1 / 17
1.残酷な声
しおりを挟む
社交界で絶大な影響力を持っているハリソン侯爵家の夜会には多くの貴族が華やかな衣装を身に纏い参加している。
豪華な料理に贅沢な生演奏、そして賑やかな会話をみなそれぞれ楽しんでいる様はいつもと変わらない。
私も夫であるライアン・リーブス伯爵と一緒にハリソン侯爵夫妻に挨拶を済ませたあとは彼とともに数曲ダンスを踊り、今は乾いた喉を潤しながら休憩をしている。
すると彼の親友でハリソン侯爵家の嫡男であるアーノルドが私達のところにやってきた。
「やあライアン、アリーナ楽しんでいるかい。
少しだけ借りてもいいかな?」
アーノルドがいつものように明るい口調でライアンと私に話し掛けてくるが、後者のセリフは『夫を借りてもいいか』と私に訊ねているものだった。
どうやら男同士の遊びに連れ出したいらしい。
もちろん断る理由はなかった。
私もこのあと友人達とお喋りを楽しみたいと思っていたから。
「ええ勿論ですわ。私も友人達とお喋りを楽しんできますから、どうぞ」
私の返事を聞きライアンは頬に優しく口づけながら『すぐに戻ってくるから、愛してるリーナ』と耳元で囁く。
その姿にアーノルドは『おいおい、いつもながらお熱いな~。ライアン、独占欲丸出しだぞ』とからかいの言葉を口にする。
私は恥ずかしくて顔を真っ赤にして俯くが、夫は動じることなく『愛しているんだからこれくらい当然だろう』と言う。
「はっはっは、仲が良くてなによりだな。だが男同士の付き合いも大切にしろよ、さあ行こうぜ」
「ああ分かった、じゃあリーナちょっとだけ行ってくる。変な奴に声を掛けられても無視しろよ」
「ふふふ、大丈夫よ。ライ、いってらっしゃい」
親友であるアーノルドに連れられライアンは私から離れていく。
何度も振り返っている彼を安心させるように軽く手を振ると、彼も嬉しそうに手を振り返してくれる。
まるで新婚のようなやり取りだが、私達はもう結婚してから五年経っている。
結婚当初はこんな風ではなかった。
私達は政略結婚でそこにお互いの感情はなかった。
二つ年上の彼には学園に在学中から愛する女性がいた。付き合っていたわけではないが、誰もが憧れるその女性に彼が惹かれているのを知らない人はいなかった。
私には特別に想いを寄せる人はいなかったけれども、彼の気持ちは理解できし嫌悪感も抱かなかった。
貴族の婚姻は所詮家の為のもの。
お互いに尊重しあうことは必要だが、愛し合うことは必要不可欠ではない。
婚姻後も常識の範囲内ならお互いに愛人を持つことを受け入れるのが貴族の心得というものだ。
だからお互いに割り切って婚姻を結び、貴族らしい夫婦生活を始めた。
しかし予想外のことが起こった。
穏やかな結婚生活を続けるうちにお互いの間に自然と愛が芽生え、私達はその愛を育み真の意味で夫婦になれた。
私にとって夫が初恋となり、彼にとっては妻である私が真実の相手となった。
お互いに『ライ』『リーナ』と愛称で呼び合い、政略から生まれた愛に私達は永遠を誓う。
政略から始まったのにおとぎ話のような結末を手に入れる。
彼からの愛を疑ったことはないし、私だって誰よりも彼を愛していると言い切れる。
…この愛は揺るがないはずだった。
ライアンと別行動をしていた私は友人とお喋りを楽しんでいたが少し気分が悪くなり、新鮮な空気を吸いに一人でバルコニーに出た。
誰かから声を掛けられるのを避けるために、柱の陰に隠れるようにして休んでいると数人の男性達の声が聞こえてきた。
時折聞こえてくる笑い声から、彼らが酒に酔ってご機嫌な様子なのが分かる。
この場から離れたかったが酒に酔った男性達に絡まれるのが嫌で、彼らがいなくなるまでこの場に留まることにした。
周囲に誰もいないと思っている彼らは声を潜めることもなく、思ったままを口にしている。
「今日も楽しい夜を一緒に過ごせるような美しい未亡人は見つからなかったな…。あーあ、なんで誘っても断らられるんだ?」
「馬鹿だな、お前なんかがそんなに上手く行くわけないだろう。」
「美しい人に夜のお相手を頼むんだったら、もっと閨の技術を磨いてからにしろよ。そうしないと恥をかくだけだぞ、はっはっは~」
男同士の明け透けな会話は続く。聞くつもりはないが彼らの声が耳に入ってくるのを止めることは出来ない。
「そういえば、今度カトリーナ・ガザンが帰国してくるらしいぞ、知っているか?
夫であるとガザン侯爵が外交官として隣国に赴任していたから一緒に行っていたのは知っているだろう。どうやら夫が愛人を作って子供まで産ませたらしい。それを知った彼女は当然のごとく傷ついて夫を責め立て夫婦関係が上手くいかなくなったようで、一人でこちらに戻ってくることになったってさっき聞いたんだ」
『カトリーナ』という名を聞き心臓の鼓動が早まる。
彼女は夫の同級生で学園に在学中多くの男子生徒から女神のようだと持て囃され、女子生徒からは淑女の鏡として目標にされるような人だった。
社交界でも『麗しの黒薔薇』と言われ羨望の的だった。
私なんかでは足元にも及ばないそんな素敵な人。
そして夫も彼女に恋い焦がれ、結婚当初はまだその想いを大切に胸に仕舞っていた。
『夫の昔の想い人』であるカトリーナの帰国に心が揺れる。
彼がこのことを知ったらどう思うだろう。
懐かしいと思うのか、それともかつて抱いた想いを思い出すのか。
できれば何も感じないで欲しい、気にも留めないで欲しい。
そう願うのは妻として当然だろう。
もう何年も会ってもいないわ。
ただ知り合いが帰ってくるだけよ。
彼は今更きっとなにも思わない。
だって今は私だけを愛してくれているから。
そうよ、何も気にすることなんてないわ。
変に気にしちゃ駄目…。
少しでも疑うような感情を抱いてしまった自分に呆れてしまう。自分がこんなにも嫉妬深いなんて知らなかった。
淑女ならば夫の愛人に寛容でなければならないのは分かっている。でも今は受けいれられない自分がいる。
…それは愛を知ってしまったから。
淑女としては失格でもこんなにも夫を愛している自分が誇らしい。
貴族なのに純粋に夫を愛せるなんてこんなに幸せなことはないだろう。
そんな風に思っていると知っている声が耳に入ってきた。
「我らの女神、カトリーナが傷心で帰ってくるなんて胸が痛くなるよ。その心を慰め射止める幸運な奴は誰だろうな~」
少しおどけた調子で話す声はアーノルドのものだった。
彼の言葉に数人が『俺が慰めよう』と名乗りを上げる、その中に知っている声はない。
「はっはっ、お前達じゃ駄目だな。女神は振り向いてさえくれないさ。
そうだライアン、お前はどうだ?
あんなにも女神を好きだったじゃないか。
傷ついた心を癒やしてあげろよ。
今だって変わらずに愛しているんだろう?」
いきなり出て来た夫の名に衝撃を受ける。
まさかこの場に彼もいるとは思っていなかった。
何も答えないライアンに周りは煽るような言葉を掛ける。
「そういえば女神も在学中はライアンのことまんざらでもないって感じだったな。同じ生徒会で仲良かったじゃないか。こんな機会は二度とないぞ、勇気を出してみろよ」
「貴族は愛人を持つことは許されているんだ。妻を大切にするのもいいが、政略で結ばれた妻だけの人生なんて味気ないぞ。もっと楽しめ!」
挑発的な言葉が続くが、その馬鹿げた提案に夫が乗らないのに安堵する。
やはり彼は私を愛しているから…と思っていると私の耳が彼の声が捉えた。
「…そうだな、傷ついた彼女を慰めるのは、人として間違ってはいないな」
誰かに言い訳をするように呟くライアンに周りは盛り上がる。
「そうだ、傷ついた女性に親切にするのは当然だ。それが紳士ってもんだろう!」
「それが愛する女性なら尚更見捨ててはおけないからな、なあライアン?」
「…まあ…助けてあげなくてはいけないな」
『愛する女性なら』という言葉が私の心を掻き乱す。
夫はそれを否定してくれない。
更に親友であるアーノルドの残酷な言葉が続く。
「ライアン、すっと抱えていた秘めたる想いを今度こそ叶えてみろ。頑張れよ!」
「あ、ああ…そうだな」
短い返事だがそれは肯定の言葉だった。
彼は昔カトリーナを愛していた、それは知っている。でも今も変わらずに愛し続けていることは知らなかった。
…彼はずっと『秘めたる想い』を大切にしていた。
つまり…それは…私のことは愛してはいなかったということ。
愛する夫の本心は私にとって酷く残酷なものだった。
豪華な料理に贅沢な生演奏、そして賑やかな会話をみなそれぞれ楽しんでいる様はいつもと変わらない。
私も夫であるライアン・リーブス伯爵と一緒にハリソン侯爵夫妻に挨拶を済ませたあとは彼とともに数曲ダンスを踊り、今は乾いた喉を潤しながら休憩をしている。
すると彼の親友でハリソン侯爵家の嫡男であるアーノルドが私達のところにやってきた。
「やあライアン、アリーナ楽しんでいるかい。
少しだけ借りてもいいかな?」
アーノルドがいつものように明るい口調でライアンと私に話し掛けてくるが、後者のセリフは『夫を借りてもいいか』と私に訊ねているものだった。
どうやら男同士の遊びに連れ出したいらしい。
もちろん断る理由はなかった。
私もこのあと友人達とお喋りを楽しみたいと思っていたから。
「ええ勿論ですわ。私も友人達とお喋りを楽しんできますから、どうぞ」
私の返事を聞きライアンは頬に優しく口づけながら『すぐに戻ってくるから、愛してるリーナ』と耳元で囁く。
その姿にアーノルドは『おいおい、いつもながらお熱いな~。ライアン、独占欲丸出しだぞ』とからかいの言葉を口にする。
私は恥ずかしくて顔を真っ赤にして俯くが、夫は動じることなく『愛しているんだからこれくらい当然だろう』と言う。
「はっはっは、仲が良くてなによりだな。だが男同士の付き合いも大切にしろよ、さあ行こうぜ」
「ああ分かった、じゃあリーナちょっとだけ行ってくる。変な奴に声を掛けられても無視しろよ」
「ふふふ、大丈夫よ。ライ、いってらっしゃい」
親友であるアーノルドに連れられライアンは私から離れていく。
何度も振り返っている彼を安心させるように軽く手を振ると、彼も嬉しそうに手を振り返してくれる。
まるで新婚のようなやり取りだが、私達はもう結婚してから五年経っている。
結婚当初はこんな風ではなかった。
私達は政略結婚でそこにお互いの感情はなかった。
二つ年上の彼には学園に在学中から愛する女性がいた。付き合っていたわけではないが、誰もが憧れるその女性に彼が惹かれているのを知らない人はいなかった。
私には特別に想いを寄せる人はいなかったけれども、彼の気持ちは理解できし嫌悪感も抱かなかった。
貴族の婚姻は所詮家の為のもの。
お互いに尊重しあうことは必要だが、愛し合うことは必要不可欠ではない。
婚姻後も常識の範囲内ならお互いに愛人を持つことを受け入れるのが貴族の心得というものだ。
だからお互いに割り切って婚姻を結び、貴族らしい夫婦生活を始めた。
しかし予想外のことが起こった。
穏やかな結婚生活を続けるうちにお互いの間に自然と愛が芽生え、私達はその愛を育み真の意味で夫婦になれた。
私にとって夫が初恋となり、彼にとっては妻である私が真実の相手となった。
お互いに『ライ』『リーナ』と愛称で呼び合い、政略から生まれた愛に私達は永遠を誓う。
政略から始まったのにおとぎ話のような結末を手に入れる。
彼からの愛を疑ったことはないし、私だって誰よりも彼を愛していると言い切れる。
…この愛は揺るがないはずだった。
ライアンと別行動をしていた私は友人とお喋りを楽しんでいたが少し気分が悪くなり、新鮮な空気を吸いに一人でバルコニーに出た。
誰かから声を掛けられるのを避けるために、柱の陰に隠れるようにして休んでいると数人の男性達の声が聞こえてきた。
時折聞こえてくる笑い声から、彼らが酒に酔ってご機嫌な様子なのが分かる。
この場から離れたかったが酒に酔った男性達に絡まれるのが嫌で、彼らがいなくなるまでこの場に留まることにした。
周囲に誰もいないと思っている彼らは声を潜めることもなく、思ったままを口にしている。
「今日も楽しい夜を一緒に過ごせるような美しい未亡人は見つからなかったな…。あーあ、なんで誘っても断らられるんだ?」
「馬鹿だな、お前なんかがそんなに上手く行くわけないだろう。」
「美しい人に夜のお相手を頼むんだったら、もっと閨の技術を磨いてからにしろよ。そうしないと恥をかくだけだぞ、はっはっは~」
男同士の明け透けな会話は続く。聞くつもりはないが彼らの声が耳に入ってくるのを止めることは出来ない。
「そういえば、今度カトリーナ・ガザンが帰国してくるらしいぞ、知っているか?
夫であるとガザン侯爵が外交官として隣国に赴任していたから一緒に行っていたのは知っているだろう。どうやら夫が愛人を作って子供まで産ませたらしい。それを知った彼女は当然のごとく傷ついて夫を責め立て夫婦関係が上手くいかなくなったようで、一人でこちらに戻ってくることになったってさっき聞いたんだ」
『カトリーナ』という名を聞き心臓の鼓動が早まる。
彼女は夫の同級生で学園に在学中多くの男子生徒から女神のようだと持て囃され、女子生徒からは淑女の鏡として目標にされるような人だった。
社交界でも『麗しの黒薔薇』と言われ羨望の的だった。
私なんかでは足元にも及ばないそんな素敵な人。
そして夫も彼女に恋い焦がれ、結婚当初はまだその想いを大切に胸に仕舞っていた。
『夫の昔の想い人』であるカトリーナの帰国に心が揺れる。
彼がこのことを知ったらどう思うだろう。
懐かしいと思うのか、それともかつて抱いた想いを思い出すのか。
できれば何も感じないで欲しい、気にも留めないで欲しい。
そう願うのは妻として当然だろう。
もう何年も会ってもいないわ。
ただ知り合いが帰ってくるだけよ。
彼は今更きっとなにも思わない。
だって今は私だけを愛してくれているから。
そうよ、何も気にすることなんてないわ。
変に気にしちゃ駄目…。
少しでも疑うような感情を抱いてしまった自分に呆れてしまう。自分がこんなにも嫉妬深いなんて知らなかった。
淑女ならば夫の愛人に寛容でなければならないのは分かっている。でも今は受けいれられない自分がいる。
…それは愛を知ってしまったから。
淑女としては失格でもこんなにも夫を愛している自分が誇らしい。
貴族なのに純粋に夫を愛せるなんてこんなに幸せなことはないだろう。
そんな風に思っていると知っている声が耳に入ってきた。
「我らの女神、カトリーナが傷心で帰ってくるなんて胸が痛くなるよ。その心を慰め射止める幸運な奴は誰だろうな~」
少しおどけた調子で話す声はアーノルドのものだった。
彼の言葉に数人が『俺が慰めよう』と名乗りを上げる、その中に知っている声はない。
「はっはっ、お前達じゃ駄目だな。女神は振り向いてさえくれないさ。
そうだライアン、お前はどうだ?
あんなにも女神を好きだったじゃないか。
傷ついた心を癒やしてあげろよ。
今だって変わらずに愛しているんだろう?」
いきなり出て来た夫の名に衝撃を受ける。
まさかこの場に彼もいるとは思っていなかった。
何も答えないライアンに周りは煽るような言葉を掛ける。
「そういえば女神も在学中はライアンのことまんざらでもないって感じだったな。同じ生徒会で仲良かったじゃないか。こんな機会は二度とないぞ、勇気を出してみろよ」
「貴族は愛人を持つことは許されているんだ。妻を大切にするのもいいが、政略で結ばれた妻だけの人生なんて味気ないぞ。もっと楽しめ!」
挑発的な言葉が続くが、その馬鹿げた提案に夫が乗らないのに安堵する。
やはり彼は私を愛しているから…と思っていると私の耳が彼の声が捉えた。
「…そうだな、傷ついた彼女を慰めるのは、人として間違ってはいないな」
誰かに言い訳をするように呟くライアンに周りは盛り上がる。
「そうだ、傷ついた女性に親切にするのは当然だ。それが紳士ってもんだろう!」
「それが愛する女性なら尚更見捨ててはおけないからな、なあライアン?」
「…まあ…助けてあげなくてはいけないな」
『愛する女性なら』という言葉が私の心を掻き乱す。
夫はそれを否定してくれない。
更に親友であるアーノルドの残酷な言葉が続く。
「ライアン、すっと抱えていた秘めたる想いを今度こそ叶えてみろ。頑張れよ!」
「あ、ああ…そうだな」
短い返事だがそれは肯定の言葉だった。
彼は昔カトリーナを愛していた、それは知っている。でも今も変わらずに愛し続けていることは知らなかった。
…彼はずっと『秘めたる想い』を大切にしていた。
つまり…それは…私のことは愛してはいなかったということ。
愛する夫の本心は私にとって酷く残酷なものだった。
282
お気に入りに追加
6,618
あなたにおすすめの小説
もう終わりにしましょう、その愛は永遠ですから…
矢野りと
恋愛
婚約者だった夫と結婚して半年が経っても私に対する周りの評価は変わらない。
『愛し合う二人を無理矢理別れさせた悪女』
『身分を笠に着る嫌な女』
貴族社会では噂が真実かどうかは関係ない、信じたいことが真実になる。
誰も庇ってはくれない、夫でさえも…。だから私はあなたを嫌いになりたい。
愚か者は幸せを捨てた
矢野りと
恋愛
相思相愛で結ばれた二人がある日、分かれることになった。夫を愛しているサラは別れを拒んだが、夫であるマキタは非情な手段でサラとの婚姻関係そのものをなかったことにしてしまった。
だがそれは男の本意ではなかった…。
魅了の呪縛から解き放たれた男が我に返った時、そこに幸せはなかった。
最愛の人を失った男が必死に幸せを取り戻そうとするが…。
今の幸せを捨て新たな幸せを求めた先にあったもの
矢野りと
恋愛
夫トウイ・アロークは13年間も連れ添った妻エラに別れを切り出す。
『…すまない。離縁してくれないか』
妻を嫌いになったわけではない、ただもっと大切にするべき相手が出来てしまったのだ。どんな罵倒も受け入れるつもりだった、離縁後の生活に困らないようにするつもりだった。
新たな幸せを手に入れる夫と全ての幸せを奪われてしまう妻。その先に待っていたのは…。
*設定はゆるいです。
永遠の誓いを立てましょう、あなたへの想いを思い出すことは決してないと……
矢野りと
恋愛
ある日突然、私はすべてを失った。
『もう君はいりません、アリスミ・カロック』
恋人は表情を変えることなく、別れの言葉を告げてきた。彼の隣にいた私の親友は、申し訳なさそうな顔を作ることすらせず笑っていた。
恋人も親友も一度に失った私に待っていたのは、さらなる残酷な仕打ちだった。
『八等級魔術師アリスミ・カロック。異動を命じる』
『えっ……』
任期途中での異動辞令は前例がない。最上位の魔術師である元恋人が裏で動いた結果なのは容易に察せられた。
私にそれを拒絶する力は勿論なく、一生懸命に築いてきた居場所さえも呆気なく奪われた。
それから二年が経った頃、立ち直った私の前に再び彼が現れる。
――二度と交わらないはずだった運命の歯車が、また動き出した……。
※このお話の設定は架空のものです。
※お話があわない時はブラウザバックでお願いします(_ _)
浮気の代償~失った絆は戻らない~
矢野りと
恋愛
結婚十年目の愛妻家トーマスはほんの軽い気持ちで浮気をしてしまった。そして浮気が妻イザベラに知られてしまった時にトーマスはなんとか誤魔化そうとして謝る事もせず、逆に家族を味方に付け妻を悪者にしてしまった。何の落ち度もない妻に悪い事をしたとは思っていたが、これで浮気の事はあやふやになり、愛する家族との日常が戻ってくると信じていた。だがそうはならなかった…。
※設定はゆるいです。
【完結】忘れてください
仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
愛していた。
貴方はそうでないと知りながら、私は貴方だけを愛していた。
夫の恋人に子供ができたと教えられても、私は貴方との未来を信じていたのに。
貴方から離婚届を渡されて、私の心は粉々に砕け散った。
もういいの。
私は貴方を解放する覚悟を決めた。
貴方が気づいていない小さな鼓動を守りながら、ここを離れます。
私の事は忘れてください。
※6月26日初回完結
7月12日2回目完結しました。
お読みいただきありがとうございます。
立派な王太子妃~妃の幸せは誰が考えるのか~
矢野りと
恋愛
ある日王太子妃は夫である王太子の不貞の現場を目撃してしまう。愛している夫の裏切りに傷つきながらも、やり直したいと周りに助言を求めるが‥‥。
隠れて不貞を続ける夫を見続けていくうちに壊れていく妻。
周りが気づいた時は何もかも手遅れだった…。
※設定はゆるいです。
貴方へ愛を伝え続けてきましたが、もう限界です。
あおい
恋愛
貴方に愛を伝えてもほぼ無意味だと私は気づきました。婚約相手は学園に入ってから、ずっと沢山の女性と遊んでばかり。それに加えて、私に沢山の暴言を仰った。政略婚約は母を見て大変だと知っていたので、愛のある結婚をしようと努力したつもりでしたが、貴方には届きませんでしたね。もう、諦めますわ。
貴方の為に着飾る事も、髪を伸ばす事も、止めます。私も自由にしたいので貴方も好きにおやりになって。
…あの、今更謝るなんてどういうつもりなんです?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる