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48.愛おしい『番』①
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南の辺境地に近づいて行くにつれ、心がざわつくのを感じていた。最初はララルーアに会いに行く興奮から来ているのかと思っていたが、この感じには覚えがあった。それは遠い遠い記憶にある感情であった。
(子供の頃、『卵』であった『番』に会う時に感じていたものに似ている気がするが、そんな事はありえん。真に愛する者が出来ると『番』と同じ様に感じるという事なんだろう。俺はそれほどまでにララに夢中になっているのか、ハハハ。これでは将来ララの尻に敷かれるのが決定だな)
トカタオはかつてないほど高まる気持ちをララへの愛情の賜物と思い込んでいる。記憶の改竄によって『番』を喪失したと信じているので、まさか『番』を認識しているとは考えてもいなかった。
金竜の本気の飛翔は凄まじく、通常の竜人達が竜体で二時間掛かる距離を一時間ほどで到着した。南の辺境地にあるミファン家の城門の前に降り立ったトカタオは、不思議な感じに囚われていた。
(なんだこの感覚は…。高揚感が止まらない、愛とはこんなにも激しい感情の揺さぶりが起こるものなのか。
それに不思議とこの情景と感情に覚えがある気がする…、これは既視感なのか?)
トカタオは今の自分の状態の意味が分からなかったが、唯一確かなもの『ララへの愛』を貫こうと行動を起こす事にした。
金竜であるトカタオが城門前に降り立った事は、城の者達は気づいているはずだが、門は固く閉ざされたままで開く気配はない。門を壊し中に入ることは簡単に出来るが、トカタオはララへの愛を伝える為に来たのでそんな事はしたくなかった。
ちゃんと順序を踏んでやるべきだと思っている。
誰も姿を見せない門の前に立ち、トカタオはよく響く声で愛の告白を始めた。
「ララルーア・ミファン、聞いてくれ!
ララが『番』を認識出来るようになったと聞いた。竜人にとって『番』は絶対な存在なのは俺も分かっている、だからララの幸せを邪魔する気はない。ララが『番』との可能性を選ぶというなら俺を振ってくれ。そしたら大人しく王宮に帰ってやけ酒を飲みながらララの幸せを遠くから祈り続けるつもりだ。
だが俺の気持ちだけは伝えたい!
トカタオ・タイオンはララルーア・ミファンを愛している。生涯を共にし、幸せな家庭を築きたいと思っているんだ。こんな気持ちになったのは、ララが初めてだ。どうか俺の手を取ってくれないか。
ララ、何よりも愛おしい俺の天使、」
「わ・た・し・もーーー!」
トカタオの決死の愛の告白を途中で遮り、ララは叫びながら城門の上から飛び降りてきた。
ドサッーー、グシャリ…。
ララは見事にトカタオの上に着地し満面の笑みを浮かべているが、下敷きになったトカタオは腹の上に乗っているララを見ながら口をパクパクさせている。
「もう、ここは嘘でも『愛してるよ、ララ』と言ってどーんと受け止めてくれなくっちゃ。私がトカを下敷きにして瀕死の重傷を負わせていたら話が進まないわよー」
ララは自分に押しつぶされてトカタオが苦しんでいると思い、不満そうに言ってくる。
「エッ、ララだよな…?そ、それにこの気配は…。『番』なのか?だ、だが俺の『番』は亡くなっているはずだ。でも目の前のララは確かに俺の『番』で間違いない…、どういう事なんだ」
トカタオは成長したララの姿だけでなく、そのララが『番』である事実に困惑している。何が起こっているか分からず、ブツブツと『番が…、いやでも…』と繰り返している。
そんな様子に痺れを切らしたララはトカタオの顔を両手でムギュッと挟み、自分の方に近づけるとチュッと唇に軽く甘いキスをする。
「私も愛している♪トカが私を選んでくれたように、私も貴方を選ぶわ。これから長い竜人人生を一緒に楽しみましょう!」
ララからの口付けと愛の告白を受け、トカタオは我に返った。
(愛おしいララが俺の手を取ってくれたーー!
やったぞー!)
もうトカタオにとってララが『番』であるというのは紛れもない真実だが、それよりララが自分を選んでくれた事実に感極まっている。
「ララ、一生大切にするよ。俺の愛おしい『番』」
「はい。私の愛する『番』、よろしくね♪」
(子供の頃、『卵』であった『番』に会う時に感じていたものに似ている気がするが、そんな事はありえん。真に愛する者が出来ると『番』と同じ様に感じるという事なんだろう。俺はそれほどまでにララに夢中になっているのか、ハハハ。これでは将来ララの尻に敷かれるのが決定だな)
トカタオはかつてないほど高まる気持ちをララへの愛情の賜物と思い込んでいる。記憶の改竄によって『番』を喪失したと信じているので、まさか『番』を認識しているとは考えてもいなかった。
金竜の本気の飛翔は凄まじく、通常の竜人達が竜体で二時間掛かる距離を一時間ほどで到着した。南の辺境地にあるミファン家の城門の前に降り立ったトカタオは、不思議な感じに囚われていた。
(なんだこの感覚は…。高揚感が止まらない、愛とはこんなにも激しい感情の揺さぶりが起こるものなのか。
それに不思議とこの情景と感情に覚えがある気がする…、これは既視感なのか?)
トカタオは今の自分の状態の意味が分からなかったが、唯一確かなもの『ララへの愛』を貫こうと行動を起こす事にした。
金竜であるトカタオが城門前に降り立った事は、城の者達は気づいているはずだが、門は固く閉ざされたままで開く気配はない。門を壊し中に入ることは簡単に出来るが、トカタオはララへの愛を伝える為に来たのでそんな事はしたくなかった。
ちゃんと順序を踏んでやるべきだと思っている。
誰も姿を見せない門の前に立ち、トカタオはよく響く声で愛の告白を始めた。
「ララルーア・ミファン、聞いてくれ!
ララが『番』を認識出来るようになったと聞いた。竜人にとって『番』は絶対な存在なのは俺も分かっている、だからララの幸せを邪魔する気はない。ララが『番』との可能性を選ぶというなら俺を振ってくれ。そしたら大人しく王宮に帰ってやけ酒を飲みながらララの幸せを遠くから祈り続けるつもりだ。
だが俺の気持ちだけは伝えたい!
トカタオ・タイオンはララルーア・ミファンを愛している。生涯を共にし、幸せな家庭を築きたいと思っているんだ。こんな気持ちになったのは、ララが初めてだ。どうか俺の手を取ってくれないか。
ララ、何よりも愛おしい俺の天使、」
「わ・た・し・もーーー!」
トカタオの決死の愛の告白を途中で遮り、ララは叫びながら城門の上から飛び降りてきた。
ドサッーー、グシャリ…。
ララは見事にトカタオの上に着地し満面の笑みを浮かべているが、下敷きになったトカタオは腹の上に乗っているララを見ながら口をパクパクさせている。
「もう、ここは嘘でも『愛してるよ、ララ』と言ってどーんと受け止めてくれなくっちゃ。私がトカを下敷きにして瀕死の重傷を負わせていたら話が進まないわよー」
ララは自分に押しつぶされてトカタオが苦しんでいると思い、不満そうに言ってくる。
「エッ、ララだよな…?そ、それにこの気配は…。『番』なのか?だ、だが俺の『番』は亡くなっているはずだ。でも目の前のララは確かに俺の『番』で間違いない…、どういう事なんだ」
トカタオは成長したララの姿だけでなく、そのララが『番』である事実に困惑している。何が起こっているか分からず、ブツブツと『番が…、いやでも…』と繰り返している。
そんな様子に痺れを切らしたララはトカタオの顔を両手でムギュッと挟み、自分の方に近づけるとチュッと唇に軽く甘いキスをする。
「私も愛している♪トカが私を選んでくれたように、私も貴方を選ぶわ。これから長い竜人人生を一緒に楽しみましょう!」
ララからの口付けと愛の告白を受け、トカタオは我に返った。
(愛おしいララが俺の手を取ってくれたーー!
やったぞー!)
もうトカタオにとってララが『番』であるというのは紛れもない真実だが、それよりララが自分を選んでくれた事実に感極まっている。
「ララ、一生大切にするよ。俺の愛おしい『番』」
「はい。私の愛する『番』、よろしくね♪」
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