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46.新たな居場所①

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マイナスに来て早いものでもう5年が経った。今はこの国に自分の居場所を見つけることが出来たと感じている。

でもそれは簡単なことではなかった。



この国に来た私には衣食住すべてが用意されて、研究対象でもある私には過ぎた待遇ともいえるものだった。
だがそれは物理的な面でだ。

今回のことは秘密事項でもあり、研究対象である私になにかあった時にはすぐに対処できるようにと、私は保護という名のもと魔術を管轄する部署で働く場所を与えられた。

一緒に働く人達はみな魔術に関する知識があり、今回の経緯も当然知っていた。

反応は様々だった。
我関せずな人や私の判断をよく思っていないだろう人や厄介者が来たと言わんばかりの態度をしてくる人など。

覚悟はしていたけれども、やはり辛いものがあった。

ルカ様がこの国の第6王子でこの部署をまとめる立場にあると知ったからには、安易に相談などできるはずもなく、歯を食いしばって頑張るしかなった。

 自分が選んだ道よ。
 簡単じゃないって分かっていたことだわ。


泣き言を言う相手もいないなか、私はこの場所ではお荷物でしかなかった。

魔力が殆ど無いのは努力してもどうにもならない。それなので魔術に関する知識だけでも取得し、周りの人達をサポートできるようにと必死に学んだ。

少しずつ、本当に少しずつなんとか役に立てるようになっていき、周りの人達の態度もそれとともに変わっていった。

私の存在を認めてくれるようになっていく。

それでも一部の人達は頑なに私のことを受け入れてくれようとはしなかった。

『おい邪魔だ、どけよ。本当はお前みたいな勝手な奴はここにいるべきじゃないんだぞ。研究対象だからいられるんだ。モルモットはモルモットらしく大人しくしていろ』

荒い口調で話し掛けてくるのは若い魔術師だ。
彼は私が解術をしないと決めたことをよく思っていない為、ことあるごとに絡んでくる。

『邪魔をするつもりはありません、お手伝い出来ることをしているだけです』

丁寧な口調でそう言うが、彼には通じない。

『はんっ、出来ることってなんだよ?
また間違った判断でも押しつけるのか?くだらない自己満足のためにっ』

これが彼のお決まりの台詞だった。
彼の考えはそうだろうが、私はそう思ってはいない。

正解だったかは分からないけれども、もし時が巻き戻ってもあの状況では同じ選択をするだろう。
…後悔はしていない。

理解して貰えなくても同じことを何度だって伝えるだけだ。
私が口を開こうとしたその時、同僚のナンシーが通りがかった。

『あんたさー、毎回毎回飽きずになに言ってんの。ちょっと煩いんだけどー』

彼女はマイナスでも一二を争うほどの魔力を持っている魔術師だ。
口が悪いがその腕は別格で、若いけれども周りからは一目置かれている。
一人でいることが多く、私のことも最初から関心がないようで話したことはあまりない。

『お前には関係ないだろう』

いきなり口を出されて、彼は苛立っているようだった。

『確かに関係ない、ただあんたも関係ない』
『俺は間違っていることをこの女に教えようとしているんだよ。道を正そうとしているんだ!』

私のことを指差しそう叫ぶ彼。
ナンシーはそんな彼を見ながらプッと吹き出し、軽い口調で話しを続ける。

『なに言ってんの…?あんたいつもいつも馬鹿みたいに絡んでいるだけじゃん。本気で正そうとしてんなら、ルカディオ殿下に直訴すればいいじゃん。反対の理由を言って間違いを正せばいい。殿下はちゃんと意見を聞く人だよね?聞いたあとどう判断するかは殿下次第だけださー。
あんたそれやった?』

『…っ…。そ、それは…』

ナンシーの言葉に口籠る若い魔術師。
言っていないのは明白だった。

『ギャンギャン吠えてるのはさ、だいたい無責任な奴なんだよね。それに無関係な奴ほど偉そうなことを言う。なぜなら責任取る必要なくて自分に直接被害もないから。
そのうえ想像力もないときた。物事って表に出ていることだけが全てじゃない、当時者にしか分からないことだって普通はあるよ。そんなことも分からないから『正論』を盾にして何言ってもいいと勘違いしちゃってる』

ヘラヘラとした口調のナンシーだったけれども、目は笑ってなかった。
彼は慌てて何かを言おうとしたが遮られてしまう。

『そんなことない、俺は違、』

『そんなことないならさー、今から殿下に直訴しなよ。この子に言っても何も変わらないじゃん、だって研究対象で権限ないしね。それに最終判断は殿下だ、あんた流に言えば正しくないのはこの子だけじゃなくて殿下もお・な・じ』

その言葉を聞き彼は真っ青になりながら『用事を思い出したから…』とその場から去っていった。
すぐに『助けてくれてありがとうございました』と彼女に向かって頭を下げる。

『それ間違ってる、助けてないからさー』

そう言う彼女はちゃんと目も笑っていた。

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