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10.王太子妃の狂気①
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私は王太子と結婚してから二年が経過したある日、『王太子の側妃の選定を行うこと』を国王や重鎮達の前で自ら進言した。国王や重鎮達は『まだ必要ないのでは』と表情を浮かべて私を見てきたが、一人だけ猛反対をしている者がいた。
それは意外なことに夫である王太子であった。
「側妃など必要はない!私の妻は生涯マリーだけと決めている」
王太子は私を愛おしそうに見つめて、私の進言を退けようとする。
---妻は1人でも癒しはたくさんいるでしょう?癒しが側妃になるだけなのに何を今更言っているのかしら。
「ですが結婚して三年経過し子がいない場合側妃を認められます、それは一年後ですわ。側妃になる方の選定やその後の準備期間を考えたら今からでも遅いくらいです。早急に選定を始めるべきです」
「私は側妃が必要ないと言っているのだ!それに三年経過したら側妃を娶ることは可能だが義務ではないはずだ。そうだろう、宰相」
王太子は自分の主張を押し通すために、宰相に法的に問題のない事を話させようと話を振る。宰相はきっと私の考えに賛同すると思ったが、意外な事に王太子寄りの発言をしてきた。
「はい、その通りです。側妃は選択肢の一つではありますが、絶対娶らなくてはいけないものではございません。それにこれから王太子妃様にお子様が誕生される可能性もありますし、王太子夫妻はお若いので急ぐ必要はないかと思います」
---あら?癒しは必要でも側妃には消極的なの、おかしなことね。
「マリー、誰に何を言われたか知らんが側妃の事など気にするな。私の妃は生涯君一人だし、愛する君との子しか望まない」
王太子と宰相は『必要ない』と言い切り、国王をはじめ他の重鎮達もその考えに賛同していた。
さすが表向きは一夫一妻制を重んじる国だ。裏では不貞を黙認する癖に体裁は整えたいらしい。
私の口から『側妃』という言葉が出て生じた緊張感も王太子の妻一筋の発言で吹き飛んだ。
『本当に王太子妃様は愛されてますなー』『世継ぎの心配などいりませんな』と重鎮達は勝手なことを喋り始めた。
すると、この場に相応しくない笑い声が広間に響いた。
「ふっふふふふふふ、…あはははーー」
それは王太子妃である私の笑い声だった。いつもなら鈴の音色のようだと言われている笑い声だが、今響いているのはそれとはまったく違う狂気を含んだような声だ。到底、夫からの『永遠の愛の告白』を喜んでいるようには聞こえない。
それは意外なことに夫である王太子であった。
「側妃など必要はない!私の妻は生涯マリーだけと決めている」
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---妻は1人でも癒しはたくさんいるでしょう?癒しが側妃になるだけなのに何を今更言っているのかしら。
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すると、この場に相応しくない笑い声が広間に響いた。
「ふっふふふふふふ、…あはははーー」
それは王太子妃である私の笑い声だった。いつもなら鈴の音色のようだと言われている笑い声だが、今響いているのはそれとはまったく違う狂気を含んだような声だ。到底、夫からの『永遠の愛の告白』を喜んでいるようには聞こえない。
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