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47.トカタオの決意
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(ララに『番』が現れたら俺はララを失ってしまうのか…。そんな事に耐えられるのか…。
竜人にとって『番』は運命の伴侶、その存在を求めるのは当然のことだと頭では分かっているが。俺自身過去に『番』を失い絶望を味わったからこそ分かっているのに。クソッ、それなのにララのいない人生など考えられん)
トカタオは自分の考えが勝手だと痛いほど分かっているが、もうララへの気持ちを抑えることなど出来なかった。『番』ではないが、トカタオにとっていつの間にか最愛の人になっていたのだ。
「俺はララルーアを愛している、彼女を失う事なんて考えられない。この気持ちを正直に伝えてくる。『番』に会える可能性のあるララに拒否されたらその時は引き下がるが、何もせずにただ待ち続けることはしない。
金竜としてのプライドも王子としての見栄も捨てて、一人の男としてララに向き合ってみる」
トカタオの表情からは迷いは消えていた。そこには恋焦がれる女性に自分の気持ちを素直に伝えたい男が一人いるだけだった。まだララは『番』と巡り合っていないとはいえ上手くいく自信なんて全くないが、何もせずに後悔だけはしたくない。
(物分かりの良い優秀な王子を演じて、大切なものを失う事だけはしたくない!)
トカタオの心は決まった。
「トカ、南の辺境地に行きなさい。そしてあなたの気持ちを偽りなく告げてきなさい。その結果は分からないけど、これだは言わせて。私は母親として息子の幸せをいつでも祈っているわ」
「ああ、行ってこい。男は当たって砕けろだ、トカ。玉砕したらその時は一緒にやけ酒を飲んでやるから安心しろ。俺達はいつでもお前の味方だ」
バイザルとスズはトカタオの苦悩が良く分かっていた。
『番』の喪失に長年苦しんでいた自分が、ララに同じ思いをさせるかもしれない可能性を考え、ララとの関係を躊躇しているが愛おしい気持ちを止めることが出来ない事も。
このトカタオのララへの愛が『番』への愛情なのか分からない。二人は互いに『番』と認識していないのに、やはり『番』の力は知られている以上の効力があるのかもしれない。
それとも単に二人が愛し合っているだけなのか…。
本当の事を告げることが出来たならトカタオは苦しまなくていいのだろうが、自分達の都合でそれを息子に教えることは出来ない。今はただ親としてトカタオの味方である事を伝える事しか叶わないのだ。
ただすべてを受け入れる覚悟が出来た息子の背中を押してララの元へ送り出すだけだ。
「ハハハ、俺が玉砕する前提かよ。父上、母上、南に行ってくる。高級な酒を用意しつつ、ララと一緒の帰還を祈っていてくれ」
「いってらっしゃい、トカ。男は自分から告ってなんぼよ、どーんと行きなさい!」
「高級な酒をたんまり用意しておいてやるから、安心して行ってこい。ちょっとは可愛い義娘が出来るのを楽しみにしているからな、ハハハ」
バイザルとスズの温かい言葉を胸にトカタオは部屋を出て行った。建物から出るやいなや、輝く金の竜体に変化し羽をはばたかせると『ギャオーー』と咆哮をあげ南の空へと飛び立っていった。その後ろ姿には迷いなど微塵も感じられなかった。
竜人にとって『番』は運命の伴侶、その存在を求めるのは当然のことだと頭では分かっているが。俺自身過去に『番』を失い絶望を味わったからこそ分かっているのに。クソッ、それなのにララのいない人生など考えられん)
トカタオは自分の考えが勝手だと痛いほど分かっているが、もうララへの気持ちを抑えることなど出来なかった。『番』ではないが、トカタオにとっていつの間にか最愛の人になっていたのだ。
「俺はララルーアを愛している、彼女を失う事なんて考えられない。この気持ちを正直に伝えてくる。『番』に会える可能性のあるララに拒否されたらその時は引き下がるが、何もせずにただ待ち続けることはしない。
金竜としてのプライドも王子としての見栄も捨てて、一人の男としてララに向き合ってみる」
トカタオの表情からは迷いは消えていた。そこには恋焦がれる女性に自分の気持ちを素直に伝えたい男が一人いるだけだった。まだララは『番』と巡り合っていないとはいえ上手くいく自信なんて全くないが、何もせずに後悔だけはしたくない。
(物分かりの良い優秀な王子を演じて、大切なものを失う事だけはしたくない!)
トカタオの心は決まった。
「トカ、南の辺境地に行きなさい。そしてあなたの気持ちを偽りなく告げてきなさい。その結果は分からないけど、これだは言わせて。私は母親として息子の幸せをいつでも祈っているわ」
「ああ、行ってこい。男は当たって砕けろだ、トカ。玉砕したらその時は一緒にやけ酒を飲んでやるから安心しろ。俺達はいつでもお前の味方だ」
バイザルとスズはトカタオの苦悩が良く分かっていた。
『番』の喪失に長年苦しんでいた自分が、ララに同じ思いをさせるかもしれない可能性を考え、ララとの関係を躊躇しているが愛おしい気持ちを止めることが出来ない事も。
このトカタオのララへの愛が『番』への愛情なのか分からない。二人は互いに『番』と認識していないのに、やはり『番』の力は知られている以上の効力があるのかもしれない。
それとも単に二人が愛し合っているだけなのか…。
本当の事を告げることが出来たならトカタオは苦しまなくていいのだろうが、自分達の都合でそれを息子に教えることは出来ない。今はただ親としてトカタオの味方である事を伝える事しか叶わないのだ。
ただすべてを受け入れる覚悟が出来た息子の背中を押してララの元へ送り出すだけだ。
「ハハハ、俺が玉砕する前提かよ。父上、母上、南に行ってくる。高級な酒を用意しつつ、ララと一緒の帰還を祈っていてくれ」
「いってらっしゃい、トカ。男は自分から告ってなんぼよ、どーんと行きなさい!」
「高級な酒をたんまり用意しておいてやるから、安心して行ってこい。ちょっとは可愛い義娘が出来るのを楽しみにしているからな、ハハハ」
バイザルとスズの温かい言葉を胸にトカタオは部屋を出て行った。建物から出るやいなや、輝く金の竜体に変化し羽をはばたかせると『ギャオーー』と咆哮をあげ南の空へと飛び立っていった。その後ろ姿には迷いなど微塵も感じられなかった。
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