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15.対峙する声②
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「…アリーナ、話してくれて有り難う。
俺に気持ちを全部伝えてくれて有り難う。
俺は勝手な男で今の話を聞くまでは君の苦しみを分かっていなかった。
いや、いろいろと知って分かったつもりになっていたんだ。でも君の言葉を聞いて、本当は理解していなかったことを思い知ったよ。
本当にすまない。
君が倒れてから俺の元にアーノルドとカトリーナが来たんだ。
二人とも庭園で怪我を負ったが軽傷だったから、君の見舞いに来たんだと思った。
だが彼らは見舞いではなく俺のところに懺悔をしに来た。
真っ青になりながら『悪気はなかった、ただちょっとやり過ぎてしまった…』と。
どういうことかと聞いたら全てを話したよ。彼らは俺とカトリーナの仲を君が疑うようにわざと仕向けたと。そして君に誤解させる行動をとったことを後悔していると涙ながらに謝ってきた。
ふざけるなって思ったよ。君が生死を彷徨っている時の彼らの謝罪は自分達の罪悪感をなくすための行為にしか思えなかったから。
本当は罵倒するつもりだったけど出来なかった。
だって君を一番傷つけていたのは無神経な俺だったから。
でも彼らの話を聞いた俺は君の苦しみを理解したつもりでいた。
今の今まで…。
本当に俺は馬鹿だ、アリーナが受けた苦しみは俺の想像を遥かに超えていて…。
俺が分かったなんて言えるはずないのに。
アリーナ、謝っても許されるとは思っていない。でも俺の気持ちをちゃんと伝えておきたい。俺の幸せはどこにあるかちゃんと知って欲しんだ。君は信じられないかもしれない。今更だって思うだろう。
でも聞いてもらいたい、頼むアリーナ」
真剣な表情でそう訴える彼の話を聞きたいと思った。
だから静かに頷き、彼の口から紡がれる真実を聞いた。
彼も私のように最初からすべての想いを言葉にする。
時には感情的になり時には苦痛に顔を歪ませながら時間を掛けて話し続ける。
でも私は彼の話しをただ黙って聞いていることは出来なかった。だって私の不信感は彼から語られる言葉で簡単に拭い去ることなんて出来ない。
そんなこと言われても今更だわ。
そうだったのねっなんて思えない。
だって、だって…そう思えなかったから、こんな事になっている。
私は話している途中の彼に何度も感情をぶつけた。
綺麗な言葉なんて関係ない、オブラートに包むこともしない。思ったままを言葉にし、彼も真摯に言葉を返してくる。
互いに感情をぶつけ合い、複雑に絡まった私達の糸が少しづつ解れていく。
どれほどの時間を費やしていただろうか。
最後まで聞き終わった時には私達の絡まっていた糸は完全に解れていた。
彼の話に偽りはないと思えた。
彼の口から語られた私への想いも本物であの時は私を見捨てたのではなく不幸な偶然が重なって他の人を私の前で救助しただけ。
彼の幸せはカトリーナではない。
私への愛こそが真実だった。
『彼は私をちゃんと愛してくれている』
その事実に私の心は歓喜に震えている。
それは揺るがない事実で私が求めていたもの。
でも前には戻れない自分がいるのも事実だった。
「ライアン、ちゃんと話してくれて有り難う。
あなたの本当の気持ちが分かって嬉しいわ」
私の言葉を聞き彼はぱっと顔を上げる。その表情は先ほどと違って明るい。
「それならまた前のように戻ろう。俺はアリーナをもう二度と傷つけないと約束する。だからどうかまた俺のことを愛して欲しい」
彼は誤解している。私が彼への愛を失ったと思っている。
でも私の彼への愛は今も昔も変わっていない。簡単に変われるくらいなら心を閉じたりしなかった。
こんなにも苦しんだりしなかった。
「私はね、今でも変わらずにあなたのことを愛しているわ」
口から紡がれたのは真実。
「ならまた元に戻っ、」
彼は私の愛の告白を聞き、勢いよく話しだそうとしたが私がそれを遮った。
「でもね愛しているけど…もう信頼はできない。
愛と信頼は似ているようで違うのよ。愛があっても信頼できないから元の関係には戻れないわ。
愛していると言われても私はきっとあなたを信じられなくて傷つけてしまう。あなたの行動を疑い苦しめる、私もきっと苦しくなる。
それにルイスだって大きくなればそんな両親の姿を見て心を痛めるでしょう…。
だからもう終わりにしましょう」
愛しているからこそ終わりにしたい。
このまま一緒にいてもお互いに傷つけ合うことになる。
私の言葉を彼は拒絶する。
「…アリーナの願いでもそれは聞けない。
俺のことは傷つけていいから、信じられない時は詰ってもいいから、君のそばにいさせて欲しい。どんな形でもいい、君とルイスと一緒にいたい。その為ならどんなことだって俺にとっては些細なことだ」
彼の言葉は嬉しい、でもその言葉をいつか疑う自分は容易に想像できた。
だから彼を拒んだ。
「今はそう思ってもきっとあなたは後で後悔するわ。私の存在が煩わしくなる。そうなる前に終わりにしたいの」
私は臆病だからこのまま終わることを選ぼうとする。
ルイスにとっても両親がいがみ合っているより、離縁しても良い関係でいる方がいいだろう。
私の両親は健在なので離縁しても私とルイスを快く迎い入れてくれるはずだ。ルイスには苦労はさせない。私だけでも愛情を注いで育てる覚悟はある。
離縁したら伯爵家の為にライアンは再婚するだろう。跡継ぎで揉めることを避ける為にルイスを私に託してくれるはず。
だから『これでいいの、大丈夫』と何度も心の中で自分に言い聞かせる。
俺に気持ちを全部伝えてくれて有り難う。
俺は勝手な男で今の話を聞くまでは君の苦しみを分かっていなかった。
いや、いろいろと知って分かったつもりになっていたんだ。でも君の言葉を聞いて、本当は理解していなかったことを思い知ったよ。
本当にすまない。
君が倒れてから俺の元にアーノルドとカトリーナが来たんだ。
二人とも庭園で怪我を負ったが軽傷だったから、君の見舞いに来たんだと思った。
だが彼らは見舞いではなく俺のところに懺悔をしに来た。
真っ青になりながら『悪気はなかった、ただちょっとやり過ぎてしまった…』と。
どういうことかと聞いたら全てを話したよ。彼らは俺とカトリーナの仲を君が疑うようにわざと仕向けたと。そして君に誤解させる行動をとったことを後悔していると涙ながらに謝ってきた。
ふざけるなって思ったよ。君が生死を彷徨っている時の彼らの謝罪は自分達の罪悪感をなくすための行為にしか思えなかったから。
本当は罵倒するつもりだったけど出来なかった。
だって君を一番傷つけていたのは無神経な俺だったから。
でも彼らの話を聞いた俺は君の苦しみを理解したつもりでいた。
今の今まで…。
本当に俺は馬鹿だ、アリーナが受けた苦しみは俺の想像を遥かに超えていて…。
俺が分かったなんて言えるはずないのに。
アリーナ、謝っても許されるとは思っていない。でも俺の気持ちをちゃんと伝えておきたい。俺の幸せはどこにあるかちゃんと知って欲しんだ。君は信じられないかもしれない。今更だって思うだろう。
でも聞いてもらいたい、頼むアリーナ」
真剣な表情でそう訴える彼の話を聞きたいと思った。
だから静かに頷き、彼の口から紡がれる真実を聞いた。
彼も私のように最初からすべての想いを言葉にする。
時には感情的になり時には苦痛に顔を歪ませながら時間を掛けて話し続ける。
でも私は彼の話しをただ黙って聞いていることは出来なかった。だって私の不信感は彼から語られる言葉で簡単に拭い去ることなんて出来ない。
そんなこと言われても今更だわ。
そうだったのねっなんて思えない。
だって、だって…そう思えなかったから、こんな事になっている。
私は話している途中の彼に何度も感情をぶつけた。
綺麗な言葉なんて関係ない、オブラートに包むこともしない。思ったままを言葉にし、彼も真摯に言葉を返してくる。
互いに感情をぶつけ合い、複雑に絡まった私達の糸が少しづつ解れていく。
どれほどの時間を費やしていただろうか。
最後まで聞き終わった時には私達の絡まっていた糸は完全に解れていた。
彼の話に偽りはないと思えた。
彼の口から語られた私への想いも本物であの時は私を見捨てたのではなく不幸な偶然が重なって他の人を私の前で救助しただけ。
彼の幸せはカトリーナではない。
私への愛こそが真実だった。
『彼は私をちゃんと愛してくれている』
その事実に私の心は歓喜に震えている。
それは揺るがない事実で私が求めていたもの。
でも前には戻れない自分がいるのも事実だった。
「ライアン、ちゃんと話してくれて有り難う。
あなたの本当の気持ちが分かって嬉しいわ」
私の言葉を聞き彼はぱっと顔を上げる。その表情は先ほどと違って明るい。
「それならまた前のように戻ろう。俺はアリーナをもう二度と傷つけないと約束する。だからどうかまた俺のことを愛して欲しい」
彼は誤解している。私が彼への愛を失ったと思っている。
でも私の彼への愛は今も昔も変わっていない。簡単に変われるくらいなら心を閉じたりしなかった。
こんなにも苦しんだりしなかった。
「私はね、今でも変わらずにあなたのことを愛しているわ」
口から紡がれたのは真実。
「ならまた元に戻っ、」
彼は私の愛の告白を聞き、勢いよく話しだそうとしたが私がそれを遮った。
「でもね愛しているけど…もう信頼はできない。
愛と信頼は似ているようで違うのよ。愛があっても信頼できないから元の関係には戻れないわ。
愛していると言われても私はきっとあなたを信じられなくて傷つけてしまう。あなたの行動を疑い苦しめる、私もきっと苦しくなる。
それにルイスだって大きくなればそんな両親の姿を見て心を痛めるでしょう…。
だからもう終わりにしましょう」
愛しているからこそ終わりにしたい。
このまま一緒にいてもお互いに傷つけ合うことになる。
私の言葉を彼は拒絶する。
「…アリーナの願いでもそれは聞けない。
俺のことは傷つけていいから、信じられない時は詰ってもいいから、君のそばにいさせて欲しい。どんな形でもいい、君とルイスと一緒にいたい。その為ならどんなことだって俺にとっては些細なことだ」
彼の言葉は嬉しい、でもその言葉をいつか疑う自分は容易に想像できた。
だから彼を拒んだ。
「今はそう思ってもきっとあなたは後で後悔するわ。私の存在が煩わしくなる。そうなる前に終わりにしたいの」
私は臆病だからこのまま終わることを選ぼうとする。
ルイスにとっても両親がいがみ合っているより、離縁しても良い関係でいる方がいいだろう。
私の両親は健在なので離縁しても私とルイスを快く迎い入れてくれるはずだ。ルイスには苦労はさせない。私だけでも愛情を注いで育てる覚悟はある。
離縁したら伯爵家の為にライアンは再婚するだろう。跡継ぎで揉めることを避ける為にルイスを私に託してくれるはず。
だから『これでいいの、大丈夫』と何度も心の中で自分に言い聞かせる。
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