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25.若き文官の策略③
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母国に戻り王宮で文官として働き出してからは、思った以上に全てが順調にいっていた。
俺が広めた『悲劇の正妃』と愚かなタチアナ正妃からの手紙は効果てきめんで、国王は予想以上に不利な条件を飲み鉱脈問題を早期に解決した。
---おいおい、俺が仕組んでいてなんだが本当にいいのかこれで…。
そして俺はタチアナ王女の帰還が決まったと同時に『悲恋の恋人達はまだ想い合っている、今度こそ幸せになって欲しい』とお喋りな令嬢達数名に囁いた。すると『愛し合っている悲恋の恋人達は今度こそ結ばれる事を切に願っている』という噂がまことしやかに流れ、そのうちその噂は真実として人々に認知されていた。
ここまでの計画は完璧だった。
けれどもこの頃、俺は気持ちが揺れ動いでいた。最近リデック・バウアーの態度が夫として普通になりかつ『ハンナが身籠ったこと』を知ったのだ。
ハンナを愛する俺の気持ちは変わっていないが、もしハンナが夫を愛しているのなら話は別だ。彼女を不幸になど絶対にしたくない。
---計画を変えるか…。
俺はリデック・バウアーという男を試すことにした。真面な男だったら王女の降嫁を全力で拒否し身籠っている妻を守るはずだ。
なので王女の降嫁先をほぼリデック・バウアーに決めている宰相に進言したのだ。
「宰相様。タチアナ王女様の降嫁相手のリデック・バウアーに念のため事前に降嫁を受け入れる意思があるのか確認をしたらいかかでしょうか?」
「そんな必要はなかろう。あそこは不仲で有名だからお互い喜んで離縁し降嫁を喜んで受け入れるはずだ」
「そうだとは思いますが、念のためです。文官なら確認は怠らないものですから」
「分かった。リデック・バウアーを今すぐ呼んできてくれ」
そして俺に連れられてやってきたリデック・バウアーという男は…『正真正銘の馬鹿』だった。
質問の意図を正しく理解しているのか不明だが、王女の降嫁を受け入れるととれる発言をしていたのだ。
---こんな奴をハンナが愛する訳ないな。そしてこいつと一緒にいても彼女は幸せになれない。
もう遠慮はいらないな、計画続行だ。
俺は宰相との話を終えたリデック・バウアーに『素晴らしい返答でしたね』と思わず嫌味を言ったが、『有り難う』とお目出度い返事が返ってきた。
役者達が予想以上に上手く踊ってくれたので、数日後には愛するハンナは自由の身になった。
俺の本番はこれからだ。
俺が広めた『悲劇の正妃』と愚かなタチアナ正妃からの手紙は効果てきめんで、国王は予想以上に不利な条件を飲み鉱脈問題を早期に解決した。
---おいおい、俺が仕組んでいてなんだが本当にいいのかこれで…。
そして俺はタチアナ王女の帰還が決まったと同時に『悲恋の恋人達はまだ想い合っている、今度こそ幸せになって欲しい』とお喋りな令嬢達数名に囁いた。すると『愛し合っている悲恋の恋人達は今度こそ結ばれる事を切に願っている』という噂がまことしやかに流れ、そのうちその噂は真実として人々に認知されていた。
ここまでの計画は完璧だった。
けれどもこの頃、俺は気持ちが揺れ動いでいた。最近リデック・バウアーの態度が夫として普通になりかつ『ハンナが身籠ったこと』を知ったのだ。
ハンナを愛する俺の気持ちは変わっていないが、もしハンナが夫を愛しているのなら話は別だ。彼女を不幸になど絶対にしたくない。
---計画を変えるか…。
俺はリデック・バウアーという男を試すことにした。真面な男だったら王女の降嫁を全力で拒否し身籠っている妻を守るはずだ。
なので王女の降嫁先をほぼリデック・バウアーに決めている宰相に進言したのだ。
「宰相様。タチアナ王女様の降嫁相手のリデック・バウアーに念のため事前に降嫁を受け入れる意思があるのか確認をしたらいかかでしょうか?」
「そんな必要はなかろう。あそこは不仲で有名だからお互い喜んで離縁し降嫁を喜んで受け入れるはずだ」
「そうだとは思いますが、念のためです。文官なら確認は怠らないものですから」
「分かった。リデック・バウアーを今すぐ呼んできてくれ」
そして俺に連れられてやってきたリデック・バウアーという男は…『正真正銘の馬鹿』だった。
質問の意図を正しく理解しているのか不明だが、王女の降嫁を受け入れるととれる発言をしていたのだ。
---こんな奴をハンナが愛する訳ないな。そしてこいつと一緒にいても彼女は幸せになれない。
もう遠慮はいらないな、計画続行だ。
俺は宰相との話を終えたリデック・バウアーに『素晴らしい返答でしたね』と思わず嫌味を言ったが、『有り難う』とお目出度い返事が返ってきた。
役者達が予想以上に上手く踊ってくれたので、数日後には愛するハンナは自由の身になった。
俺の本番はこれからだ。
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