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29.重すぎる愛〜レザ視点〜

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ランダはにやにやしながら俺を見てくる。
『第一王子としての品位はどこにやった?』と言ったら『着脱式なんだ』とふざけたことを言っている。

悔しいが血の繋がりをこんなところで感じてしまう。


「それでどうするんだ?レザム」
「どうもこうもない。俺はジュンリヤに手を差し出すだけだ。それを掴むかどうかは彼女次第。俺の想いを押し付ける気は毛頭ない」
「はっはは、そうだよな。俺達の重すぎる愛を受け入れるかどうかは相手が決めることだ。悲しいかな、王族という身分や権力も一切使えないからな」

ランダは使えないといったが、これは使ということだ。

相手が振り向いてくれない時に、この王族という身分は役には立つだろう。
権力という圧力を掛け無理矢理婚姻を結ぶのは簡単だ。

――だが出来ない。

それは愛する人の心を殺すということだからだ。

そんな真似を出来るのか…?
愛する人を自らの傷つける?
はっ、それはなんの冗談だ。まったく笑えない。


愛するのはこっちの勝手。
それが一方通行で終わるか実を結ぶかは相手に決定権がある。

俺達王族はひたすら己に出来る最大限の努力をするのみ。
どんな結果に終わろうと、それが相手が望むことならば黙って受け入れるだけ。


これを知った遠い国のある王族が『なんと憐れな…』と言っていたらしい。

この感覚を到底理解できないのだろう。
その気持ちも理解できる、正直これは体験しなければ分からないことだ。

俺だってジュンリヤに惹かれていき、この感覚を真に理解できたんだ。それまでは既婚の王族の伴侶への態度を見て仲睦まじいくらいにしか思っていなかった。

自分の唯一と出会ってなければ一生本当の意味では理解していなかった。
それは俺だけじゃなく、ランダも同じだ。

彼は俺よりも早くこの感覚を知った。そして彼の隣には今は愛しい伴侶がいる。



「頑張れよ、レザム。玉砕したら一緒に酒を飲んでやるから安心しろ」

そう言ってランダは高級な酒を指し示す。
彼は面白がっているわけではない、これでも俺のことを心から応援してくれている。
俺だって数年前にこうやってランダを応援してやったんだ。


「きっとその酒は無駄になる。だから今飲むぞ」
「そうだな、願掛けしておくか」
「違う、これは前祝いだっ!」

軽口を叩き合いながら酒を酌み交す。
手助けするとは言わないし、俺も助けて欲しいとは思わない。

これは俺とジュンリヤの始まりになるかもしれない。
そこにどんな形であれ他人の介入など不要だ。


――踏み込まれたくない。


 くっくく、俺もかなりの重症だな。

そう思うのは自分の想いがどんなに深いか分かっているから。
まるで底なし沼のようで、一歩でも足を踏み入れたら逃さない自信しかない。

もしこの想いが彼女に見えたら引かれてしまうかもしれない。

 いや、たぶん引かれるな…。

人の心が目で見ることが出来なくて良かったと心から安堵している。

――それくらいに俺の愛は重い。



「お前だけじゃない。王族のこれはもう呪いの域に達しているからな」

何も言っていないのに、俺の心を見透かしたランダ。そんな彼の言葉に同類だから分かるのだろうなと苦笑いする。

『呪い』か…間違っていない。
ランダも上手いこと言うものだと感心する。俺達王族の愛を表すには一番相応しい言葉だ。


「…この呪いは絶対に解きたくねえな」

ぼそっと呟いた言葉に、ランダも真顔になって『同感だ』と頷いている。

がんじがらめに体と心に絡みついて苦しい時もあるが、開放されたいとは思わない。もっとキツく絡みついてくれとさえ思う。

どこまで堕ちていきたい、願わくば愛しい伴侶とともに…。

――一緒に堕ちてくれ、愛しい人ジュンリヤ…。

この重すぎる想いは一生隠し通すことだろう。



その後、俺とランダは考えられる限りのパターンとその対処法を再確認しながら一緒に朝日を拝むことになった。
徹夜には慣れていたけれど、これほど爽快な気分で徹夜明けの朝を迎えたことは初めてのことだった。



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