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51.定期報告会②
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「まず結論から言いますと状況は全く変わっておりません。最初のほうこそあまり深い関係にない数人に術の綻びが見受けられ、解術に近い状況になっておりましたが、それ以降変化はありません。そのもの達も時間の経過による気持ちの変化と感じているようですので、そのまま経過観察を続けております。
近い関係にあった者達は安定しています。
ガイアロス・ゲートのほうも問題ありません。最初の頃気持ちの揺らぎのようなものを感じたので注意深く観察していますが、今のところ術の綻びはありません。同じくゲート伯爵夫妻も安定しております」
魔術師の口から告げられた報告はここ数年間変わっていない。それを聞いて私はほっとする。術が安定しているということは私の大切な人達が幸せに暮らしているということだから。
それに元婚約者の名が出ても心がざわつくこともいつの間にかなくなった。
彼が大切な人ではなくなったということではない。5年という歳月が彼に対する想いを緩やかに変えてくれた。
ガイアロス・ゲートはもう愛する人ではない。
大切なのは変わらないが、その想いは全く違う…。
こんな表現はおかしいかもしれないが、これは家族に対する感情に近いのだと思う。
正直にいえばこんな風に思える日が来るとは思っていなかった。…本気で愛していたから。
本当に不思議ね、心って。
自分でも信じられないわ。
でも我慢しているわけではない。
本当に心から彼の幸せを自然に願えている。
こんなにも穏やかに…。
この国での長い時間が私にとって必要なものだったのだろう。
報告に聞きながら頷いていた殿下はいつものようにの言葉を口にする。
「では術の上書きが必要になる状況にはなっていないということだな」
「はい、そうです。それぞれが受け取るべき平穏を保っておりますので、上書きの必要は生じてないと認識しております」
答える魔術師に言葉に戸惑いは一切ない。
「そうか、引き続き同じように観察を続けてくれ。では他に術に関して報告がある者はいるか?」
殿下が部屋にいる者たちを見ながらそう言うが誰も発言をする者はいなかった。
この反応もここ数年間は同じだ。
告げるべきことがなにも起こっていないのだから。
この定期報告会自体をなくしてしまってもいいのかもしれないが、殿下は私を気遣ってやめずにいてくれているのだ。
以前一人の魔術師が『もう定期的に報告会をする必要はないのでは?術は安定しておりますし変化もないので報告書の提出のみでも事足りるかと思いますが…』と口にしたことがある。
だが殿下は止めるという選択はしなかった。
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だが殿下は止めるという選択はしなかった。
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