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53.母国のその後①
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なにを告げられるのか分からない緊張が表情に出ていたのだろう。
私の顔を見てルカ様は『そんなに身構える必要はないから』と柔らかい声音で言ってくれた。
その言葉に少しだけほっとしていると『シシリアは素直だな』と彼は笑ってから話し出した。
「シシリア、君の母国についてのことだ。近いうちに正式に公表されるがその前に伝えておこうと思って。あの国は現国王が退位し第一王子が新しい国王になる」
それは断定した言い方だった。
確かな情報なのだろう。
でも母国では国王が交代するのは基本崩御した時だ。存命なのに自ら退位するなど普通は有り得ない。
つまりこれは異例なこと。
「なぜと訊ねてもいいですか…」
私が聞いていい事なのか分からない、でも訊ねずにはいられなかった。
「もちろんだ、君には知る権利がある。あの国で冤罪を着せられた裏には君も知っての通り王族も関係しているのだからね」
そうだ、王族や上位貴族の子息が絡んでいたから、あの冤罪が出来上がった。
ルカ様は私の顔を真っ直ぐに見ながら話しを続ける。
「シシリアがあの国を出たあとのことだ。今まで見過ごされていた高位貴族の不正などが少しづつだが正しく裁かれるようになっていった。すると芋蔓式にあの第四王子がやってきたことも明るみに出てきた。一つ一つは些細なことだが、塵も積もれば…というところかな。ついでにわが子可愛さにもみ消してきた国王の愚かな行動も。
第一王子はそれなりに真っ当な人物だったから、それらをもみ消すことはなかった。第四王子は廃嫡となり国王は退位という形で表舞台から去ることになったというわけだ。
ちなみに正しく裁かれた者達の中には君に生徒会の仕事を押し付け、魅了という冤罪を作ることに加担した者達もしっかりと入っていたようだ」
あの人達がそんな事になっていたなんて。
知らなかった…。
自業自得だと思う。
でも不思議とそれ以上思うことはなかった。
あの頃は憎しみを抱いていたけれど、今は彼らのことで心を削ることもなくなっていたから。
「大丈夫かい?」
ルカ様が心配そうな声音でそう聞いてくる。
忌まわしい過去のことを思い出し辛くなっているのではないかと心配してくれている。
でも私は…もう過去に怯えることはない。
私の居場所はここだから。
「はい、大丈夫です。ルカ様、お気遣いありがとうございます」
はっきりとそう言えた。
彼は『それなら良かった』と安心した顔をする。
私はそんな彼を見ながら、これはマイナスが政治的介入をしたということだろうかと考えてしまう。
するとルカ様はそれを察したようだ。
「違うよ、シシリア。君はマイナスが何かしら仕組んだと思っているようだがそれはちょっと違う。
マイナスは国としてなにもやっていない」
「だからマイナスではなく、ルカ様が不正を正したのですか?」
そうとしか考えられない。
いきなりあの国が変わるとは思えないから。
「あの国は本来なら正しい道を指し示すべき上自体が腐っていた。故意に冤罪まで生んでしまうほどに…。だが私は正してはいないよ」
これは直接的に正してはいないという意味だろう。
「でも何かをしましたよね…?」
『正してはいない』というルカ様に対して間髪入れずそう訊ねた。
友人として話しているのならこれくらいは許されるだろうとちょっとだけ強気で。するとルカ様はイタズラがバレた子供のような顔してみせた。
私の顔を見てルカ様は『そんなに身構える必要はないから』と柔らかい声音で言ってくれた。
その言葉に少しだけほっとしていると『シシリアは素直だな』と彼は笑ってから話し出した。
「シシリア、君の母国についてのことだ。近いうちに正式に公表されるがその前に伝えておこうと思って。あの国は現国王が退位し第一王子が新しい国王になる」
それは断定した言い方だった。
確かな情報なのだろう。
でも母国では国王が交代するのは基本崩御した時だ。存命なのに自ら退位するなど普通は有り得ない。
つまりこれは異例なこと。
「なぜと訊ねてもいいですか…」
私が聞いていい事なのか分からない、でも訊ねずにはいられなかった。
「もちろんだ、君には知る権利がある。あの国で冤罪を着せられた裏には君も知っての通り王族も関係しているのだからね」
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ルカ様は私の顔を真っ直ぐに見ながら話しを続ける。
「シシリアがあの国を出たあとのことだ。今まで見過ごされていた高位貴族の不正などが少しづつだが正しく裁かれるようになっていった。すると芋蔓式にあの第四王子がやってきたことも明るみに出てきた。一つ一つは些細なことだが、塵も積もれば…というところかな。ついでにわが子可愛さにもみ消してきた国王の愚かな行動も。
第一王子はそれなりに真っ当な人物だったから、それらをもみ消すことはなかった。第四王子は廃嫡となり国王は退位という形で表舞台から去ることになったというわけだ。
ちなみに正しく裁かれた者達の中には君に生徒会の仕事を押し付け、魅了という冤罪を作ることに加担した者達もしっかりと入っていたようだ」
あの人達がそんな事になっていたなんて。
知らなかった…。
自業自得だと思う。
でも不思議とそれ以上思うことはなかった。
あの頃は憎しみを抱いていたけれど、今は彼らのことで心を削ることもなくなっていたから。
「大丈夫かい?」
ルカ様が心配そうな声音でそう聞いてくる。
忌まわしい過去のことを思い出し辛くなっているのではないかと心配してくれている。
でも私は…もう過去に怯えることはない。
私の居場所はここだから。
「はい、大丈夫です。ルカ様、お気遣いありがとうございます」
はっきりとそう言えた。
彼は『それなら良かった』と安心した顔をする。
私はそんな彼を見ながら、これはマイナスが政治的介入をしたということだろうかと考えてしまう。
するとルカ様はそれを察したようだ。
「違うよ、シシリア。君はマイナスが何かしら仕組んだと思っているようだがそれはちょっと違う。
マイナスは国としてなにもやっていない」
「だからマイナスではなく、ルカ様が不正を正したのですか?」
そうとしか考えられない。
いきなりあの国が変わるとは思えないから。
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これは直接的に正してはいないという意味だろう。
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