は後ろ斜め45度の状態で固まっている。
『1ミリでも動いたら今夜の夕食はお前だ』と私が警告してから、本当に動いていない。
いや、それはちょっと違うか。
プルプルと小刻みに震えているから、正確には少しだけ動き続けている。
ふっ、必死だな…。
エレンはひよこ殿下を凝視したまま固まっている。
自分の先ほどの発言が正しくなかったとこれで認識出来たことだろう。
「分かっただろう、このひよこは人の言葉を完璧に理解している。それを前提で考えれば、全て辻褄が合う。コイツの正体は有害で腹黒なひよこだ」
「……はっは…は」
現実を受け止められないのか、エレンが少し壊れる。
私だって警告の言葉を口にした時はまだ半信半疑だった。ひよこが絡んでいると考えたら全ての辻褄が合うと頭では分かっていても、まさか…という常識的な考えを捨てきれなかった。
今だって私はリラを失いたくないと必死だからこそ、理解を超えた現実を受け入れているだけだ。
エレン、お前の反応は正しいからな。
これで全てが解決したわけではない。リラに何があったのか、それを確認しなくてはならないのだ。
だからエレンには正気に戻って貰わないと困る。
「エレン、現実逃避している時間はない!リラの誤解を解いて暴走を止めるには、何があったか正しく把握する必要がある。早速、尋問を始めるぞ」
「承知しました、イザク殿下」
流石はエレンだった。
私の言葉にすぐに我を取り戻して、ひよこの身柄を取り押さえる。
「ピルピルピル…(誤解なんです…)」
ひよこは目をウルウルさせながらエレンに縋りつくが、その手はもう通用しない。
「無駄だ、もう騙されないからな。イザク殿下、このひよこは人の言葉を理解していますが、私達はひよこ語が分かりません。どうやって尋問をしますか?」
ひよこへの尋問など経験はない。そもそも必要に迫られたことはなかったからだ。
ひよこ語が分かる人間は存在しない。リラの通訳だって『こう思っているのだろうな』というレベルの思い込みなのだから。
もちろんそれを承知でエレンもリラに通訳をお願いしたのだ、私のために…。
「とりあえず簡単な文字盤を用意してくれ。それを使って意思の疎通を試してみる」
「ひよこが文字盤を使えますかね…」
普通なら使えない、けれどもコイツに常識は当てはまらない。
私達は中庭から離宮内にある私の執務室に移動する。
そしてエレンは『文字盤を探してきます』と部屋を出ていき、数分後に文字盤を持って戻ってきた。
エレンはテーブルの上にいるひよこの隣に持ってきた文字盤をそっと置く。
もうひよこは震えてはいない。どうやらかなり図太い神経の持ち主のようだ。
文字盤は子供が遊びながら文字を覚えるもので、大きな字で文字と数字と【はい】と【いいえ】が書いてある。
私はテーブルに近づいて、ひよこを見下ろす。
「さあ、始めよう。私が質問するからお前は文字盤を使って答えるんだ。分かったか?」
ひよこは小首を傾げて動かない。
「ぴるぃぴよよーん(分かんないふりして乗り切るもーん」
じっと待っていたが、ツンツンと文字盤を突いて遊び始めてしまう。
エレンが『遊ぶのはやめろ』と言うと遊ぶのは止めたが、今度は羽づくろいを始める。
「殿下、どうやら文字は読めないようですね」
いや、コイツは嘘をついている。
一瞬だがひよこのお尻が左右に振れたのを私は見逃さなかった。その仕草は機嫌が良いときやるのだとリラが以前教えてくれた。
つまりこコイツは文字が分からないふりをして、腹の中ではほくそ笑んでいる。
――上機嫌の腹黒ひよこ。
それなら手加減も温情も一切無用だろう。
「エレン、ひよこを今晩のメインディッシュにするのはやめだ」
「ぴぅ、ぴよよぴ(ふっ、やっと諦めたか…)
「昼食に変更する。料理長のところに連れていけ」
「ピッーーーーーーーーーーーー」
次の瞬間、文字盤の【はい】の上でひよこはガタガタと震えていた。
どうやら文字盤を使って答える気になったらしい。
「ピピヨ…(食べないで…)」
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