立派な王太子妃~妃の幸せは誰が考えるのか~

矢野りと

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13.壊れゆく王太子妃~侍女スズ視点~②

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次はマリアンヌ様の父である宰相様が私に縋るように叫んできた。

「心を壊していくほど辛かったのならなぜ助けを求めなかった?言ってくれれば私は父として最大限出来ることをしたのに…」

「マリアンヌ様は王太子様の不貞に悩み、宰相様と王妃様にご相談しましたよね?その時どんな対応をされたかお忘れですか?として不貞を黙認しろとおっしゃいましたよね!愛する人の裏切りを知り苦しんでいる娘や義娘にそんな言葉を投げつけておいて今更何をおっしゃっているのですか!
何が父ですか!あの日からマリアンヌ様は宰相様を『お父様』とは一度だって呼んでおりません!」

宰相はハッとしている。私に指摘されまでそんな事にも気づいていなかったようだ。私の発言を聞き、王妃と王太子もやっと気づいたようだ。
自分達が『義母上様』『ロイ』と久しく呼ばれていない事実に…。

---遅すぎる、貴方たちはもう遅いのよ!あの時ちゃんとマリアンヌ様の気持ちに寄り添っていてくれたらこんな事にはなっていなかったわ。


状況を把握した国王は王妃に『そのような事をなぜ私に報告しなかったのだ?』と問い詰めているが、王妃が『貴方様は聞いたとしてどうするおつもりでしたか?』と答えるとそれ以上は何も言わなかった。それを知っていたとしても王妃や宰相と同じように対応したからだ。

そして国王は『他に知らせるべきことはあるか』と私に聞いてきたので、をすべて話した。

「マリアンヌ様のお心は王太子様の不貞を知った日から徐々に壊れていきました。そしてもう完全に壊れています。最近では乳姉妹である私の存在さえお忘れで『スズ』と呼ばれず、ただの侍女『スザンヌ』になりました…。
もう立派な王太子妃から解放してあげてください。どうかお願いです、これ以上マリアンヌ様を苦しませないでください」

私は涙を流しながら直訴した。もうこんな場所にマリアンヌ様を置いておきたくなかった。また以前のような心からの笑顔を取り戻してほしかった。


すべてを話し終えた私と他の者達は何の咎めもなく部屋から退出する事が国王から許された。
自分達が王太子妃を追い詰めた事実を知り打ちのめされた王太子と王妃と宰相は項垂れたまま顔を上げることはなかった。
ただ部屋を出る時にちらりと見えた王妃の横顔は、憔悴しているように見えたがその口角は不自然に上がっているようにも見えていた。
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