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11.屑改め、…ちょっとだけ屑?!③
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ダリムさんの驚異的な見た目詐欺を越える話題を提供できる人はそうそういない。これは王族という身分だけでは太刀打ちできない。
残念ですが、殿下は二番目ですから…。
それでも十分に興味は引き付けられた(…屑の匂い?がした)ので、かなり優秀な話題提供者だ。
初日は屑認定から始まって、今日はちょっと見直して、そしてまた振り出しに戻る予感…?
それとも大逆転があるのか。
私と殿下の会話を横で聞いていたダリムはお腹を抱えて笑っている。
「…笑いすぎだ、ダリム」
「くっくく、レイミアさんはいいですね。さっきの意味ですが、私が教えてあげましょう」
「おい、ダ――」
「ありがとうございます!」
殿下の言葉を押しのけるように、私は食い気味に返事をする。
とりあえず学園内は身分に関わらず平等なので、早いもの勝ちである。
「殿下は王族なので、いつか国にとって有益な妃を娶ります。その時の為に女性とは必要以上関わらないようにしているんですよ」
「でも随分と女子生徒に囲まれていましたが…」
いえいえ、十分に関わっていましたから…。
ケイドリューザ殿下はとてもモテる。
隣りにいる無関係な私にまで火の粉が降り掛かってくるくらいに。
「殿下も年頃の男性ですから生理的な発散は必要です。そして女性もそういう欲はあります。男性ほど顕著ではありませんがね。だからお互いに利害が一致した場合に限り、いろいろと了承のうえ関係を持つこともあります。でもこれは好意とかそういうもの抜きです」
この国では娼館があるが、隣国にはない。それは金銭を介してそういう関係を結ぶことが隣国の国教の教えに反するからだ。
真剣な表情で話すダリムを、殿下は眉間に皺を寄せて腕を組んでいる。でも止めはしない。
それなら質問してもいいかな。
「それは遊びですか…?」
せっかくなので直球の質問をする。
「いいえ、違います。王族には遊びは許されません。だからこれは了承のうえでの割り切ったものです。契約に近いものがありますね。ですが親切にしたら勘違いする可能性もありますから、そういうことはないように徹底しているんです」
殿下がダリムの言葉を否定しないのは、きっと事実だからだ。
これは殿下個人のことではなく、王族としての縛りみたいなものなのだろう。
そうでなくては、側近であるダリムが話すことではない。
私は王族の世界を知らないから理解するのは難しい。
割り切った関係が不潔だとかは思わないまでも、まだ夢を見ていたい年頃でもある。だってまだ恋をしたこともないから…。
しかし、世の中は綺麗な部分だけで出来ているわけではないのはよく分かっている。だってあの両親のもとに生まれたのだから。
――だから否定はしない。
否定されるのはとても辛いことだと私が誰よりも分かっている。
でも、でもね。その考えに私が合わせるのは違うよね?
ダリムの言葉と殿下の立場とかいろいろ整理しながら考える。
二人はそんな私を黙って見ているだけで、考えを押し付けようとはしない。それなら、上辺だけ取り繕う必要はないということだろう。
うん、答えはでた。――合わせない。
割り切った関係はお好きにどうぞ。ただし、私は普通路線を推していくので。
「理解していただけましたか?」
ダリムが聞いてきたので、私は自分の考えを言葉にする。
「でも、五股とか十股とか流石に頑張りすぎかと――」
「おい、待って。なんでそういう設定なんだっ…」
殿下が慌てて私の話を止めてくる。設定ではなく、事実に限りなく近いと思っているのだが……。
「毎日あの人数の取り巻き令嬢達に囲まれているので、これくらいかなと…」
耳に入ってきた下世話な噂から推察しているので根拠はない。
つまり半分は鎌をかけている。
これはつい最近妹から教わった方法だ。
『便利ですよ、お姉様。揺さぶっていき答えに詰まったら、そこに求めている答えがあります』
『でも使う時があるかしら…』
『女性は絶対男性に敵わないことがあります。それは腕力ですわ。だからそれを補うためにも武器は多いに越したことはありません。特に浮気した男性などには効果てきめんです!』
『エイリンはそういう場面で使ったことがあるの?』
『……ワスレマシタ』
聡明なエイリンはどんな些細なことも忘れない。
つまりはここに答えがある。
ごめんね、そんなつもりじゃなかったのよ…。
――…効果はあった。
そしてこの出番は意外に早かった。
「そんなことはしていない」
「では同時進行は四人ですか?」
ハードルを最初は高めに、そして徐々に下ろすのが効果的と教わったので、基本に沿って実践してみる。
「してない」
「では二人でしょうか?」
私の問いに殿下は少しだけ目を逸らす。それはあの時の妹と同じ表情だった。
これはいいところまで近づいている証。
「……個人的なことだから黙秘する」
「それが答えです!」
「……っ…!」
はい、ほぼクロ決定!
絶対に二股はやったことがあるとみた。ダリムさんの真剣な表情に、うっかり絆されてしまうところだった。
いけない、いけない。
何事も自分の目で確かめないと…。
呆然とする殿下の隣で、ダリムは『完敗ですね、殿下』と声を上げながら笑っている。
……??
誰と戦って負けたのだろう。
それにしてもダリムはあんなに笑って、大丈夫だろうか。見かけは二十代でも一皮むけばお祖父さんなんだから、気をつけたほうがいい。
肉体年齢がおばあさんの私は、それで一回心臓が止まりかけたことがある…。
――笑い過ぎで昇天なんて笑えない。
今度忠告してあげよう。
そして殿下への評価の変化が激しいのでもう一度整理する。
初日は屑から始まり、ちょっと見直しで急浮上、それからしばしの水平飛行(…合意だからね)のち、また少し落下する(…二股はいただけない)。
私の頭の中に複雑な折れ線グラフが出来上がっていく。
なんだか私の体温表と同じだなと親近感が湧いてくる。
さっそく殿下にこの共通点を伝えるべく(…喜びは分かち合わないとね)話し始めると、なぜか早々に止められた。
「…時間切れだ」
あぅっ!大切なことを忘れていた…。
残念ですが、殿下は二番目ですから…。
それでも十分に興味は引き付けられた(…屑の匂い?がした)ので、かなり優秀な話題提供者だ。
初日は屑認定から始まって、今日はちょっと見直して、そしてまた振り出しに戻る予感…?
それとも大逆転があるのか。
私と殿下の会話を横で聞いていたダリムはお腹を抱えて笑っている。
「…笑いすぎだ、ダリム」
「くっくく、レイミアさんはいいですね。さっきの意味ですが、私が教えてあげましょう」
「おい、ダ――」
「ありがとうございます!」
殿下の言葉を押しのけるように、私は食い気味に返事をする。
とりあえず学園内は身分に関わらず平等なので、早いもの勝ちである。
「殿下は王族なので、いつか国にとって有益な妃を娶ります。その時の為に女性とは必要以上関わらないようにしているんですよ」
「でも随分と女子生徒に囲まれていましたが…」
いえいえ、十分に関わっていましたから…。
ケイドリューザ殿下はとてもモテる。
隣りにいる無関係な私にまで火の粉が降り掛かってくるくらいに。
「殿下も年頃の男性ですから生理的な発散は必要です。そして女性もそういう欲はあります。男性ほど顕著ではありませんがね。だからお互いに利害が一致した場合に限り、いろいろと了承のうえ関係を持つこともあります。でもこれは好意とかそういうもの抜きです」
この国では娼館があるが、隣国にはない。それは金銭を介してそういう関係を結ぶことが隣国の国教の教えに反するからだ。
真剣な表情で話すダリムを、殿下は眉間に皺を寄せて腕を組んでいる。でも止めはしない。
それなら質問してもいいかな。
「それは遊びですか…?」
せっかくなので直球の質問をする。
「いいえ、違います。王族には遊びは許されません。だからこれは了承のうえでの割り切ったものです。契約に近いものがありますね。ですが親切にしたら勘違いする可能性もありますから、そういうことはないように徹底しているんです」
殿下がダリムの言葉を否定しないのは、きっと事実だからだ。
これは殿下個人のことではなく、王族としての縛りみたいなものなのだろう。
そうでなくては、側近であるダリムが話すことではない。
私は王族の世界を知らないから理解するのは難しい。
割り切った関係が不潔だとかは思わないまでも、まだ夢を見ていたい年頃でもある。だってまだ恋をしたこともないから…。
しかし、世の中は綺麗な部分だけで出来ているわけではないのはよく分かっている。だってあの両親のもとに生まれたのだから。
――だから否定はしない。
否定されるのはとても辛いことだと私が誰よりも分かっている。
でも、でもね。その考えに私が合わせるのは違うよね?
ダリムの言葉と殿下の立場とかいろいろ整理しながら考える。
二人はそんな私を黙って見ているだけで、考えを押し付けようとはしない。それなら、上辺だけ取り繕う必要はないということだろう。
うん、答えはでた。――合わせない。
割り切った関係はお好きにどうぞ。ただし、私は普通路線を推していくので。
「理解していただけましたか?」
ダリムが聞いてきたので、私は自分の考えを言葉にする。
「でも、五股とか十股とか流石に頑張りすぎかと――」
「おい、待って。なんでそういう設定なんだっ…」
殿下が慌てて私の話を止めてくる。設定ではなく、事実に限りなく近いと思っているのだが……。
「毎日あの人数の取り巻き令嬢達に囲まれているので、これくらいかなと…」
耳に入ってきた下世話な噂から推察しているので根拠はない。
つまり半分は鎌をかけている。
これはつい最近妹から教わった方法だ。
『便利ですよ、お姉様。揺さぶっていき答えに詰まったら、そこに求めている答えがあります』
『でも使う時があるかしら…』
『女性は絶対男性に敵わないことがあります。それは腕力ですわ。だからそれを補うためにも武器は多いに越したことはありません。特に浮気した男性などには効果てきめんです!』
『エイリンはそういう場面で使ったことがあるの?』
『……ワスレマシタ』
聡明なエイリンはどんな些細なことも忘れない。
つまりはここに答えがある。
ごめんね、そんなつもりじゃなかったのよ…。
――…効果はあった。
そしてこの出番は意外に早かった。
「そんなことはしていない」
「では同時進行は四人ですか?」
ハードルを最初は高めに、そして徐々に下ろすのが効果的と教わったので、基本に沿って実践してみる。
「してない」
「では二人でしょうか?」
私の問いに殿下は少しだけ目を逸らす。それはあの時の妹と同じ表情だった。
これはいいところまで近づいている証。
「……個人的なことだから黙秘する」
「それが答えです!」
「……っ…!」
はい、ほぼクロ決定!
絶対に二股はやったことがあるとみた。ダリムさんの真剣な表情に、うっかり絆されてしまうところだった。
いけない、いけない。
何事も自分の目で確かめないと…。
呆然とする殿下の隣で、ダリムは『完敗ですね、殿下』と声を上げながら笑っている。
……??
誰と戦って負けたのだろう。
それにしてもダリムはあんなに笑って、大丈夫だろうか。見かけは二十代でも一皮むけばお祖父さんなんだから、気をつけたほうがいい。
肉体年齢がおばあさんの私は、それで一回心臓が止まりかけたことがある…。
――笑い過ぎで昇天なんて笑えない。
今度忠告してあげよう。
そして殿下への評価の変化が激しいのでもう一度整理する。
初日は屑から始まり、ちょっと見直しで急浮上、それからしばしの水平飛行(…合意だからね)のち、また少し落下する(…二股はいただけない)。
私の頭の中に複雑な折れ線グラフが出来上がっていく。
なんだか私の体温表と同じだなと親近感が湧いてくる。
さっそく殿下にこの共通点を伝えるべく(…喜びは分かち合わないとね)話し始めると、なぜか早々に止められた。
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