13 / 18
13.壊れゆく王太子妃~侍女スズ視点~②
しおりを挟む
次はマリアンヌ様の父である宰相様が私に縋るように叫んできた。
「心を壊していくほど辛かったのならなぜ助けを求めなかった?言ってくれれば私は父として最大限出来ることをしたのに…」
「マリアンヌ様は王太子様の不貞に悩み、宰相様と王妃様にご相談しましたよね?その時どんな対応をされたかお忘れですか?立派な王太子妃として不貞を黙認しろとおっしゃいましたよね!愛する人の裏切りを知り苦しんでいる娘や義娘にそんな言葉を投げつけておいて今更何をおっしゃっているのですか!
何が父ですか!あの日からマリアンヌ様は宰相様を『お父様』とは一度だって呼んでおりません!」
宰相はハッとしている。私に指摘されまでそんな事にも気づいていなかったようだ。私の発言を聞き、王妃と王太子もやっと気づいたようだ。
自分達が『義母上様』『ロイ』と久しく呼ばれていない事実に…。
---遅すぎる、貴方たちはもう遅いのよ!あの時ちゃんとマリアンヌ様の気持ちに寄り添っていてくれたらこんな事にはなっていなかったわ。
状況を把握した国王は王妃に『そのような事をなぜ私に報告しなかったのだ?』と問い詰めているが、王妃が『貴方様は聞いたとしてどうするおつもりでしたか?』と答えるとそれ以上は何も言わなかった。それを知っていたとしても王妃や宰相と同じように対応したからだ。
そして国王は『他に知らせるべきことはあるか』と私に聞いてきたので、伝えるべきことをすべて話した。
「マリアンヌ様のお心は王太子様の不貞を知った日から徐々に壊れていきました。そしてもう完全に壊れています。最近では乳姉妹である私の存在さえお忘れで『スズ』と呼ばれず、ただの侍女『スザンヌ』になりました…。
もう立派な王太子妃から解放してあげてください。どうかお願いです、これ以上マリアンヌ様を苦しませないでください」
私は涙を流しながら直訴した。もうこんな場所にマリアンヌ様を置いておきたくなかった。また以前のような心からの笑顔を取り戻してほしかった。
すべてを話し終えた私と他の者達は何の咎めもなく部屋から退出する事が国王から許された。
自分達が王太子妃を追い詰めた事実を知り打ちのめされた王太子と王妃と宰相は項垂れたまま顔を上げることはなかった。
ただ部屋を出る時にちらりと見えた王妃の横顔は、憔悴しているように見えたがその口角は不自然に上がっているようにも見えていた。
「心を壊していくほど辛かったのならなぜ助けを求めなかった?言ってくれれば私は父として最大限出来ることをしたのに…」
「マリアンヌ様は王太子様の不貞に悩み、宰相様と王妃様にご相談しましたよね?その時どんな対応をされたかお忘れですか?立派な王太子妃として不貞を黙認しろとおっしゃいましたよね!愛する人の裏切りを知り苦しんでいる娘や義娘にそんな言葉を投げつけておいて今更何をおっしゃっているのですか!
何が父ですか!あの日からマリアンヌ様は宰相様を『お父様』とは一度だって呼んでおりません!」
宰相はハッとしている。私に指摘されまでそんな事にも気づいていなかったようだ。私の発言を聞き、王妃と王太子もやっと気づいたようだ。
自分達が『義母上様』『ロイ』と久しく呼ばれていない事実に…。
---遅すぎる、貴方たちはもう遅いのよ!あの時ちゃんとマリアンヌ様の気持ちに寄り添っていてくれたらこんな事にはなっていなかったわ。
状況を把握した国王は王妃に『そのような事をなぜ私に報告しなかったのだ?』と問い詰めているが、王妃が『貴方様は聞いたとしてどうするおつもりでしたか?』と答えるとそれ以上は何も言わなかった。それを知っていたとしても王妃や宰相と同じように対応したからだ。
そして国王は『他に知らせるべきことはあるか』と私に聞いてきたので、伝えるべきことをすべて話した。
「マリアンヌ様のお心は王太子様の不貞を知った日から徐々に壊れていきました。そしてもう完全に壊れています。最近では乳姉妹である私の存在さえお忘れで『スズ』と呼ばれず、ただの侍女『スザンヌ』になりました…。
もう立派な王太子妃から解放してあげてください。どうかお願いです、これ以上マリアンヌ様を苦しませないでください」
私は涙を流しながら直訴した。もうこんな場所にマリアンヌ様を置いておきたくなかった。また以前のような心からの笑顔を取り戻してほしかった。
すべてを話し終えた私と他の者達は何の咎めもなく部屋から退出する事が国王から許された。
自分達が王太子妃を追い詰めた事実を知り打ちのめされた王太子と王妃と宰相は項垂れたまま顔を上げることはなかった。
ただ部屋を出る時にちらりと見えた王妃の横顔は、憔悴しているように見えたがその口角は不自然に上がっているようにも見えていた。
367
お気に入りに追加
4,756
あなたにおすすめの小説

私は心を捨てました 〜「お前なんかどうでもいい」と言ったあなた、どうして今更なのですか?〜
月橋りら
恋愛
私に婚約の打診をしてきたのは、ルイス・フォン・ラグリー侯爵子息。
だが、彼には幼い頃から大切に想う少女がいたーー。
「お前なんかどうでもいい」 そうあなたが言ったから。
私は心を捨てたのに。
あなたはいきなり許しを乞うてきた。
そして優しくしてくるようになった。
ーー私が想いを捨てた後で。
どうして今更なのですかーー。
*この小説はカクヨム様、エブリスタ様でも連載しております。

そんなにその方が気になるなら、どうぞずっと一緒にいて下さい。私は二度とあなたとは関わりませんので……。
しげむろ ゆうき
恋愛
男爵令嬢と仲良くする婚約者に、何度注意しても聞いてくれない
そして、ある日、婚約者のある言葉を聞き、私はつい言ってしまうのだった
全五話
※ホラー無し

あなたへの恋心を消し去りました
鍋
恋愛
私には両親に決められた素敵な婚約者がいる。
私は彼のことが大好き。少し顔を見るだけで幸せな気持ちになる。
だけど、彼には私の気持ちが重いみたい。
今、彼には憧れの人がいる。その人は大人びた雰囲気をもつ二つ上の先輩。
彼は心は自由でいたい言っていた。
その女性と話す時、私には見せない楽しそうな笑顔を向ける貴方を見て、胸が張り裂けそうになる。
友人たちは言う。お互いに干渉しない割り切った夫婦のほうが気が楽だって……。
だから私は彼が自由になれるように、魔女にこの激しい気持ちを封印してもらったの。
※このお話はハッピーエンドではありません。
※短いお話でサクサクと進めたいと思います。

君に愛は囁けない
しーしび
恋愛
姉が亡くなり、かつて姉の婚約者だったジルベールと婚約したセシル。
彼は社交界で引く手数多の美しい青年で、令嬢たちはこぞって彼に夢中。
愛らしいと噂の公爵令嬢だって彼への好意を隠そうとはしない。
けれど、彼はセシルに愛を囁く事はない。
セシルも彼に愛を囁けない。
だから、セシルは決めた。
*****
※ゆるゆる設定
※誤字脱字を何故か見つけられない病なので、ご容赦ください。努力はします。
※日本語の勘違いもよくあります。方言もよく分かっていない田舎っぺです。

貴方もヒロインのところに行くのね? [完]
風龍佳乃
恋愛
元気で活発だったマデリーンは
アカデミーに入学すると生活が一変し
てしまった
友人となったサブリナはマデリーンと
仲良くなった男性を次々と奪っていき
そしてマデリーンに愛を告白した
バーレンまでもがサブリナと一緒に居た
マデリーンは過去に決別して
隣国へと旅立ち新しい生活を送る。
そして帰国したマデリーンは
目を引く美しい蝶になっていた

元婚約者が愛おしい
碧桜 汐香
恋愛
いつも笑顔で支えてくれた婚約者アマリルがいるのに、相談もなく海外留学を決めたフラン王子。
留学先の隣国で、平民リーシャに惹かれていく。
フラン王子の親友であり、大国の王子であるステファン王子が止めるも、アマリルを捨て、リーシャと婚約する。
リーシャの本性や様々な者の策略を知ったフラン王子。アマリルのことを思い出して後悔するが、もう遅かったのだった。
フラン王子目線の物語です。

私が愛する王子様は、幼馴染を側妃に迎えるそうです
こことっと
恋愛
それは奇跡のような告白でした。
まさか王子様が、社交会から逃げ出した私を探しだし妃に選んでくれたのです。
幸せな結婚生活を迎え3年、私は幸せなのに不安から逃れられずにいました。
「子供が欲しいの」
「ごめんね。 もう少しだけ待って。 今は仕事が凄く楽しいんだ」
それから間もなく……彼は、彼の幼馴染を側妃に迎えると告げたのです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる