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17.妃の幸せは…②
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「王妃様、過去の妃様方はどのような方法で幸せを掴んでいたのですか?」
「やはり気になるわよね。もし貴女が王宮に残ることを選んでいたなら教えていたけど、外に出ることを選んだ貴女には教えられないわ。色々と不味い案件もたくさんあるのですよ、ふふふ」
私は本当は知りたくて仕方がなかったが、それ以上は聞くのを堪えた。興味はあるが、外に出る権利を捨ててまで知りたくはない。そんな私の考えは王妃様にお見通しだったようで『ふふふ、では餞別に一つだけ教えてあげるわ』と言って話し始めた。
それはある王太子妃の物語だった。
「ある王太子は婚約者のいる令嬢を好きになったの。その令嬢には相思相愛の婚約者がいたのに無理矢理別れさせ強引に婚姻を結んだ。でもその令嬢は悲しんだけど、貴族としてそんな運命も受け入れ王太子を愛そうと努力したわ。
本当に健気よね…。
でも王太子はその気持ちを踏みにじった。望んで手に入れた王太子妃を蔑ろにして結婚当初から癒しを楽しんでいた。それも悪びれずもせずに堂々とね。勿論臣下達は黙認するだけで、彼女は絶望した。
後半部分は少し貴女の状況に似ているわね」
私は黙ったまま頷いた。『権力を笠に着て無理矢理結婚したくせに酷い王太子だ』と思ったが、その先を早く聞きたいので口は挟まなかった。
「その王太子妃も色々と悩んで自分の幸せに辿り着く方法を見つけたわ」
「それはどのような方法でしたか」
私は苦しんでいた王太子妃が幸せになったのが嬉しくて弾んだ声で聞いた。
「貴女は妃の幸せを踏みにじる王宮から去るという幸せを選択した、とても前向きな考えよね。でもその王太子妃は真逆と言っていい選択をした、王太子に絶望を与える事にしたの」
「絶望ですか‥‥?一体どうやって」
---『絶望』を与えることが幸せに繋がるの?
王妃様はそれまで見せたことのない悲しそうな顔をして続きを話し出す。
「実はね、王太子妃の元婚約者は病気で先が長くない事が分かったの。別れても愛し続けていたからその現実が辛くて仕方がなかった。ロイドを以前心から愛していた貴女なら気持ちが少し分かるでしょう?
だから彼女は愛する人の子を身籠ることにした、そしてその希望を叶えたの」
王妃が語る物語が本当ならとんでもないことだ。
それが事実なら今の王族の血統は正しくない事になる。この国の根本にかかわる大事件が一人の王太子妃によってもたらされたのだ。
「で、でもそれでは正統な王族の血が途絶えていると……」
私は動揺を隠せなかった、王族たちの存在が否定される事実を知ってしまったのだから。
「やはり気になるわよね。もし貴女が王宮に残ることを選んでいたなら教えていたけど、外に出ることを選んだ貴女には教えられないわ。色々と不味い案件もたくさんあるのですよ、ふふふ」
私は本当は知りたくて仕方がなかったが、それ以上は聞くのを堪えた。興味はあるが、外に出る権利を捨ててまで知りたくはない。そんな私の考えは王妃様にお見通しだったようで『ふふふ、では餞別に一つだけ教えてあげるわ』と言って話し始めた。
それはある王太子妃の物語だった。
「ある王太子は婚約者のいる令嬢を好きになったの。その令嬢には相思相愛の婚約者がいたのに無理矢理別れさせ強引に婚姻を結んだ。でもその令嬢は悲しんだけど、貴族としてそんな運命も受け入れ王太子を愛そうと努力したわ。
本当に健気よね…。
でも王太子はその気持ちを踏みにじった。望んで手に入れた王太子妃を蔑ろにして結婚当初から癒しを楽しんでいた。それも悪びれずもせずに堂々とね。勿論臣下達は黙認するだけで、彼女は絶望した。
後半部分は少し貴女の状況に似ているわね」
私は黙ったまま頷いた。『権力を笠に着て無理矢理結婚したくせに酷い王太子だ』と思ったが、その先を早く聞きたいので口は挟まなかった。
「その王太子妃も色々と悩んで自分の幸せに辿り着く方法を見つけたわ」
「それはどのような方法でしたか」
私は苦しんでいた王太子妃が幸せになったのが嬉しくて弾んだ声で聞いた。
「貴女は妃の幸せを踏みにじる王宮から去るという幸せを選択した、とても前向きな考えよね。でもその王太子妃は真逆と言っていい選択をした、王太子に絶望を与える事にしたの」
「絶望ですか‥‥?一体どうやって」
---『絶望』を与えることが幸せに繋がるの?
王妃様はそれまで見せたことのない悲しそうな顔をして続きを話し出す。
「実はね、王太子妃の元婚約者は病気で先が長くない事が分かったの。別れても愛し続けていたからその現実が辛くて仕方がなかった。ロイドを以前心から愛していた貴女なら気持ちが少し分かるでしょう?
だから彼女は愛する人の子を身籠ることにした、そしてその希望を叶えたの」
王妃が語る物語が本当ならとんでもないことだ。
それが事実なら今の王族の血統は正しくない事になる。この国の根本にかかわる大事件が一人の王太子妃によってもたらされたのだ。
「で、でもそれでは正統な王族の血が途絶えていると……」
私は動揺を隠せなかった、王族たちの存在が否定される事実を知ってしまったのだから。
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