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16.対峙する声③
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「後悔なら今している。君をまだ苦しめている俺が許せないのに、君を自由にしてあげられない自分が心底憎い。
だがアリーナは俺の唯一だから。
絶対に手放せない。勝手なことを言っているのは分かっているけど、それでも俺は君と一緒にいたい。
もし君が俺を憎んでいるのなら、遠くから見守ることも考えるよ。
…だけどそうじゃないだろう?アリーナ。
だって君はさっきから泣いているじゃないか。その涙をまた俺に拭わせてくれ」
彼に言われて自分が泣いていることに初めて気づいた。
この涙はなに…?
泣きたくなんてないのに。
口では彼に別れを告げているくせにどうして涙が溢れてくるのだろう。そんな自分が悔しくて堪らない。
平気なはずなのに…それなのに。
彼は私に手を伸ばし涙で濡れた私の頬を優しく拭ってくる。温かいその手をどうしても振り払うことが出来ない。
『止まれ、止まれ』と何度も心で思っても溢れる涙は止まってはくれない。
それはまるで溢れ出る彼への私の想いのようで尽きることはない。
何度も何度も彼は私の涙を拭い続けてくれる。
「アリーナ。こうやって何度だって君の涙が止まるまで拭い続けるから。
我慢しないで泣いてくれ。
どんな時だってこれからは言いたいことは言ってくれ。
嫌なことは嫌だと言っていいから。
隣には必ず俺がいる。
君のすべてを受けとめるために俺は隣にいる。
笑っている君も怒ってたり悲しんでいる君も、どんな君も一番近くで見ていたい。
それが俺の幸せなんだ、アリーナ」
「っ……」
彼の真っ直ぐな言葉に返事なんて出来なかった。
覚悟を決めたはずなのにどうすればいいのか分からなくなる。
頭と心のなかがぐちゃぐちゃでちゃんと伝えることなんて出来ない。私はその想いのままに言葉を吐き出していく。
「信用なんてもう二度としないわ」
「ああ、それでもいい」
「私はもう『ライ』って絶対に呼ばない!」
「それでも構わない」
「『リーナ』と呼んだらルイスを連れて実家に帰るわ」
「もう二度とそう呼ばない」
「私が離縁したくなったら勝手に出ていくわ」
「俺もついて行くから構わない」
私は泣きながら彼に言葉をぶつけていくけど、それに答える彼は幸せそうな表情を浮かべている。
「もうないの?思っていることをすべて言って、アリーナ」
優しい声音でそんなことを言われたら私はもう我慢できなかった。心の奥に仕舞っておくつもりだった言葉が出てきてしまう。
「どんな時も絶対に…私とルイスの側に…いて。
離れるのはもう嫌なの。だから、だから…お願…い……」
最後は言葉にならなかった。
子供のように泣きじゃくる私をライアンは『絶対に離さないから』と言いながらそっと抱きしめ続けてくれる。
どれくらいそうしていたのか分からないけれども、気づいたら私も自ら彼の身体を抱きしめていた。
私の頬を何かがまた濡らすのを感じて上を見上げると、彼は声を出さず涙を流していた。
お願い、泣かないで。
あなたには笑っていて欲しいの。
……それが私の幸せだから。
泣かせたくないの、笑って…ライアン。
彼の涙を止めてあげたく今度は私が彼の涙をそっと拭う。まだ彼の涙は止まっていないけれど、その顔には笑みが浮かぶ。
ライアンは私を抱きしめたまま、肩に顔を埋めながら耳元で囁いてくる。
「まだ言ってなかったよな。三ヶ月間ずっと待っていたんだ君が俺のもとに帰ってきてくれるのを。
『おかえり、アリーナ』」
「『ただいま』すごく待たせてしまってごめなさい、ライアン」
私達はお互いに泣きながら3ヶ月ぶりに口付けを交わした。
結婚してもう五年が経っていて二人の間には可愛い息子だっているのに、その口付けは初めて交わした時よりもぎこちないものだった。
まるで政略結婚した時のように私達はまた一から関係を築いていくことを選んだ。
二人の間に起こったことがあり過ぎて、正直乗り越えられるかどうか分からない。
この決断が吉と出るのか凶と出るのか…。
きっと不安にかられることもあるだろうし、お互いにぶつかることもあると思う。もしかしたらお互いにすぐに後悔するかもしれない。
それでも私達家族の未来は誰かに惑わされることなく、これからゆっくりと自分達で決めていきたい。それがどんな未来であっても。
だがアリーナは俺の唯一だから。
絶対に手放せない。勝手なことを言っているのは分かっているけど、それでも俺は君と一緒にいたい。
もし君が俺を憎んでいるのなら、遠くから見守ることも考えるよ。
…だけどそうじゃないだろう?アリーナ。
だって君はさっきから泣いているじゃないか。その涙をまた俺に拭わせてくれ」
彼に言われて自分が泣いていることに初めて気づいた。
この涙はなに…?
泣きたくなんてないのに。
口では彼に別れを告げているくせにどうして涙が溢れてくるのだろう。そんな自分が悔しくて堪らない。
平気なはずなのに…それなのに。
彼は私に手を伸ばし涙で濡れた私の頬を優しく拭ってくる。温かいその手をどうしても振り払うことが出来ない。
『止まれ、止まれ』と何度も心で思っても溢れる涙は止まってはくれない。
それはまるで溢れ出る彼への私の想いのようで尽きることはない。
何度も何度も彼は私の涙を拭い続けてくれる。
「アリーナ。こうやって何度だって君の涙が止まるまで拭い続けるから。
我慢しないで泣いてくれ。
どんな時だってこれからは言いたいことは言ってくれ。
嫌なことは嫌だと言っていいから。
隣には必ず俺がいる。
君のすべてを受けとめるために俺は隣にいる。
笑っている君も怒ってたり悲しんでいる君も、どんな君も一番近くで見ていたい。
それが俺の幸せなんだ、アリーナ」
「っ……」
彼の真っ直ぐな言葉に返事なんて出来なかった。
覚悟を決めたはずなのにどうすればいいのか分からなくなる。
頭と心のなかがぐちゃぐちゃでちゃんと伝えることなんて出来ない。私はその想いのままに言葉を吐き出していく。
「信用なんてもう二度としないわ」
「ああ、それでもいい」
「私はもう『ライ』って絶対に呼ばない!」
「それでも構わない」
「『リーナ』と呼んだらルイスを連れて実家に帰るわ」
「もう二度とそう呼ばない」
「私が離縁したくなったら勝手に出ていくわ」
「俺もついて行くから構わない」
私は泣きながら彼に言葉をぶつけていくけど、それに答える彼は幸せそうな表情を浮かべている。
「もうないの?思っていることをすべて言って、アリーナ」
優しい声音でそんなことを言われたら私はもう我慢できなかった。心の奥に仕舞っておくつもりだった言葉が出てきてしまう。
「どんな時も絶対に…私とルイスの側に…いて。
離れるのはもう嫌なの。だから、だから…お願…い……」
最後は言葉にならなかった。
子供のように泣きじゃくる私をライアンは『絶対に離さないから』と言いながらそっと抱きしめ続けてくれる。
どれくらいそうしていたのか分からないけれども、気づいたら私も自ら彼の身体を抱きしめていた。
私の頬を何かがまた濡らすのを感じて上を見上げると、彼は声を出さず涙を流していた。
お願い、泣かないで。
あなたには笑っていて欲しいの。
……それが私の幸せだから。
泣かせたくないの、笑って…ライアン。
彼の涙を止めてあげたく今度は私が彼の涙をそっと拭う。まだ彼の涙は止まっていないけれど、その顔には笑みが浮かぶ。
ライアンは私を抱きしめたまま、肩に顔を埋めながら耳元で囁いてくる。
「まだ言ってなかったよな。三ヶ月間ずっと待っていたんだ君が俺のもとに帰ってきてくれるのを。
『おかえり、アリーナ』」
「『ただいま』すごく待たせてしまってごめなさい、ライアン」
私達はお互いに泣きながら3ヶ月ぶりに口付けを交わした。
結婚してもう五年が経っていて二人の間には可愛い息子だっているのに、その口付けは初めて交わした時よりもぎこちないものだった。
まるで政略結婚した時のように私達はまた一から関係を築いていくことを選んだ。
二人の間に起こったことがあり過ぎて、正直乗り越えられるかどうか分からない。
この決断が吉と出るのか凶と出るのか…。
きっと不安にかられることもあるだろうし、お互いにぶつかることもあると思う。もしかしたらお互いにすぐに後悔するかもしれない。
それでも私達家族の未来は誰かに惑わされることなく、これからゆっくりと自分達で決めていきたい。それがどんな未来であっても。
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