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50.第二王子と公爵令嬢ハナミア?!
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今日の殿下の装いは隣国の王族の正装で、どんな格好でも素敵だけれども、今日はまた一段と凛々しくて輝いている。
はぅっ、目の毒……。
くらくらしている私に向かって殿下は柔らかい笑みを浮かべる。
「ミア、待たせたな」
うん…?待ってなんかいない。そもそも殿下はこの夜会には参加しないと言っていたではないか。
ここははっきり伝えることにする。
「いえ、待っておりませんよ。リューザ様」
「えっ?…いやいや、待っていただろ。私がミアをエスコートすることになっているのだから」
「それは初耳です」
「えっ、…う、うさ耳??」
盛大な聞き間違えをした殿下は、なぜか顔を赤らめながら『まずい、可愛すぎる…』と呟く。
確かに今日は白を基調にした装いだけど、どう見ても兎ではなく人間のはず。
念の為頭に手をやり確認してみるが、やはりそこには兎の耳は生えていない。
良かった……。
知らぬ間に人間を辞めていたのかと、実は少しだけ心配していたのだ。
「ほっほほ、殿下の耳は遠いようですわね。それとも耳ではなく頭のほうに問題があるのかしら」
「そんな方にレイミアのエスコートは無理でしょう」
今日も弟妹達は切れ味抜群な返しをしている。殿下との親交が深まっているからこそ、こうして遠慮ない言葉を言えるのだろう。
……と最近は自分に言い聞かせている。
――平和が一番。
平和を守るためには多少の事実誤認も許容範囲だ。
それになんだかんだ言っても、殿下がレイザとレイリンに向ける眼差しは優しいもので、弟妹達の視線は、……うん、元気?があっていいと思う。
「双頭の龍。私からの伝言をミアに伝えていなかったな」
「伝言?もしや、王家の夜会には参加することになったから、会場で落ち合おうという独り言のことですか?」
「私もレイザも承知しましたなんて一言も言っておりませんわ。ですからレイミアには伝えておりません、当然でしょ?」
バチバチという音を立てながら進む会話。
平和が崩れていくのを私は逃げる準備をして見守っていると、ダリムがすすっと前に出る。
「とりあえず無事にレイミアさんと会えたのですからいいのではないですか、殿下。それに時間もありませんから、お遊びはここまでということに致しましょう、レイザ殿、レイリン嬢」
「そうだな」
「承知しました、ダリム様」
「ダリム様がそう言うなら…」
なんと逃げる準備が無駄になってしまった。
ダリムに素直に従う褐色の口なしと双頭の龍。
まるで猛獣使いを見ているようだ
世界の頂点に君臨するのは、由緒正しき王族ではなく古狸だった。
薄々そんな気がしていたけれどね…。
これからは友人二号についていこうと心に決める。
――長い物には巻かれるべし。
うんうんと頷いていると、ダリムが話を続ける。
「ではあとは殿下次第です。健闘をお祈り申し上げます」
ダリムの言葉は殿下に対してのものだけど、その眼差しは私に向けられていた。
それは包み込むような優しさに溢れたもので、友人としてとは違う。
もし私に本当の意味で父親という存在がいたならば、こんな感じだったのかな…。
――きっとそうだと思う。
「レイミア。決めるのはあなたです。どんな選択しようとも私はあなたの味方ですから」
「自分の幸せだけをお考えください、レイミア。それが私の望みですから絶対に叶えてくださいませ」
レイザとレイリンの言葉にはたくさんの想いが詰まっていて、どんな時もそばにいますからねと背中を押されているようだった。
夜会に来ているだけなのに、なんで急にこんな事を言い出したのか分からない。けれども、熱い想いに包まれて心がじんわりと温かくなっていく。
これから何かあるの?と尋ねる前に弟妹達はダリムと一緒に離れていき、この場には私と殿下が残される。
夜会なのに、気づけば近くから人がいなくなっていた。ちらほらと殿下の護衛の人達が人が近づかないようにしているのが視界に入る。
どうやら殿下が人払い?をしているようだ。
「ミア。いや、ハナミア・マーズ。私の話を聞いて欲しい」
「…っ……」
殿下が真剣な表情をして、偽りの名レイミア・マードルではなく本当の名前で私のことを呼んだ。
いつから私がマーズ公爵令嬢ハナミアだとばれていたのだろう。
心当たり?そんなもの全く無い。
……たぶん、ない。
…‥‥‥と思いたい。
はぅっ、目の毒……。
くらくらしている私に向かって殿下は柔らかい笑みを浮かべる。
「ミア、待たせたな」
うん…?待ってなんかいない。そもそも殿下はこの夜会には参加しないと言っていたではないか。
ここははっきり伝えることにする。
「いえ、待っておりませんよ。リューザ様」
「えっ?…いやいや、待っていただろ。私がミアをエスコートすることになっているのだから」
「それは初耳です」
「えっ、…う、うさ耳??」
盛大な聞き間違えをした殿下は、なぜか顔を赤らめながら『まずい、可愛すぎる…』と呟く。
確かに今日は白を基調にした装いだけど、どう見ても兎ではなく人間のはず。
念の為頭に手をやり確認してみるが、やはりそこには兎の耳は生えていない。
良かった……。
知らぬ間に人間を辞めていたのかと、実は少しだけ心配していたのだ。
「ほっほほ、殿下の耳は遠いようですわね。それとも耳ではなく頭のほうに問題があるのかしら」
「そんな方にレイミアのエスコートは無理でしょう」
今日も弟妹達は切れ味抜群な返しをしている。殿下との親交が深まっているからこそ、こうして遠慮ない言葉を言えるのだろう。
……と最近は自分に言い聞かせている。
――平和が一番。
平和を守るためには多少の事実誤認も許容範囲だ。
それになんだかんだ言っても、殿下がレイザとレイリンに向ける眼差しは優しいもので、弟妹達の視線は、……うん、元気?があっていいと思う。
「双頭の龍。私からの伝言をミアに伝えていなかったな」
「伝言?もしや、王家の夜会には参加することになったから、会場で落ち合おうという独り言のことですか?」
「私もレイザも承知しましたなんて一言も言っておりませんわ。ですからレイミアには伝えておりません、当然でしょ?」
バチバチという音を立てながら進む会話。
平和が崩れていくのを私は逃げる準備をして見守っていると、ダリムがすすっと前に出る。
「とりあえず無事にレイミアさんと会えたのですからいいのではないですか、殿下。それに時間もありませんから、お遊びはここまでということに致しましょう、レイザ殿、レイリン嬢」
「そうだな」
「承知しました、ダリム様」
「ダリム様がそう言うなら…」
なんと逃げる準備が無駄になってしまった。
ダリムに素直に従う褐色の口なしと双頭の龍。
まるで猛獣使いを見ているようだ
世界の頂点に君臨するのは、由緒正しき王族ではなく古狸だった。
薄々そんな気がしていたけれどね…。
これからは友人二号についていこうと心に決める。
――長い物には巻かれるべし。
うんうんと頷いていると、ダリムが話を続ける。
「ではあとは殿下次第です。健闘をお祈り申し上げます」
ダリムの言葉は殿下に対してのものだけど、その眼差しは私に向けられていた。
それは包み込むような優しさに溢れたもので、友人としてとは違う。
もし私に本当の意味で父親という存在がいたならば、こんな感じだったのかな…。
――きっとそうだと思う。
「レイミア。決めるのはあなたです。どんな選択しようとも私はあなたの味方ですから」
「自分の幸せだけをお考えください、レイミア。それが私の望みですから絶対に叶えてくださいませ」
レイザとレイリンの言葉にはたくさんの想いが詰まっていて、どんな時もそばにいますからねと背中を押されているようだった。
夜会に来ているだけなのに、なんで急にこんな事を言い出したのか分からない。けれども、熱い想いに包まれて心がじんわりと温かくなっていく。
これから何かあるの?と尋ねる前に弟妹達はダリムと一緒に離れていき、この場には私と殿下が残される。
夜会なのに、気づけば近くから人がいなくなっていた。ちらほらと殿下の護衛の人達が人が近づかないようにしているのが視界に入る。
どうやら殿下が人払い?をしているようだ。
「ミア。いや、ハナミア・マーズ。私の話を聞いて欲しい」
「…っ……」
殿下が真剣な表情をして、偽りの名レイミア・マードルではなく本当の名前で私のことを呼んだ。
いつから私がマーズ公爵令嬢ハナミアだとばれていたのだろう。
心当たり?そんなもの全く無い。
……たぶん、ない。
…‥‥‥と思いたい。
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