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16.後始末③〜夫視点〜
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『…何もなかったら用意すらしていないと思ってニーナはがっかりするわ』
『本当に素敵だわ。部屋中に飾られて、愛されている証拠ね』
真実を知った今ならシャナの言葉の本当の意味が分かり、怒りが込み上げてくる。
くそっ、なぜ分からなかったんだっ。
…忘れていたんだ、あの色の意味を。もう私の中では赤はシャナが好きだった色ではなく、ただの色でしかなかった。
届いた赤い花をすぐに片付け、ニーナに花が飾ってない訳をちゃんと話していたら違っていただろう。
だが私はシャナの言葉を疑いもせず、彼女の悪意に手を貸した。
何をやっているんだっ…。
赤い花が間違って届いたのは発注の手違いではなく故意だった、シャナが花屋の者を騙していたのだ。
そしてその花を使ってニーナをさらに傷つけ追い詰めてしまった、二人で…。
そんなつもりはなかったなんて言えない。
花の色の意味、ニーナの言葉の意味に気づくのは難しいことではなかったはず。
ニュートに気を取られていたとしても、先入観なくちゃんとニーナの表情を見れば分かったはずなんだ。
どれか一つでも正しい対応をしていたらあんな結果は防げていたのに。
私が愛する人を壊し、死を選ばせた。
幸せしか見えてなかった、ニーナも同じだと思い込んでいた。もっとちゃんと見ていたら、聞いていたら……違っていたのに。
だがもう全ては終わったこと。
後悔なんてしてもニーナは救われない。それはただの自己満足で自分が楽になるためのものでしかない。
考えるべきことはこれからどうするかだ。
ニーナが安心して過ごせる場所を作らなければ。
その為には何が必要か、そして何を排除するべきか、ちゃんと考えなければいけない。
二度と間違えやしない。
頭に浮かんだ答えは簡単だった。
『まずは排除すべきものを片付けよう』
心優しいニーナが悲しまない形にしなければ…。
きっと彼女はどんな人の不幸も望まないから。
私は信頼している執事を呼んだ。彼は私の罪も含め全てを知っているので詳細な説明は必要なかった。
『あの件を進めてくれ。
いくら金が掛かっても構わない。ブラウン伯爵夫妻には話を通してあるので問題はない。それに相手方への根回しも殆ど終わっているが、念には念を入れてくれ。決して逃れられないように、そして完璧な形で整えてくれ』
『はい、承知いたしました』
執事は余計なことを聞いてこない、私が何を望んでいるのか知っているから。
ニーナを傷つけた者をそのままにはしない。
二度と彼女を傷つけないようにするだけだ。
シャナ・ブラウンには完璧な居場所を用意しよう。
どう生きるかは彼女次第だが、きっと期待通りに過ごしてくれそうだ。
そして一番罪深いのは私自身。
排除するのは簡単だがそれは今ではない。目覚めないニーナを守る人間は必要だから。
こんな夫でも役には立つ。
では先に罰をとも考えたが、それも出来ないまま。罰から逃れたいのではない、何をしようが意味がないから罰にはならないのだ。
私を傷つけることなどニーナ以外出来やしない。
彼女だけが私を傷つけ、心をも殺せるのだ。
最大の罰を私に与えられるのは愛する人だけ。
それは決して変えられないことだった。
君だけが私を傷つけられるんだ…。
君しかいない…愛する君しか…。
私のすべてなんだ…ニーナ。
ニーナが眠りから覚めるのを待っている。
目覚めてどんな罰でも与えてくれ、殺されたって構わない。
だから早く目覚めて…。
愚かな私に相応しい罰をくれ。
待っているから……いつまでも…。
狡いのかもしれない、君の目覚めを待つのは。
だが君しか私を壊せない。
もう私の心は殆ど壊れているかもしれない。
だが最後の一欠片でいいからニーナに砕かれたい。
……壊してくれっ。
お願いだ、生きて…くれ……。
愛しているニーナ、君の願いを教えてくれ。
どんなことだって叶えてみせる。首を自ら掻っ切ることさえ厭わないから。
『愚かな私に早く罰を下してくれ』と眠ったままのニーナに懇願し続けることで私は正気を保っているのかもしれない。
『本当に素敵だわ。部屋中に飾られて、愛されている証拠ね』
真実を知った今ならシャナの言葉の本当の意味が分かり、怒りが込み上げてくる。
くそっ、なぜ分からなかったんだっ。
…忘れていたんだ、あの色の意味を。もう私の中では赤はシャナが好きだった色ではなく、ただの色でしかなかった。
届いた赤い花をすぐに片付け、ニーナに花が飾ってない訳をちゃんと話していたら違っていただろう。
だが私はシャナの言葉を疑いもせず、彼女の悪意に手を貸した。
何をやっているんだっ…。
赤い花が間違って届いたのは発注の手違いではなく故意だった、シャナが花屋の者を騙していたのだ。
そしてその花を使ってニーナをさらに傷つけ追い詰めてしまった、二人で…。
そんなつもりはなかったなんて言えない。
花の色の意味、ニーナの言葉の意味に気づくのは難しいことではなかったはず。
ニュートに気を取られていたとしても、先入観なくちゃんとニーナの表情を見れば分かったはずなんだ。
どれか一つでも正しい対応をしていたらあんな結果は防げていたのに。
私が愛する人を壊し、死を選ばせた。
幸せしか見えてなかった、ニーナも同じだと思い込んでいた。もっとちゃんと見ていたら、聞いていたら……違っていたのに。
だがもう全ては終わったこと。
後悔なんてしてもニーナは救われない。それはただの自己満足で自分が楽になるためのものでしかない。
考えるべきことはこれからどうするかだ。
ニーナが安心して過ごせる場所を作らなければ。
その為には何が必要か、そして何を排除するべきか、ちゃんと考えなければいけない。
二度と間違えやしない。
頭に浮かんだ答えは簡単だった。
『まずは排除すべきものを片付けよう』
心優しいニーナが悲しまない形にしなければ…。
きっと彼女はどんな人の不幸も望まないから。
私は信頼している執事を呼んだ。彼は私の罪も含め全てを知っているので詳細な説明は必要なかった。
『あの件を進めてくれ。
いくら金が掛かっても構わない。ブラウン伯爵夫妻には話を通してあるので問題はない。それに相手方への根回しも殆ど終わっているが、念には念を入れてくれ。決して逃れられないように、そして完璧な形で整えてくれ』
『はい、承知いたしました』
執事は余計なことを聞いてこない、私が何を望んでいるのか知っているから。
ニーナを傷つけた者をそのままにはしない。
二度と彼女を傷つけないようにするだけだ。
シャナ・ブラウンには完璧な居場所を用意しよう。
どう生きるかは彼女次第だが、きっと期待通りに過ごしてくれそうだ。
そして一番罪深いのは私自身。
排除するのは簡単だがそれは今ではない。目覚めないニーナを守る人間は必要だから。
こんな夫でも役には立つ。
では先に罰をとも考えたが、それも出来ないまま。罰から逃れたいのではない、何をしようが意味がないから罰にはならないのだ。
私を傷つけることなどニーナ以外出来やしない。
彼女だけが私を傷つけ、心をも殺せるのだ。
最大の罰を私に与えられるのは愛する人だけ。
それは決して変えられないことだった。
君だけが私を傷つけられるんだ…。
君しかいない…愛する君しか…。
私のすべてなんだ…ニーナ。
ニーナが眠りから覚めるのを待っている。
目覚めてどんな罰でも与えてくれ、殺されたって構わない。
だから早く目覚めて…。
愚かな私に相応しい罰をくれ。
待っているから……いつまでも…。
狡いのかもしれない、君の目覚めを待つのは。
だが君しか私を壊せない。
もう私の心は殆ど壊れているかもしれない。
だが最後の一欠片でいいからニーナに砕かれたい。
……壊してくれっ。
お願いだ、生きて…くれ……。
愛しているニーナ、君の願いを教えてくれ。
どんなことだって叶えてみせる。首を自ら掻っ切ることさえ厭わないから。
『愚かな私に早く罰を下してくれ』と眠ったままのニーナに懇願し続けることで私は正気を保っているのかもしれない。
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